ストレスマネジメントとは? 効果的なやり方と具体例を解説

ストレスマネジメントとは? 効果的なやり方と具体例を解説

人間は、生活のなかでさまざまなストレスを感じる生きものです。しかし、あまりに大きなストレスは心身に悪影響を及ぼします。

従業員が心身ともに健康で意欲的に仕事をこなすためには、ストレスマネジメントが重要です。ストレスマネジメントは、個人だけで対処できるものではなく企業側も対策を取ることが欠かせません。

本記事では、ストレスマネジメントの概要や、企業が行うことで得られる効果、実践方法について紹介します。

評価業務に時間がかかって困っていませんか?
HRMOSタレントマネジメントで大幅に評価業務の工数を削減!

⇒HRMOSの機能を見てみる

ストレスマネジメントとは

ストレスマネジメントとは、心身の健康を保つために自らのストレスに対して上手にコントロールしながら対処していくための方法や考え方のことです。

ストレスは、日常生活のなかで多くの人が感じるものですが、ストレスを抱えたままでは心身に悪影響を及ぼしかねません。

ストレスによる心身の不調を防ぐには、個人で対処するだけではなく企業の取り組みも重要です。

そもそもストレスとは何か

ストレスとは、もともと物理学で使われていた言葉で、外からかかる力によって物質にひずみが生じることを意味していました。

1936年にカナダのセリエ博士が「ストレス学説」を発表したことが、医学分野でもストレスという言葉が用いられるようになったきっかけです。

医学的には、外からの刺激に対して身体や心が反応することを「ストレス反応」、反応を生じる要因となるものを「ストレッサー」と呼びます。

一般的なストレスには、ストレス反応とストレッサーの両方を含むものです。

ストレッサーの種類

ストレッサーの種類は、急性ストレッサーと慢性ストレッサーに大別されます。

急性ストレッサーとは、生命を脅かすような恐ろしい出来事や事故など、急性のストレス要因です。一方、慢性ストレッサーとは、日常生活のなかで繰り返されることで生じるストレス要因のことです。

この慢性ストレッサーについて、物理的・心理的・社会的・環境的の4つに分けて解説します。

物理的ストレッサー

物理的ストレッサーとは、騒音や振動、悪臭、薬物によって起こる弊害、部屋の室温、光、パソコンを用いた作業、自分の病気などから生じるストレスのことです。

例えば、「職場のエアコンが効きすぎていて寒い」「オフィスがうるさい」「静かすぎる」なども当てはまります。

人によってストレスの感受性は異なるものの、これらの状況に悩んでいて何らかの対処が必要な状態であればストレッサーになっているといえるでしょう。

心理的ストレッサー

心理的ストレッサーとは、人間関係や多忙さ、締め切り、課題、ノルマといった仕事のプレッシャー、家庭の問題などから生じるストレスのことです。

具体的な症状としては、不安や怒り、悲しみ、劣等感、恐れ、緊張感、憎しみ、焦りなどを引き起こします。

一般的に、ストレスというと心理的ストレッサーを指すことが多い傾向です。

社会的ストレッサー

社会的ストレッサーとは、離婚や別居、転居、転職などライフスタイルの変化や仕事上での異動や配置換え、昇進などで生じるストレスのことです。

また、男らしさや女らしさといった性に求められる周囲の期待感や、親としての立場や管理職としての立場など社会的な立場によって周囲から期待される役割もストレスの要因になることもあります。

社会的ストレッサーも一般的にストレスとして認知されることが多いものです。

環境的ストレッサー

環境的ストレッサーとは、暑さや寒さなどの天候、温度、湿度、台風や洪水・地震などの自然災害、ウイルス、花粉などから生じるストレスのことです。

犯罪や事故、大規模な自然災害などに遭うことで精神的に大きなダメージを受けると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やASD(急性ストレス障害)を発症することがあり、適切なケアが必要になります。

自社の活躍人材を把握できていますか?

