目次
メンター制度は、新入社員や若手社員の定着・育成を目的として、多くの企業で導入が進んでいる制度の一つです。
しかし、メンター制度は形骸化しやすく、本当に効果があるのか分からないといわれるケースも少なくありません。
本記事では、メンター制度の基本的な仕組みや役割を整理したうえで、導入目的や成功事例、導入してもうまくいかないといわれる理由と対策について解説します。
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メンター制度とは
メンター制度とは、新入社員や若手社員の相談相手として先輩社員を配置し、業務上の悩みやキャリアの不安、人間関係などについて継続的にサポートする制度です。
メンター制度の目的は、単に業務を教えることではなく、メンティーが安心して働ける環境を整え、早期の独り立ちや成長を支援することにあります。
支援を行う側の従業員を「メンター」、支援を受ける側を「メンティー」と呼びます。
メンターは英語の「mentor」に由来する言葉で「指導者」「助言者」を意味します。また、メンターがメンティーを支援する一連の関わりは「メンタリング」と呼ばれます。
なお、メンター制度の対象は新入社員や若手社員に限られるものではありません。例えば、女性活躍推進を目的として、女性管理職が少ない環境で新たに管理職に就いた従業員に対し、役員や経験豊富な管理職がメンターとして支援を行うケースもあります。
このような取り組みは、厚生労働省の資料でも紹介されており、キャリア段階に応じた支援策としてメンター制度が活用されていることが分かります。
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なぜ企業はメンター制度を導入するのか
メンター制度は、新入社員や若手社員が職場に定着し、スムーズに独り立ちできるよう支援する「オンボーディング」の側面と、メンター自身の成長を促す「人材育成」の側面を併せ持つ制度です。
ここでは、企業がメンター制度を導入する主な目的について解説します。
新入社員の早期定着と離職率の低下
入社直後の時期は、業務や人間関係への不安から離職リスクが高まりやすいタイミングです。そのため、職場への適応をサポートする仕組みとして、メンター制度が活用されるケースは少なくありません。
実際、厚生労働省の「令和4年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況」によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で37.9%、新規大卒就職者で33.8%と、3割以上にのぼっています。
新入社員の定着は、多くの企業にとって継続的な課題といえるでしょう。
日本メンター協会が実施したメンター制度の導入・運営に関する実態調査では、「離職防止策」を目的としてメンター制度を導入している企業が多いことが示されています。
また、定着率向上のために有効な取り組みとして、「メンターとの定期的な対話」や「不安や悩みに関する相談機会の確保」を挙げる企業も多く見られました。
メンター制度を通じて、日常的に悩みを相談できる相手がいることで、不安の蓄積や孤立を防ぎ、結果として早期離職の抑制につながる可能性があります。
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スキルアップとキャリア開発
スキルアップやキャリア開発の支援も、メンター制度が導入される背景の一つです。メンター制度は、メンティーの成長を支援する仕組みであると同時に、メンター自身のキャリア開発にもつながる点が特徴です。
メンターにとっては、メンティーに助言を行う過程そのものが学びの機会となります。後輩からの相談に向き合う中で、自身の直近数年の経験を振り返り、「なぜその判断をしたのか」「どのように乗り越えてきたのか」を言語化することになります。
こうした振り返りが自分自身のキャリアを整理し直すきっかけとなり、育成視点や対話力、コーチング的な関わり方を身につけることにつながるでしょう。
一方、メンティーにとってのスキルアップは、メンターとの対話を通じて課題を構造的に整理できる点にあります。日々の業務の中で感じているつまずきや不安を言語化し、「何が分からないのか」「どこで止まっているのか」を明確にすることで、次に取るべき行動が見えやすくなります。
また、メンターは評価に直接関与しない立場であるため、上司や人事との面談に比べて、よりフラットな視点でキャリアの相談ができる点もメリットです。
本音ベースでの対話を重ねることで、業務スキルの向上だけでなく、自身の強みや志向を踏まえたキャリアの方向性を考える機会となります。
このように、メンター制度はメンティーのスキルアップを支援すると同時に、メンター自身のキャリア開発にも寄与する、双方にとって学びのある仕組みといえるでしょう。
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組織コミュニケーションの活性化
