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生産性の向上は、多くの企業にとって喫緊の課題といえます。そのために必要なことは、無形資産である人への投資です。そこで、企業が持つ人材という資産を数値化する考え方として、ROIが大きな注目を集めています。そこで今回は、なぜ人材への投資が必要なのか、ROIとはどのような考え方なのか、企業はどのようにしてROIを自社の経営・人材戦略に取り入れていくべきか、詳しく解説します。
そもそも人的資本とは
企業が保有する資産は有形資産と無形資産に分けられます。有形資産とは工場の設備のように目に見えるもののことであり、無形資産とは特許などの知的財産や権利、ブランド、ソフトウエア、顧客リストなどのことです。
アメリカでは、1990年代後半に上場企業の資産における無形資産の割合が有形資産を超えることとなりました。そうしたことから、生産性を高めるためには有形資産よりも無形資産に投資をすることが大切だ、といわれています。企業の価値が有形資産から無形資産へとシフトしてきている、ともいえるでしょう。
また、デジタル化・グローバル化の進展も重要なポイントです。DXの普及やAI・ロボットの導入といったデジタル環境の変化や海外市場への進出、海外企業との提携などにより、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化に対応していくためには、従業員のスキルアップや能力開発が欠かせません。労働人口の減少、という問題もあります。少子高齢化により、日本の労働人口が年々減少していることを知らない人はいないでしょう。限られた労働人口で競争力を維持・向上していくためには、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出さなければなりません。
さらに、近年はESG投資が拡大しています。ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)という3つの観点から企業を評価し、投資を行うことです。ESG投資を重視する投資家は、企業の社会的責任や持続可能性を重視しています。企業が自社の人材へどのように投資しているかは、そのような投資家にとって経営状況をより正確に把握し、投資判断を促すための重要な材料となってきているのです。
こうした状況の中、大きな注目を集めているのが無形資産の源泉である人材です。経済産業省が主催し、一橋大学の伊藤邦雄教授が座長として参画したプロジェクトによって発表された伊藤レポートにおいても、経営戦略と人材戦略を連動させることの重要性が訴えられています。そして経営戦略と人材戦略を連動するうえで要となるのが、人的資本という考え方です。
人的資本とは、企業の経営活動において価値を生み出す人材の能力を「資本」として捉える考え方です。具体的には、知識、スキル、経験、能力、価値観など、従業員が有する無形の資産を指します。人的資本の定義は、国際機関や研究者などによってさまざまです。たとえば、経済協力開発機構(OECD)では、人的資本を「個人的、社会的、経済的厚生の創出に寄与する知識、技能、能力及び属性で、個々人に備わったもの」と定義しています。
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人的資本経営とは
人的資本という考え方を活かした経営手法が人的資本経営です。人的資本経営では企業の経営戦略と人材戦略を連動させ、人材を企業の価値向上に貢献する資本として捉えます。
人的資本経営と従来の考え方との最も大きな違いは、人材への投資を売上や利益に直結しないコストとして経営戦略から切り離すのではなく、自社の価値を高める資本と考えることです。もしも人材がただ人件費というだけのコストであるならば、そのコストはなるだけ削減した方がよい、ということになるでしょう。そうした方が会社の利益も増大します。しかし、人材が資本であれば、そのような考え方はむしろ企業にとって悪手となります。なぜなら、最悪の場合、人件費のカットは資産の減少につながるからです。
また、人的資本経営においては、人事戦略が企業の売上や利益に直結する、と考えます。なぜなら、従業員のスキルが向上することは、売上や顧客満足度の向上に直結するからです。つまり、人的資本経営において人材の育成や環境の整備にかかる費用はコストではなく、資産の価値を上げるための投資なのです。
このような人的資本経営に積極的に取り組んでいる企業は多くあります。たとえば、女性管理職比率30%を目指して女性のキャリア構築支援策を多数用意している東京海上ホールディングス株式会社や、人材ポートフォリオによって理想的な経営ビジョンの達成を目指している旭化成株式会社などです。そのほか、KDDI株式会社では新入社員のエンゲージメント向上のため、コース別の採用や通年採用を導入しています。
これらの実例から分かることは、人的資本経営に取り組んでいる企業はそれぞれ自社の経営戦略やビジネスモデル、環境に応じてさまざまな活動を総合的に行っている、ということです。そのため、具体的に何をすればよいのかはそれぞれの企業によります。重要なポイントは、従業員の満足度やエンゲージメントを高めることが企業の競争力や持続可能性を高めることにつながる、ということです。
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人的資本経営におけるROI
先述したように、人的資本経営において人材は資本であり、人材の育成は投資です。投資において重要なことは、投資の有効性を客観的に評価することです。そこで、人的資本経営においてよく用いられている考え方がROI(return on investment)です。ROIとは、投資回収率のことを指します。費用対効果と訳されることも多いです。具体的には「ROI=投資回収額÷投資額」という計算式で算出します。
この式における投資回収額とは、投資の効果として得られる利益や収益のことです。投資額は、投資にかかる費用を意味します。つまり、ROIの値が高ければ高いほど、その投資は費用対効果が高い、というわけです。このように、投資においてROIを算出することで得られるメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 投資の有効性を評価できる
- 投資の優先順位を適切に判断できる
- 投資の効率を向上させられる
ROIは、投資におけるあらゆる分野で用いられています。たとえば、企業の投資活動や金融商品への投資、マーケティング活動などにおける投資効果の評価などです。人的資本経営とは、このROIを人材マネジメントの分野に取り入れることを意味します。
人的資本経営で生産性は上がる?