異動履歴や資格など従業員情報を一元管理し、スキルを可視化。データに基づく人材配置で組織の生産性向上につながります。

HRMOSの機能を見てみる

従業員がストレスを感じる要因

厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)の概況」によると、仕事で強い不安や悩み、ストレスを感じている人の割合は全体の平均で82.7%でした。前年の令和4年調査ではほぼ同値の82.2%だったものの、令和3年の53.3%と比較すると大幅に増加したことがわかります。

年齢別に見てみると40代は87.9%、50代は86.2%と平均よりも多い傾向です。性別では、男性が84%、女性が81.1%と男性のほうが多くなっています。また、就業形態では正社員が86.1%、派遣労働者が83.5%と高い数値を示しました。

強い不安や悩み、ストレスの原因は「仕事の失敗・責任の発生」と回答した人が最も多く39.7%、次いで「仕事の量」が39.4%、「対人関係(セクハラやパワハラを含む)」が29.6%という順でした。就業形態別で見ると、契約社員で「役割・地位の変化(昇進・昇格・配置転換など)」と答えた人と「会社の将来性」と回答した人が令和4年調査と比べて大幅に増加しました。この他に、「労働時間が長い」「報酬が業務内容に見合っていない」「評価が適切に行われていない」といったことも従業員にとっては、ストレスの原因となります。

<関連>

多様化する価値観に対応するこれからのストレスマネジメント<川崎医療福祉大学 谷原 弘之教授>

ストレスによって発生する「ストレス反応」

ストレスを受けることで、身体的・心理的・行動的にさまざまな反応が出てくる可能性があります。

どのような反応が出てくるか、どの程度の強さで出てくるかは人によってまちまちです。症状が強く出てしまったり、複数の症状が出てしまったりすると仕事の継続や日常生活を送ることに支障が出る場合があります。

以下では、具体的に出てくる可能性のある症状を解説します。

身体的反応

睡眠に関するものには、不眠や睡眠過多があります。呼吸に関するものとしては、過呼吸や息苦しさなどです。

高血圧、動悸、不整脈などは、悪化すると命にかかわることがあります。頭痛や頭重感、肩こり、腰痛、背中の痛みなども症状の一つです。倦怠感や疲労感などが出ることも少なくありません。

胃腸症状に関するものとしては、食欲不振や胃もたれ、胃痛、下痢、便秘などがあります。

心理的反応

やる気が低下し、無気力になったり投げやりになったりしてしまうと通勤や通学が難しくなり、結果的に引きこもりとなることも少なくありません。感情の起伏がなくなると、仕事に集中することは難しくなるでしょう。

ケアレスミスやもの忘れが続くと、周囲の人からとがめられたり迷惑をかけてしまったりしてさらに悪化する可能性もあります。

行動的反応

過食や飲酒・喫煙量の増加は、体調に悪影響を及ぼし生活の乱れにつながりかねません。また、他者に対して攻撃的になることもあり、暴言を吐いたり怒りっぽくなったりするなどの行動が見られることもあります。

作業能力の低下や遅刻、欠勤が続くと仕事の継続が難しくなるでしょう。


あなたの1on1、部下の成長につながっていますか?
・1on1の進め方
・部下との会話に困らないテーマ例
・業務習熟度別でのコミュニケーション方法

⇒1on1を効果的に進める解説資料のダウンロード(無料)はこちら

企業がストレスマネジメントを行う効果

ここでは、企業がストレスマネジメントを行うことで得られるさまざまな効果を紹介します。

従業員のメンタルヘルスの向上

ストレスに対処せずにそのままにしておくと、徐々に症状が悪化してうつ病や自律神経失調症を発症する可能性があります。

うつ病は、現代社会の深刻な病気の一つです。厚生労働省のデータによると、一生のうちにうつ病を発症する人は約15人に1人ともいわれており、決して少ない数字ではありません。

精神疾患を発病してしまうと、治療には長い時間が必要です。ストレスマネジメントを行い「自分にはストレスがある」と早い段階で気づくことができれば、速やかに必要な対処が期待できるでしょう。

結果的に、病気の発症を防ぐことができるため、従業員が心身ともに健康に過ごせるようになります。

職場環境の改善

ストレスマネジメントの対策をしていない場合、イライラする頻度が増えたり他の従業員に当たったりする可能性が多くなります。その結果、社内の空気が暗くなりやすくなるでしょう。