メンター制度は、組織内のコミュニケーションを活性化させる仕組みとしても期待されています。
日本メンター協会の「メンター制度導入実態調査」によると、職場のコミュニケーション活性策として、「話しやすい雰囲気のフリースペースの設置」が最も多く挙げられ、次いで「コミュニケーションや人間関係に関する教育の実施」「メンターとの定期的な対話」が続いています。
定期的な対話の機会が、職場のコミュニケーション促進に一定の効果を持つと考える企業が多いことがうかがえます。
メンターとして相談に応じる中で、相手の悩みや課題を引き出すヒアリング力や、立場に配慮したアドバイス力が育まれる点も見逃せません。
また、メンター制度では別部署の先輩社員がメンターを担当するケースが一般的なため、業務上の直接的な接点が少ない社員同士の交流が生まれやすく、組織全体のコミュニケーション活性化につながる可能性もあります。
こうした対話の積み重ねは、心理的安全性の向上という観点でも有効です。
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メンタル不調やハラスメント問題を早期に把握
メンター制度を導入し、メンターとメンティーが良質なコミュニケーションをとれるようになれば、メンターがメンティーの相談窓口として機能する場合もあります。
仮に、メンティーが社内で人間関係のトラブルを抱えていたり、自身のメンタル不調に悩んでいたりすることをメンターに相談できれば、問題が悪化する前に把握することが可能です。
一方で、コミュニケーションの仕方を誤れば、メンター自身がハラスメントの当事者となる可能性も否定できません。メンター制度は、1対1のクローズドな場で対話が行われるため、メリットだけでなく、リスクもあわせて理解しておきましょう。
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企業文化の継承と組織力強化
企業の価値観や行動規範、暗黙のルールは、マニュアルや研修だけでは十分に伝えきれない場合があります。
メンター制度を通じて、業務の進め方や社内慣習、仕事に対する考え方など、形式知化しにくい要素を直接伝えられる点は大きな特徴です。
また、従業員同士が助け合い、人を育てる文化が根付くことで、企業文化や経営理念が浸透しやすくなるでしょう。
メンター制度を通した組織の風土作りは、従業員の組織への帰属意識を高め、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上や組織力の強化につながるでしょう。
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メンター制度の導入手順
ここでは、メンター制度を導入する際の基本的な流れを、ステップ形式で紹介します。
制度設計の段階で押さえるべきポイントを整理して、形骸化を防ぎ、実効性のある運用につなげましょう。
導入目的とメンターの役割を定める
メンター制度を導入する際は、まず制度の目的とメンターの役割を明確にします。
目的や役割が曖昧なまま制度を開始すると、メンターごとに指導やサポート内容にばらつきが生じ、期待した効果を得にくくなるためです。
また、メンターは通常業務と並行してメンティーを支援する立場となるため、過度な業務負担が生じないように配慮することも重要です。
役割を整理し、どこまでをメンターの役割とするのかを事前にすり合わせておく必要があります。
メンターの選定基準・マッチング方法を検討する
次に、メンターの選定基準やマッチング方法を検討しましょう。
多くの企業では、入社2〜3年目程度の従業員など、年齢やキャリアが比較的近い先輩社員がメンターを務めるケースが一般的です。
年齢や立場が近いことで、上司には相談しづらい悩みも打ち明けやすく、信頼関係を築きやすいと考えられているためです。
メンター制度の成果は、メンターとメンティーの相性に大きく左右されます。
企業によって、選定・マッチングの方法はさまざまです。例えば、以下のように目的や組織風土に応じた方法が考えられます。
- 人事が過去の評価や特性を踏まえて選定する
- 自薦・他薦によってメンターを募る
- 別部署同士になるよう意図的に組み合わせる
- データやアンケートをもとに相性を考慮してマッチングする
- あえてランダムに組み合わせる
「なぜこの組み合わせにするのか」という理由を説明できる状態にしておくとよいでしょう。
運用体制・ルールを整備する
制度を安定的に運用するためには、具体的な運用ルールや体制の整備が欠かせません。
例えば、以下の項目はメンター制度を開始する前に決めておく必要があります。
- 面談の実施頻度や所要時間
- 対面・オンラインなど実施方法
- 面談後の記録(ログ)をどのように残すか
- 誰に、どの範囲まで共有・報告するか
また、メンター制度の運用中にトラブルや深刻な相談が発生した場合に備え、エスカレーションのフローを明確にしておくことも重要です。
人事部門や上長、産業医など、どこにつなぐのかを整理しておくことで、メンター個人に過度な負担が集中するのを防げます。