人的資本経営でROIの考え方を導入するメリットのひとつに、生産性が上がることが挙げられます。なぜなら、ROIの考え方を取り入れれば人材マネジメントの投資効果を定量的に把握できるようになるからです。
投資効果を把握することは、より効果的な人材マネジメント施策を実施することにつながります。また、測定可能な指標を設定することで、人材マネジメント施策の効果についても客観的に評価できるようになるでしょう。その結果、人材マネジメントの効率化・効果向上がはかれます。そのほか、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、離職率の低下や採用力の向上につなげることも期待できます。人材マネジメントにROIの考え方を導入することで従業員の質やパフォーマンスを向上させることができれば、結果的に組織の生産性や競争力にも貢献することになるでしょう。
ただし、人材マネジメントにROIの考え方を導入すれば必ず生産性が上がる、というわけではありません。ROIを算出する際には、人材マネジメントによる利益を正確に評価することが重要です。ROIを活用するため、人材マネジメントのデータを収集・分析できる体制を整える必要もあります。
注意するべきポイントは、人材に対する投資や効果の数値化は、必ずしもすべての人材マネジメントの活動に適用できるわけではない、ということです。特に、ROIでは中長期的な効果や質的な効果を測定することが困難な場合があります。そのため、数値化できない要素も含めた総合的な判断が必要です。
また、従業員に対する投資や効果を数値化することは、必ずしもモチベーションやエンゲージメントにプラスに働くとは限りません。たとえば、数値化された指標によって従業員の評価や報酬が決定される場合は、そのことが原因で従業員のストレスや不満を引き起こす可能性があります。そのため、ただROIを取り入れるだけでなく、従業員の感情やニーズに配慮し、密接なコミュニケーションやフィードバックを行うことが大切です。
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人材マネジメントにおいて定量化できる項目とは
ROIを自社の人材マネジメントに取り入れるためには、人材マネジメントにおける指標を定量化することが大切です。もちろん、どの項目を定量化できるのかは、各企業の状況や経営戦略によって異なります。企業は、自社の状況や経営戦略に合わせて、定量化する項目を検討することが大切です。一般的に、人材マネジメントにおいて定量化できる項目としては以下のようなものが挙げられます。
採用
採用の場面で定量化できる項目は、採用コスト、採用率、内定辞退率、採用ミスマッチ率です。採用コストは、採用活動にかかる費用です。採用率は、応募者数に対する内定者数の割合を指します。内定辞退率は、内定者数に対する辞退者の割合です。採用ミスマッチ率は、採用後一定期間内に退職した従業員の割合を意味します。これらの指標を定量化すれば、採用活動の効率性や効果を評価できるでしょう。たとえば、採用媒体費が100万円、採用担当者の人件費が200万円、採用イベントの費用が300万円、採用数10名、採用単価50万円、採用ミスマッチ率10%とすると、採用活動の投資額は「媒体費100万円+人件費200万円+イベント費用300万円」で600万円であるのに対し、採用人数は「10名×(100-10%)」で9名です。よって採用活動のROIは、「9名÷600万円=0.015」なので1.5%となります。
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人事制度
人事制度においては、給与水準や福利厚生、評価制度、人事異動、人材育成が定量化可能です。給与水準は、従業員の給与の平均を意味します。福利厚生は、従業員に提供される福利厚生の種類や内容です。評価制度は、従業員の能力や成果を評価するための制度を指します。人事異動は、従業員の配置転換や昇進・降格などです。これらの指標を定量化することで、人事制度の公平性や透明性、効果を評価できます。たとえば、給与水準を市場水準と比較したり、福利厚生の充実度を調査したりすることは人事制度の改善につながるでしょう。たとえば、人事制度の運用にかかる費用が100万円、人事制度の改善にかかる費用が200万円、人事制度の運用によって企業に利益が100万円もたらされたとすると、人事制度の投資額は「運用にかかる費用100万円+改善にかかる費用200万円」で300万円です。一方、利益は100万円なので「100万円÷300万円=0.33」で33%となります。
人材育成
人材育成の場面では、研修実施率や研修効果が定量化できます。研修実施率は、従業員が研修に参加した割合です。研修効果は、研修の受講後に従業員のスキルや知識が向上したかどうかを評価する指標です。これらを定量化することで、人材育成の効果を客観的に評価できます。
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働き方