ストレスと上手に付き合える従業員が増えれば、職場の雰囲気も明るくなることが期待できます。ストレスマネジメントは、不調を感じている当事者だけでなく全従業員や全社的に進めることが職場環境の改善につながるポイントです。

業務の生産性が向上

ストレスを上手にコントロールできるようになれば、心身の状態が安定し仕事のパフォーマンスにムラが出にくくなります。ストレスの多い職場環境では、いくら優秀な人材でも仕事の効率が悪くなりがちです。

無駄なストレスを感じずに仕事ができれば、同じ時間でもモチベーションや生産性の向上につながるでしょう。生産性が向上すれば、業績によい影響を与え企業価値も向上します。


<関連記事>
モチベーションアップとは?社員のモチベーションを上げる方法、事例

相手との意思疎通がしやすくなる

ストレスを上手にコントロールできるようになれば、感情的になることが少なくなり冷静に相手の話を聞けるようになります。

思い込みや、自分の都合のよい解釈をすることが少なくなれば相手との意思疎通がしやすくなるでしょう。

ハラスメントの防止

ストレスマネジメントを行うことで、従業員のストレスに対する理解が深まり職場でのストレスの原因になっているセクハラやパワハラの防止にもなります。

多くの場合、加害者はハラスメント行為をしている自覚がありません。

「ハラスメントに該当する行為は何か」「相手にストレスを与える行為は何か」について加害者側が理解することが大切です。ストレスマネジメントによって、相手にストレスを与える行為は何かを理解できるようになるため、ハラスメントの抑止力となります。

休職や離職の防止

ストレスで心身に現れた症状が深刻となり、休職してしまうと人材不足につながりかねません。

また、症状がなかなか改善せず離職してしまえば、新しい人材を確保する必要があり、コストがかかります。

ストレスマネジメントを行うことで、休職や離職の防止につながることは企業にとっても大きなメリットです。

<関連>

職場でのストレスが離職の引き金になる前に。人事が取るべき対応とサインの見極め方<奈良大学 與久田 巌教授>

企業イメージ・ブランド価値の向上

ストレスマネジメントの取り組みは、企業イメージやブランド価値の向上にメリットがあると考えられます。

適切なストレスマネジメントにより、従業員の感情コントロール力が高まり、イライラやトラブルが減少すれば、職場の雰囲気が明るくなるはずです。

組織全体の活性化やモチベーション向上につながれば、離職率の低下や過労による訴訟リスクの軽減、口コミ評価の改善といった効果も期待できるでしょう。

このように、健全な職場づくりは、企業の信頼にも大きく影響する重要な要素です。

ストレスマネジメントのやり方

ここからは、従業員がメンタルヘルスを保つために効果的なストレスマネジメントの実践方法を紹介します。大きく分けると「セルフモニタリング」「ストレスコーピング」の2種類です。

セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、自分自身のストレス反応を把握して何が原因になっているのかを知り、ストレスの軽減を図る方法です。

セルフモニタリングは、自分自身の状態を継続的に観察しストレスを感じた場面を思い出し、紙に書き出して記録していきます。紙に書くことで、ストレスの原因になっているものを突き止めることができ、結果としてどのような反応が出たのかを明確にすることが可能です。

記録する際には、以下のポイントを意識します。

  • 自分は今どのような状況にあるのか
  • ストレスの原因になったもの(ストレッサー)は何か
  • ストレスを感じたときに自分はどのような気持ちになったのか
  • ストレッサーによってどのような反応が出たか

セルフモニタリングは、定期的に行いストレスを軽減する方法を見つけていくことが大切です。

ストレスコーピング

ストレスコーピングとは、ストレスに対する具体的な対処法のことです。大きく分けると「問題焦点型コーピング」「情動焦点型コーピング」「ストレス解消型コーピング」の3つに分類されます。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピングでは、何がストレッサーになっているのかを明確にし、ストレッサーを取り除いてストレスのない状態を目指します。

原因となっているものから距離を置く

ストレスの原因になっているものから距離を置くことで、ストレスを受けないようにする方法です。

例えば、ストレスの原因になっている人がいるならば、その人がいない場所に移動したり、その人を遠ざけたりするなどの対処法があります。ただし、人間関係の問題は必ずしもすべてが対処できるとは限りません。

