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トイレのマークの色が黒や青であったら「男性用のトイレである」と判断していませんか?人は「色」の情報から無意識にその意味を判断しています。しかし、黒や青い色だがマークは女性だったとしたらどうでしょうか?
この記事では、複数の情報が干渉しあうことで生じる「ストループ効果」の仕組みをわかりやすく解説し、日常生活での具体例やビジネスでの活用方法を紹介します。特徴を理解して効果的に活用することで、正しい意思決定ができるようになるでしょう。最後まで読んで、ぜひ貴社のビジネスに役立ててください。
ストループ効果とは
ストループ効果とは、心理学における重要な認知現象の1つで、色から得られる情報と文字などその意味から得られる情報が矛盾する場合に、二つの情報が干渉しあうため情報の把握に時間がかかる現象です。
たとえば「赤」という文字が青いインクで書かれているとします。このとき「何色で書かれていますか?」との質問に対し、回答できるまでのスピードが鈍くなったり、誤回答が多くなるといったものです。
私たちの脳は目の前に今見えている情報をもとに意味を読み取ろうとします。しかし、上記の例のように文字の色と書かれている文字の意味が矛盾していると判断が遅くなってしまうのです。
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ストループ効果の実験
ストループ効果は、アメリカの心理学者ジョン・ストループが実験の結果に基づいて発表した認知心理学の現象です。次のような実験を行って実証しました。
それぞれ、色の文字を異なる色(「緑色」で「赤」と書かれているなど)のカードを見せ、書かれてある「色」を答えてもらいます。さらに、文字と色が一致したカードも見せ、同様に「色」を答えてもらう実験です。
その結果、文字と色が一致している場合よりも、異なる場合のほうが答えるまでに時間がかかることが明らかになりました。ストループ氏の実験により、彼の名前を由来としてこの現象は「ストループ効果」と呼ばれています。
逆ストループ効果とは
ストループ効果と類似した「逆ストループ効果」という現象もあります。これは、ストループ効果での「何色ですか?」という質問ではなく、「なんという文字が書かれていますか?」と質問した場合に、答えるまでに時間がかかる現象です。
例えば緑色で「赤」と書かれた文字を見せて「この文字は何と書かれていますか?」という実験を行ったところ「赤」と答えるまで時間がかかるという結果になりました。
ストループ効果と逆ストループ効果は以下の違いになります。
- ストループ効果:文字と色が矛盾した状態から「色」を認識するのに時間がかかる
- 逆ストループ効果:色と文字が矛盾した状態から「文字」を認識するのに時間がかかる
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ストループ効果の例
ストループ効果が応用されたものは、私たちの日常生活の中でも多くの場面で見られます。
以下のようなものが代表的です。
- 信号機や道路標識
- トイレのマーク
- 非常口のサイン
1つずつ見ていきましょう。
信号機や道路標識
ストループ効果を身近に感じられるものは信号機や道路標識です。人は信号機の色を「青=進め、赤=止まれ」と認識しています。
道路標識で「止まれ」の標識は通常赤色ですが、これが青色だとしたら戸惑い反応が遅れてしまうでしょう。つまり「止まれ」という言葉と「赤色」が強く結びついているため、色と意味の不一致が起こるのです。
トイレのマーク
ストループ効果は、公共のトイレのマークにも利用されている効果です。男性用は青や黒が多く、女性用は赤やピンクが多く使われており、この色とマークの組み合わせで、私たちは無意識にトイレの性別を識別しています。
もし、男性用のマークが赤やピンクだったとしたら、違和感を感じてしまうのではないでしょうか。これは脳が「男性=寒色系、女性=暖色系」と認識しているためです。
非常口のサイン
非常口のサインも、ストループ効果を巧みに利用した日常的な例の1つです。非常口のサインは、緑色の背景に白い人型が描かれていますが、この色の組み合わせに重要な意味があります。
緑色は「安全」や「安心」を意味し、人が最も敏感に反応する色の1つなのです。もし、非常口のサインが赤で表示されていたら、緊急時に混乱を招く恐れがあるでしょう。
ストループ効果と似た心理効果
ストループ効果と同じような効果に、以下の2つがあります。
- サイモン効果
- 干渉効果
それぞれ、解説します。
サイモン効果
ストループ効果と類似した心理効果の1つに、「サイモン効果」があります。サイモン効果は「位置」と「意味」が一致しない場合に反応時間が遅くなる現象です。たとえば、画面の左側に「右」と書かれている場合、書かれてある情報と位置が異なるため反応が遅くなります。
両者の違いは、ストループ効果が主に「色と文字情報」に関連しているのに対し、サイモン効果は「位置と文字」に関連している点です。
干渉効果
干渉効果は文字や色に限らず、複数の矛盾した情報が判断を遅らせる現象です。
ストループ効果は、色と意味が矛盾している場合に限って現れる現象ですが、干渉効果はさまざまな情報が対象となる点が大きく異なります。
たとえば「富士山」の写真に「エジプト」と書かれていた場合に、写真の場所を聞かれても判断に戸惑うでしょう。ストループ効果も干渉効果の一種です。
ストループ効果が起きる原因
ストループ効果が起きる原因の一つとして「自動処理仮説」が挙げられます。自動処理仮説とは、読み慣れた言語の単語を見ると、脳が意味を自動的に処理してしまうことです。
例えば、「色」が赤い色の物を見た場合には、脳が反射的に「赤色」と判断します。