メンターへの事前研修を行う
メンター制度の効果を高めるためには、メンター向けの事前研修を行うことが望ましいです。研修では、以下のような内容を扱うケースが一般的です。
- メンター制度の概要や導入目的の共有
- メンターに求められる役割や期待値の理解
- メンタリング、コーチング、ティーチングの違いと使い分け
- 傾聴や質問など、基本的なコミュニケーションスキルの強化
メンター自身が「どこまで踏み込んでよいのか」「何を求められているのか」を理解していることで、安心して制度に関われるように準備をしましょう。
メンター制度の運用を開始する
準備が整ったら、メンター制度の運用を開始します。
運用開始後は、制度を任せきりにせず、人事担当者が適宜フォローを行うことが重要です。
あわせて、制度の効果を測定する視点も事前に持っておくとよいでしょう。例えば、以下のような定量・定性の両面から確認することで、制度の改善点が見えやすくなります。
- エンゲージメントサーベイやパルスサーベイによる従業員状況の把握
- 離職率や定着率の変化
- 勤怠不良や相談件数の傾向
運用結果をもとにフィードバックを行い、制度を見直します。このサイクルを回していくことが、メンター制度を形骸化させず、継続的に機能させるポイントです。
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メンター制度がいらないといわれる理由と対策
メンター制度は、新入社員や若手社員の定着・育成に有効な仕組みとされる一方で、「いらない」「意味がない」と評価されることもあります。
その多くは、制度そのものの問題というよりも、設計や運用が適切に行われていないことに起因しています。
ここでは、メンター制度が否定的に捉えられやすい理由と、制度を形骸化させないための対策について解説します。
他の制度との混在とその影響
メンター制度が機能しなくなる要因として多いのが、上司による1on1や人事面談など、既存の制度との役割が整理されていないケースです。
メンターと上司の役割が重なってしまうと、メンティーは「誰に何を相談すればよいのか分からない」状態になりやすく、結果として制度が形だけのものになってしまいます。
特に、実務を通して新人教育を行なうOJTとメンター制度はしばしば混同されがちで、OJTの担当者をメンターのように扱ってしまうケースがあります。
OJTはあくまでも実務の習得が目的で、メンター制度はメンティーの定着やキャリア開発が目的となるため、明確にルールを分けて運用することが大切です。
複数の制度を混在させないために、メンター制度が担う役割や目的を明確にした上で、メンターは評価に関与しない第三者的な立場であることを明示しておきましょう。
形骸化して意味がないケース
メンター制度が「意味がない」といわれる背景には、制度が形骸化してしまうケースがあります。
メンターの役割が曖昧なまま運用されていたり、面談が単なる雑談で終わってしまったりすると、制度の効果を実感することは難しくなるでしょう。
また、メンターに対する研修やフォローが行われていない場合、メンター自身が何を意識して関わればよいのか分からず、制度が形だけのものになりがちです。
こうした事態を防ぐには、メンターの役割や期待値を事前に共有し、運用開始後も人事が制度の状況を確認しながら改善を重ねていく必要があります。
業務時間を圧迫する懸念
メンター制度に対しては、「業務が忙しくなる」「メンターの負担が大きい」といった懸念が挙がることもあります。メンターが通常業務と並行して支援を行う以上、負担が過度になれば制度自体が敬遠される原因になります。
そのため、面談の頻度や時間は現実的な範囲で設定し、メンターに負荷が集中していないかを人事が定期的に確認することが重要です。
必要に応じて人事や上長がフォローに入るなど、メンターを一人で抱え込ませない運用体制を整えましょう。
自主性を奪う可能性
メンターの関わり方によっては、メンティーの自主性を損なってしまう可能性もあります。メンターが答えを与えすぎたり、指示や指導が中心になったりすると、メンティーが自ら考える機会が減ってしまいます。
メンティーの主体性を奪わないためにも、メンターに向けた事前研修やフィードバックを行ない、伝え方や質問力などコミュニケーションスキルを強化すると良いでしょう。
中でも、メンティーと関わる際はコーチングとティーチングを使い分ける視点が欠かせません。メンティー自身に考えさせる問いかけを意識し、必要な場面でのみ助言や指導を行うことで、主体的な成長を促しましょう。
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相性が合わない場合の弊害
メンター制度は人と人との関係性を前提とするため、相性の問題が生じることもあります。
相性が合わないまま関係が固定されてしまうと、メンティーは相談しづらくなり、制度そのものが機能しなくなる恐れがあります。
事前に選定基準やマッチング方針を明確にしたうえで、相性が合わない場合に変更を申し出られる仕組みを用意しておくことが重要です。