時間や予算がかかるといった問題点を含んでいるため、実現可能性が低い場合もあります。

社会的支援探索型コーピング

ストレッサーを自分一人で解決しようとするのではなく、周りに助けを求める方法のことです。問題焦点型コーピングに含まれます。

上司や同僚、友人や家族など、身近な人に相談することでもストレスを解消することが可能です。人に話すことで、自分の考えを整理できる対処法を見つけられる可能性があるでしょう。身近な人に相談するのが難しい場合は、職場や公的機関の相談窓口に相談するのも一つの方法です。

社会的支援探求型コーピングには、仕事を同僚に手伝ってもらうことも含まれます。

情動焦点型コーピング

情動焦点型コーピングは、問題そのものを解決するのではなく自分の感情をコントロールすることでストレスを緩和する方法です。

職場では、すぐにストレッサーから離れることが叶わない状況もありえるでしょう。自分にとってストレスだと感じていることに対して考え方を変え、ポジティブに考えられればストレスが軽減したり解消したりする可能性があります。ただし、考え方を変える能力となるコーピングスキルが必要です。そのため、スキルを身に付けるまではあまり効果が得られない可能性があります。

ストレスと向き合いながら対処するためのスキルを身に付ける忍耐力が必要です。

認知的再評価型コーピング

認知的再評価型コーピングは、情動焦点型コーピングに含まれるものです。

周囲の人に話を聞いてもらうことで、問題の認識を変えることを意味します。例えば、医師やカウンセラーに相談することで問題に対して新たな気づきをもらえれば前向きな気持ちになることができるでしょう。

相談する相手は、専門家だけでなく家族や知人なども含まれます。

ストレス解消型コーピング

ストレス解消型コーピングは、ストレスを感じたときに問題から離れることによって発散する方法です。人によって内容は異なるものの、多くの人が生活のなかで自然と取り入れています。

リラックスする時間を作る

腹式呼吸を取り入れたりヨガや、アロマテラピーを取り入れたりすることでリラックスできる時間を作る方法です。

座り仕事の人は、身体が固まりやすいため、ストレッチをすると身体がほぐれます。また、お風呂にゆっくり浸かったり、好きな音楽を聴いたりすることもよいストレス解消法の一つです。

自分の好きなことに打ち込みリフレッシュする

休日は、仕事から離れて自分が打ち込める趣味や好きなことを見つけて没頭するとよい気分転換になります。仕事で会う人とは違った人と交流することも、よい刺激になるでしょう。

ランニングやウォーキングなど身体を動かすことも、おすすめのリフレッシュ法です。ただし、リフレッシュのためにわざわざ出かける必要はなく、あくまで自分が心地よい、楽しいと思えることを継続することが大切とされます。

人とのコミュニケーション人とコミュニケーションをとることも、ストレス解消法になります。気遣いの必要がない友人や、家族などとのたわいのないおしゃべりも気持ちの切り替えになるでしょう。

職場でも、周囲の人との雑談は場の雰囲気を和ませ仕事を円滑に進める助けになります。

睡眠をとる

疲れたときは、睡眠をとることもおすすめです。しっかりと眠れると朝の目覚めもよくなりますし、日中に眠くなることもありません。

日中も昼休みに15分程度昼寝をすると頭がすっきりして午後からも集中して仕事に取り組めます。

「大変」「時間がかかる」評価業務の負担を軽減

納得感のある評価を効率的に行うための仕組みを整備し、従業員の育成や定着率の向上に効果的な機能を多数搭載

・360°フィードバック
・1on1レポート/支援
・目標・評価管理
・従業員データベース など

HRMOSタレントマネジメントシステム機能一覧

企業が行うと効果的なストレスマネジメントの手法

従業員が自分のストレスと向き合うためには、企業の支援が必要です。ここでは、企業が行えるストレスマネジメントの手法を紹介します。

社内研修の実施

従業員のなかには、ストレスマネジメントの知識がない人もいるため、企業が従業員に対して社内研修を行うことも大切です。

社内研修を行うことで、従業員の知識やスキル向上につながります。外部の専門家が講師なら、全従業員の集合研修のほか、管理職に向けた従業員からの相談対応や職場環境の改善に対する施策、職場復帰支援などが学べるでしょう。