働き方においては、従業員の平均残業時間や従業員が有給休暇を取得した割合、一定期間内に退職した従業員の割合を定量化できます。これらの指標は自社における働き方の質を評価する際に有効です。指標を参考に残業時間の削減や有給休暇取得率の向上、離職率の低下に取り組めば、従業員のワークライフバランス改善が期待できるでしょう。ワークライフバランス改善は従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながります。
多様性・インクルージョン
自社がどれだけ多様性やインクルージョンに対応した環境になっているかを評価するためには、女性活躍比率や外国人材比率の定量化が効果的です。多様性やインクルージョンの向上は、企業の競争力強化やイノベーションの創出につながります。また、社会的責任を積極的に果たす姿勢を示すことは、企業のブランド価値向上につながるでしょう。多様な人材が活躍できる環境は従業員の定着率が高まるため、離職率の低下も期待できます。
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情報開示のガイドライン
定量化した自社の人的資本情報は、開示することで投資家が経営状態を判断する際の材料になります。情報開示においてガイドラインとなるのが「ISO30414」や日本政府が進める人的資本情報開示の政策です。それぞれ詳しく解説します。
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ISO30414
2018年12月、国際標準化機構(ISO)によって出版されたのが、人的資本報告のガイドラインであるISO30414です。このガイドラインは人的資本に関するデータ収集や測定、分析、報告に関する指針を定めたものです。内部や外部のステークホルダーに対し、その企業の人的資本の状況や貢献度を透明化することを目的としています。ただし、ISO30414の認証制度に適用義務はありません。このガイドラインは、あくまでもそれぞれの企業が自発的に取り入れるものとなっています。
ISO30414では、以下の11領域についてデータを用いてレポーティングするための58項目が示されています。
- 1.Workforce availability(ワークフォース可用性)
- 2.Diversity(ダイバーシティ)
- 3.Leadership(リーダーシップ)
- 4.Succession planning(後継者計画)
- 5.Costs(コスト)
- 6.Productivity(生産性)
- 7.Recruitment, mobility and turnover(採用、異動、離職)
- 8.Skills and capabilities(スキル、ケイパビリティ)
- 9.Organizational culture(企業文化)
- 10.Organizational health, safety and well-being(健康、安全、ウェルビーイング)
- 11.Compliance and ethics(コンプライアンス、倫理)
日本政府が進める人的資本情報開示の政策
日本においても、金融庁と内閣官房が人的資本情報開示の政策を進めています。金融庁においては、男女の賃金格差や女性管理職の比率、男性の育児休業取得率を有価証券報告書に記載することが2023年3月期から義務付けられることになりました。そのほか、人材確保の多様性、人材の育成、社内環境整備に関する方針に対しても、目標及び実績を記載することとされています。
内閣府が2022年8月に示した人的資本可視化指針は義務ではないものの、7分野19項目の開示が推奨されています。開示項目は以下のとおりです。
- 1.育成
- 2.エンゲージメント
- 3.流動性
- 4.ダイバーシティ
- 5.健康・安全
- 6.労働慣行
- 7.コンプライアンス/倫理
それぞれの分野は価値向上とリスク管理の観点から選ばれています。企業はそれぞれどの分野や項目が自社にとって重要なのかをよく考え、優先順位を付けることが大切です。
人的資本ROIとは
人的資本経営においてROIが導入されている事例のひとつが人的資本ROIです。人的資本ROIは、人的資本に対する投資の収益率を示す指標を意味します。具体的には、組織が従業員に対して行う投資に対する収益を評価するための指標であり、経営戦略と人材戦略の連動を実現するための概念です。先述した人的資本情報開示の国際規格であるISO30414においても、人的資本ROIは開示を推奨する指標のひとつに位置づけられています。ISO30414が定義する人的資本ROIの計算式は「人的資本ROI=営業利益÷人件費-1」です。
たとえば、ある会社の収益が90億円で、かかった経費が60億円、その経費のうちの給与と福利厚生費が合わせて20億円だったとしましょう。この場合、営業利益は30億円、人件費は20億円です。人的資本ROIの計算式は「(30億円÷20億円-1)×100」になります。「30億円÷20億円」は1.5であり、そこから1を引くと0.5になるので、それに100をかけた値は50、つまり50%です。ちなみに、経済産業省が2022年に発表した企業活動基本統計調査によると、卸売業の平均的な人的資本ROIは57.3%、製造業は45.7%、情報通信業は37.8%、小売業は26.2%です。一般的には、人的資本ROIは20~30%の企業が大半だといわれています。