また「文字」が「緑」と書かれている場合には、「緑はこんな色」と脳が反射的に想像します。
そのため、赤色で「青」という文字が書かれてた場合には、見た瞬間に、脳は色の情報から「これは赤だ」と理解しようとする一方で「赤」という文字の記憶と一致させようとします。一致させようとした際に、それぞれの情報が矛盾しているため干渉が生じ、反応が遅くなるのです。その他に次のような原因があるといった説もあります。
- 「色」と「文字」のように性質の異なる情報であるために脳の処理能力が遅い
- 色は右脳で処理し、文字は左脳で処理しているために時間がかかる
- 「文字を読む速さ」と「色を見分ける速さ」に違いがあるために時間差が生じる
ビジネスでのストループ効果への対策
ストループ効果は、言葉の意味とその表示形式が一致しない場合に、認識や反応が遅れる現象です。とくに、集客や販売の仕事においては、いかに考える必要性を与えないかが、顧客を逃さない重要なポイントとなります。
以下に、ビジネスの場面におけるストループ効果に関する対策やポイントをお伝えします。
商品のイメージと反する色は避ける
例えば果物の「みかん」を宣伝する場合を例に説明します。
みかんに対する一般的な色のイメージは「橙色」を思い浮かべるでしょう。しかし宣伝用のクリエイティブとして橙色ではなく青色を使用したイメージを制作した場合にはどうでしょうか?みかんに対するイメージと異なる色が使用されていることで見ている人は混乱をしてしまい不快感を感じる恐れがあります。
見る人が持つ商品のイメージを意識した色を使用することでストレスを与えず内容を正しく伝えやすくすることができます。
言葉が持つイメージと色を合わせる
商品や物ではなく、感情や状態を表す言葉にも色のイメージがあります。
熱血 = 赤
冷静 = 青
純粋 = 白
憂鬱 = 灰色
もしキャッチコピーの「冷静」という文字の箇所に赤色を使った場合はどうでしょうか?冷静さを感じにくくなってしまいます。
あえてインパクトを与える
ストループ効果によって判断が遅れることはデメリットばかりのようですが、イメージに反する色をあえて使用することで、違和感を感じさせ印象に残りやすくなるというメリットもあります。
しかし単にストループ効果を生じさせて注意を引くだけでは、ストレスだけを感じさせてしまいプラスの効果を得られない恐れがあります。しっかりとデザインの一貫性を把握した上で制作するなど効果的なデザインが求められます。
ストループ効果を仕事に応用する際の注意点
ストループ効果を仕事に応用する際には、いくつかの重要な注意点があります。以下のポイントを押さえることで効果的な活用が可能となり、混乱や誤解を招くリスクを減らすことが可能です。
- デザインと内容の一貫性を保つ
(例)警告メッセージを表示する際には、赤色を使用することで直感的に危険を伝えられる。
- 複雑な情報を一度に提示しない
(例)情報が複雑であるほど、脳が認知する時間が長くなるため、段階的に情報を提供していく。
- 文化の違いを考慮する
(例)トイレのピクトグラムなどは、海外では日本のように男女で色分けされていないことも多い。
ストループ効果を人事に活用する方法
ストループ効果は、人事管理や組織開発において有効に活用できる心理学的現象です。以下に、ストループ効果を人事に活用する方法をいくつか紹介します。
認知処理能力の測定
ストループ課題を用いて、従業員や応募者の認知処理能力を評価することができます。この課題は、注意力、集中力、情報処理速度などを測定するのに適しています。これらの能力は、多くの職種で重要であり、特に複雑な業務や高ストレス環境での業務に適した人材を選考する際に役立ちます。
ストレス耐性の評価
ストループ効果は、ストレス下での認知機能を測定するのにも適しています。ストレスの多い職場環境や役職に適した人材を選ぶ際に、この効果を利用した評価方法を取り入れることで、より適切な人材配置が可能になります。
無意識のバイアスの発見
ストループ効果を応用した課題を用いて、組織内の無意識のバイアスや固定観念を明らかにすることができます。これにより、多様性や包括性を促進するための施策を立案する際の参考になります。
ストループ効果を人事に活用することで、より科学的で効果的な人材管理が可能になります。ただし、これらの方法を実施する際は、倫理的配慮や個人情報保護に十分注意を払う必要があります。また、ストループ効果だけでなく、他の心理学的知見も組み合わせて総合的に評価することが重要です。
タレントマネジメントシステムの活用
ストループ効果による干渉は、特定の状況下でヒューマンエラーを引き起こす可能性があります。たとえば、緊急時や高ストレス下での意思決定において、矛盾する情報が存在する場合、正確な判断や反応が遅れる可能性があります。
評価者に依存した人事評価は、不公平な評価を招くリスクがあります。不公平な評価を行った結果、従業員のモチベーションが下がれば離職率も高くなるでしょう。
このような事態にならないためにも、人事評価は公平性を保たなければなりません。公平な人事評価を実現するためには、タレントマネジメントシステムの活用が有効です。
タレントマネジメントシステムの活用方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
まとめ
ストループ効果とは、文字の意味と色が一致していない場合に反応が遅くなる現象のことを指します。また、ビジネスにおいてもストループ効果の原理が応用されています。
ストループ課題を用いることで、認知処理能力の測定やストレス耐性の評価に応用することが可能です。ストループ効果を活用しビジネスに応用してみてください。
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