ワークロードの管理

「ワークロード」とは、従業員一人一人や部署が抱える仕事量や作業負荷のことを指します。このバランスを適切に保つことは、ストレスを防ぐうえで非常に重要です。

過剰な仕事量や無理な納期が続くと、心身に大きな負担がかかり、メンタル不調のリスクも高まります。そのため、業務の分担を定期的に見直して、プロジェクトの計画を調整することで、負荷の平準化に取り組みましょう。

また、タスクの優先順位を明確にし、定期的に進捗を確認することで、効率的かつ健康的に働ける環境づくりが可能になります。

管理職によるラインケア

管理職をはじめとした上司が部下の様子を観察してストレス状態にあると感じる場合は、ケアを行うことが効果的です。

日常的に上司と部下がコミュニケーションを取れる信頼関係を構築し、気軽に相談しやすい雰囲気を作ることがポイントとなります。

ただし、管理職の負担が大きすぎると管理職のストレスにもつながるため、全従業員でサポートする体制を作ることが大切です。

マインドフルネスプログラムの実施

ストレスマネジメントの実践的な手法として、近年注目されているのが「マインドフルネス」です。

呼吸や瞑想を通じて、今この瞬間の心身の状態に集中し、思考や感情を評価せずに観察することで、ストレスの軽減や自己認識力の向上が期待されます。

健康経営度調査にも関連項目があり、多くの企業が導入を進めています。マインドフルネスの習慣化は、メンタルの安定、離職率の低下、業務パフォーマンスの向上にも寄与します。

社内コミュニケーションの活発化

ストレスをためにくい職場づくりには、日常的な会話や情報共有といった社内コミュニケーションの活性化が欠かせません。

上司との1on1面談や雑談、社内イベント、チームビルディングなどを通じて、信頼関係や安心感が生まれ、ストレスの緩和につながります。

テレワークの普及により、オンラインでのやりとりが主流となった今こそ、コミュニケーションを支えるツールやルールの整備が重要です。環境の変化に対応しながら、つながりを保つ工夫が求められています。

柔軟な働き方の導入

リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方の導入は、通勤負担の軽減や業務効率の向上が期待できます。

満員電車によるストレスが解消され、働く時間の柔軟性が高まれば、ストレスマネジメントに効果的でしょう。

働き方の柔軟性を高めるために、ABW(Activity Based Working)やフリーアドレスの導入を行い、従業員の集中力や創造性をサポートする方法もあります。

一方で注意すべきは、リモートワークによる特有のストレスです。リモートワーク中は孤独を感じやすく、孤独感が高まるほど転職意向も高まります。

特に、リモートワーク実施率が2~3割と低い場合、リモートワークで働く人が感じる不安感は1.2倍となるそうです。一方で、リモートワークが大多数の職場のほうが不安感が下がる傾向にあるため、導入方法やリモートワーク導入後のサポートに気を配るとよいでしょう。

定期的な1on1ミーティングを行う

上司と部下で、定期的に1on1ミーティングを行うことも効果的です。部下にストレッサーがないかをヒアリングし、ある場合は一緒に分析して対処方法を考えます。

1on1ミーティングを行うメリットは、部下が重いストレスを抱える前に対処できること、部下は早い段階で上司に相談することでストレスマネジメントを実施できることです。

1on1ミーティングを行う際には、以下の点に配慮しましょう。

  • 上司は無理に話を聞きださない
  • 部下に警戒させない雰囲気を作る
  • 2人だけで話ができる場所を選ぶ
  • ゆったりと話せる場を設ける

また、上司は聞き役に徹することもポイントです。なかには「上司や同じ部署の人に話しにくい」というケースも少なくありません。そのため、人事担当者や外部の専門家が対応する体制を整えておくことも大切です。

<関連記事>
1on1ミーティングを成功させるポイント-代表的な11のテーマをご紹介

メンター制度を導入する

メンターとは、信頼できる相談相手、助言者という意味です。上司とは別に、先輩のような位置付けのメンターを配置してキャリア形成の支援やプライベートな相談相手になってもらいます。

サポートされる若手従業員(メンティ)にとっては、上司よりも年齢の近いメンターのほうが悩み相談しやすい点がメリットです。

<関連>
メンタリングプログラムとは?メンタリングの意味やメリット、プログラムの導入方法について詳しく解説!