企業が自社の人的資本ROIを算出することのメリットはさまざまです。たとえば、人事施策の効果を評価できます。企業が人事施策に投資をしづらい理由としてまず挙げられるのは、定量的な結果が分かりづらいことです。しかし、人的資本ROIはそのような課題の解決策のひとつとなるでしょう。なぜなら、この数値を参考に、企業は自社が取り組んできた人材の採用、育成、配置といった人事施策について分析、検討できるからです。人事部門にとっては、自身が行ってきた施策の有効性を実証する指標のひとつになるでしょう。
企業価値の向上につながる、というメリットもあります。人的資本ROIを算出すれば、企業は自社の人的資本に関する情報を財務情報として数値化できるからです。その情報を開示すれば、投資家やステークホルダーに企業の価値を正しく理解してもらいやすくなるでしょう。人的資本の価値を向上させるための取り組みを積極的に行うことは、企業価値の向上につながります。
さらに、経営陣と人事部門の連携強化につながることも人的資本ROIを算出するメリットです。人的資本経営では、人材を企業の価値向上に貢献する資本として捉え、人材の価値を最大限に引き出すための取り組みを行います。しかし、それらがどの程度の効果があったのかを知るためには、数値化した指標がなければなりません。なぜなら、経営陣は企業の業績や価値向上をはかるため、人的資本投資の優先順位を決定する必要があるからです。算出した人的資本ROIは、経営陣が人的資本投資の優先順位を適切に判断するための有力な材料となるでしょう。経営陣と人事部門が投資の優先順位や効果をより明確に共有できるようになることは、両者の連携強化につながります。
人的資本ROIを算出する際の注意点
人的資本ROIの算出には多くのメリットがあるものの、いくつか注意すべきポイントもあります。どのような点に気を付けるべきか、詳しく解説します。
人的資本ROIを絶対視しない
人的資本ROIは重要な指標であるものの、あくまでも指標のひとつに過ぎません。人的資本経営においては、それがすべてではない、ということをよく理解しておく必要があります。たとえば、従業員のスキルアップや能力開発のプログラムの効果を評価する際には、従業員のパフォーマンスや離職率などの指標を用いることが大切です。人的資本投資の効果を正確に評価するための指標は人的資本ROIだけではありません。戦略の策定においては、さまざまな指標を用いて多角的に評価することが大切です。
長期的な視点に立つ
人的資本投資の効果は、短期的に現れるものばかりではありません。そのため、人的資本ROIは長期的な視点で評価する必要があります。また、結果だけでなくプロセスにも着眼するようにしましょう。なぜなら、人的資本ROIは企業や組織の目標達成に必要な中間指標であるKPI(Key Performance Indicator)よりも、むしろ企業や組織の最終的な目標でKPIの集合体であるKGI(Key Goal Indicator)だからです。人的資本ROIそのものをKPIにするのではなく、KGIとしての人的資本ROIが達成されるようにしましょう。
算出定義をよく吟味する
ISO30414の定義における人的資本ROIは、営業利益と人件費によって算出します。ここで重要なポイントは、営業利益や人件費に何を含め、何を含めないか、ということです。たとえば、一般的には採用コストや教育研修費などは人件費に含めません。しかし、それらを含まない指標では実態を表していないこともあるでしょう。また、営業利益についても、別の業績指標への差し替えが必要かどうかをよく検討する必要があります。数値化されるとまるで絶対的なもののように感じるものですが、ROIの数値は何を何で計算するのかによって異なります。そのため、人的資本ROIを自社の経営に活かすためには、算出定義についてしっかり吟味することが大切です。
人的資本ROIが高ければ高いほど良い、というわけではない
注意するべきポイントは、人的資本ROIは高ければ高いほど良いわけではない、ということです。人的資本ROIは、分母である人件費を下げれば大きな値となります。しかし、極端に人件費を下げて高い人的資本ROIを達成しているような企業は、社会にとってもその企業で働く従業員にとっても望ましいものではないでしょう。大切なことは人的資本ROIの数値ではなく、数式におけるそれぞれの数字を比較して企業の実態を評価することにあります。ただ数値だけを追い求めても、人的資本経営は実現できません。
まとめ
ROIの考え方を活用して人的資本経営を推進しよう!
人的資本経営を進めるうえで重要なポイントとなるのは、人材マネジメントにおける施策を定量的に評価することです。その際には、投資にも活用されているROIという考え方を活用するとよいでしょう。ROIを人材マネジメントに取り入れることは、生産性の向上にもつながります。どのような項目を定量化するべきかは、ISO30414や日本政府の人的資本情報開示の政策を参考にするのがおすすめです。