アンケートを実施する

上司などに、面と向かって自分の悩みを話しづらいと感じる従業員も少なくありません。そのため、悩みを抱えていないかアンケートを実施することも有益です。

アンケートの回答率を高めるために、記名式か無記名式かを検討し、記名式の場合はどこまで開示するのかも従業員に対して明示する必要があります。

アンケートは、回答する従業員に負担がかかりすぎないようにするため、選択式と自由記述式を織り交ぜるのがポイントです。

ストレスチェック

労働安全衛生法では、50人以上の従業員がいる企業に対して年1回のストレスチェックを義務付けています。

ストレスチェックとは、アンケート方式で従業員のストレス状態を調べる検査で、強いストレスを抱えている人の早期発見が目的です。また、従業員がメンタルヘルスについて考え、企業全体でメンタルヘルスの意識を高めるきっかけにもなります。

ストレスチェックの実施責任は企業にありますが、実際に行うのは産業医や保健師です。検査結果は、部や課などの集団ごとに集計や分析を行い、どの部や課に強いストレスを抱えている従業員が多いのかを判定します。

他の課や部と比べて業務内容や労働時間、仕事の質や量、サポートの有無などの違いを分析することで客観的な判断が可能です。検査結果に基づいて、産業医の面接や指導を行うことが求められています。

ストレスが強いと判断された従業員から申し出があった場合は、産業医が面接し、必要な内容は企業に報告される流れです。報告を受けた企業は、診断結果や面接結果に基づき必要な対策を行わなければなりません。

具体的な対策としては、以下のようなものがあります。

  • 休暇を与える
  • 休職させる
  • 労働時間を短縮する
  • 配置換えを行う など

なお、ストレスチェックは定期的に行うことで従業員のストレスをより正確に把握できます。

ストレスになっている原因を解消する

ストレスの原因が特定の人との人間関係の場合は、その人物と関わらないように対処する方法があります。また、仕事内容で悩んでいる場合は部署異動が効果的です。

長時間労働がストレスの原因になっている場合は、業務内容の見直しをしてみるとよいでしょう。

有給休暇の取得を勧める

仕事ばかりの日々で休みが取れないことがストレスの場合は、有給休暇の取得を推奨することも有効な手立てです。

例えば、「有給休暇を使って旅行に出かける」「趣味に没頭する」「普段会えない人と会う」など息抜きをすることで気持ちもリフレッシュできます。

福利厚生制度の整備

休職した従業員に対して金銭面の補償制度を設けておくことで、スムーズに復職しやすくなります。

社内専門家に相談できる体制を整える

適切なストレス対策を行うためには、専門家に相談できる体制が整っていることも大切です。

特に、強いストレスを抱えている従業員に対しては産業医、保健師、カウンセラーなどの専門家による適切なサポートが欠かせません。

いつでも相談できる専門家が在籍していれば、従業員は安心して働けます。

社外の専門家に相談できる体制を整える

社内専門家だけで対処できない場合を考慮して、社外の専門家を紹介する仕組みを構築しておくことが大切です。ストレスマネジメントでは、当事者だけでなく上司・社内専門家・社外の専門家が連携して従業員のメンタルヘルスをサポートすることが求められます。

従業員が上司や同僚などとの人間関係に悩みを抱えている場合は、社内で相談できる仕組みがあっても相談できない状況に陥ってしまうかもしれません。このようなケースでは、誰でもが利用できる外部の相談窓口を活用することが有益です。

匿名で利用できて相談内容の秘密が守られることを周知させておけば、従業員は安心して相談できるでしょう。

ストレスマネジメントの具体例

ストレスマネジメントに積極的に取り組んでいる企業の事例を3つ紹介します。

大阪ガス株式会社

大阪ガス株式会社ではストレスチェックを年2回実施しています。高ストレス者に対しては医師の面接指導だけでなく、組織担当の医療職による電話やメールでの個別フォロー、健康診断時の対面支援など、きめ細かな対応を行っているそうです。

また、精神科の医師に週2回3時間来てもらうことで、気軽に相談できる社内体制も整備しました。さらに、管理職にはメンタルヘルス研修の実施や「メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種」の受検を義務付けるなど、組織全体でメンタルヘルスの早期発見と対応に努めています。

株式会社ニチレイ

株式会社ニチレイでは、全国の従業員を公平に支援するため、健康推進センターを中心に、産業医やエリア保健師と連携した体制を整備しました。高ストレス者には医師と保健師が連携し、面談後のフォローも丁寧に実施。「COCOサポ育成制度」と呼ばれる管理職向けのラインケア研修を必須にして、全員がラインケアに取り組める環境を醸成しました。

ほかにも、ストレスチェックの結果に基づく職場環境改善にも力を入れており、現場の声を生かしながらPDCAを回し続けることで、具体的な改善につなげています。

SMBC日興証券株式会社

SMBC日興証券株式会社では、若手従業員が多いことを踏まえ、管理職以外にも相談できる「ヘルスケアサポーター」を配置しました。若手向けの研修講師をヘルスケアサポーターが務めることで、従業員の不安を早期に見つけやすくなったそうです。

ストレスチェックでは、受検率が低い部署に対して部門長から受検を促すメール勧奨や、部署内の通達、朝礼時の説明などで受検率を高めています。また、高ストレス者の対応は看護職と産業医が連携し、個人のプライバシーに配慮した運営を行っています。

組織分析の結果をもとに人事部が現地面談を行うなど、実情に応じた対策を進めていることが特徴です。

持続可能なストレスマネジメントの実現に向けて

従業員の健康を守り、持続可能な組織を作っていくためのポイントを解説します。

個人と組織の協力体制

ストレスマネジメントを効果的に進めるには、個人と組織の両面からのアプローチが重要です。ストレス反応に気づかず放置すると、メンタル不調に発展するリスクがあるため、個人が自分のストレスに早く気づくことが予防の第一歩となります。

一方、組織には、ストレスコーピングを学ぶ機会の提供や、1on1ミーティング、ストレスチェックの活用、産業保健スタッフや外部相談窓口の整備など、多角的な支援体制が求められます。個人と組織が連携してこそ、健全な職場環境が実現します。

定期的な見直しと改善

ストレスマネジメントを職場に根づかせるには、現状の把握から体制構築、研修の実施、環境改善、相談体制の整備、効果の評価までを一貫して行うことが大切です。従業員の入れ替わりや業務内容の変化に応じてストレスの状況も変化するため、施策を一度導入して終わりにせず、定期的な見直しと改善を続けましょう。

さらに、ストレス対処法やコミュニケーションスキルなどの継続的な教育も重要です。効果検証とフォローアップを重ねることで、持続可能な職場の健康づくりが可能になります。

まとめ

ストレスマネジメントは、従業員の健康維持にとどまらず、組織の生産性向上や離職防止、企業価値の向上にも直結する重要な施策です。

変化の激しい時代においては、一度の取り組みで終わらせず、柔軟に見直し改善を続けることが鍵となります。

人事部門が主体となって仕組みを整え、従業員一人一人の働きやすさと組織の持続性を両立させるため、取り組んでいきましょう。

客観的な従業員情報を活用し、ストレスマネジメントに取り組もう

効果的なストレスマネジメント施策を講じるためには、まずは従業員情報の見える化と、ストレスの要因や従業員のモチベーションなどの確認が不可欠です。HRMOSタレントマネジメントは、客観的な事実に基づいて従業員情報を可視化できるため、ストレスの要因分析に役立ちます。

また、ストレスマネジメントの施策として1on1ミーティングを導入する場合は、HRMOSタレントマネジメントの1on1機能をぜひご活用ください。詳しい機能紹介は、以下のページからご確認いただけます。

HRMOSタレントマネジメントのサーベイ機能ページはこちら

資料

ハーモスタレントマネジメントを
もっと詳しく知りたい方へ

資料請求はこちら