柔軟に見直せる運用を前提とすることで、制度への心理的ハードルを下げることができます。
タレントマネジメントシステムで再現性のある仕組み作り
メンター制度を運用する際に課題になりやすいのが属人化です。誰がどのメンティーを担当し、どのような面談や支援が行われているのかが見えにくいと、制度の質を一定に保つことは難しくなります。
制度の属人化を防ぐために役立つのがタレントマネジメントシステムです。タレントマネジメントシステムとは、従業員のスキルや経験、キャリア志向などの人材データを一元管理し、人材活用や育成に生かすための仕組みを指します。
登録されたスキル・キャリア志向データをもとに、メンティーに合いそうなメンター候補を検討しやすくなるほか、面談履歴やアクションプランを可視化でき、支援内容を継続的に振り返ることが可能です。
その結果、属人的になりがちなメンター制度を、再現性のある運用へ近づけることができるでしょう。
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メンター制度の成功事例
メンター制度を導入し、人材の定着や活躍につなげた企業事例を3つ解説します。
株式会社高島屋
株式会社高島屋では、女性の活躍推進を目的として、対象や課題に応じた複数のメンター制度を導入しています。
同社では、入社4年目の正社員、契約社員、育児短時間勤務者を対象とした3つのメンター制度を運用しているのが特徴です。
- 入社4年目社員向けの制度:初めての昇格を見据えたキャリア意欲の向上を目的に、年次の近い管理職層がメンターを担当
- 契約社員向けの制度:正社員登用を視野に入れたキャリア形成を支援し、実体験をもとにした助言が行われている。
- 育児短時間勤務者向け:1on1のメンタリングに限らず、ワークショップや座談会を組み合わせた形式を採用しています。育児と仕事を両立しながらキャリアを築く複数のロールモデルを示すことで、多様な働き方やキャリアの選択肢を伝えています。
高島屋の事例は、メンター制度を「まずは小さく始め、対象やニーズに応じて柔軟に設計すること」が成功のポイントであることを示しています。
中外製薬工業株式会社
中外製薬工業株式会社では、新入社員の早期立ち上がりと職場定着を目的として、体系的な育成施策の一環としてメンター制度を導入しています。
新入社員研修に加え、配属後の職場において先輩社員が1on1で支援を行う体制を整えている点が特徴です。
新入社員に対しては、メンター制度とあわせてメンティー研修やフォローアップを実施し、職場配属後も継続的な支援を行っています。
メンターとメンティーは日常的なコミュニケーションを通じて、業務の進め方だけでなく、職場環境や生活面に関する相談にも対応します。
制度の適用期間は配属後約8か月間とされており、目標達成に向けた伴走型の支援が行われています。
また、医薬品製造に必要な社内資格である作業者認定の取得を、メンターが支援する仕組みも設けられています。さらに、キャリア入社者に対しても、同じ部署・部門からキャリアメンターを選任し、不安や疑問を解消しながら早期活躍を後押ししています。
株式会社メルカリ
メルカリグループでは、次世代リーダーの成長機会を創出する取り組みとして、経営陣がメンターを務める「Exec Mentoring Program」を導入しています。本プログラムは、育成型組織を目指す方針のもと、経営陣とHRBPが共同で企画しました。
選抜されたメンバーは、自身の直属上司ではない「斜め上」にあたる経営陣をメンターに指名し、半年間にわたり月1回程度のメンタリングを実施します。
実施頻度やテーマはメンティーが主体的に決める仕組みとなっており、業務上のフィードバックに加えて、キャリアや意思決定の視点について対話する時間が設けられました。
参加者からは、経営視点での助言を通じて課題設定の解像度が高まった、意思決定や行動のスピードが上がったといった声が挙がっています。
メンター制度と他の人材育成制度との違い
人材育成施策にはさまざまな制度がありますが、それぞれ目的や役割は異なります。メンター制度の位置づけを明確にするため、OJTや1on1ミーティング、リバースメンター制度との違いを整理します。
OJTとの違い
OJTとは、実際の業務を通じて、新入社員や若手社員のスキルを高めていく育成方法です。現場の実務に直結した指導が中心であり、業務習得を目的とした育成手法といえるでしょう。
一方、メンター制度は実務指導そのものを目的とする制度ではありません。業務上の悩みだけでなく、職場への適応やキャリアに関する不安など、仕事全般に関わる相談を受け止める役割を担います。また、直属の上司ではなく、評価に関与しない立場の先輩社員が担当する点も、OJTとの大きな違いです。
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1on1ミーティングとの関連
メンター制度と混同されやすい施策に、1on1ミーティングがあります。どちらも定期的な対話を通じて成長を支援する点は共通していますが、立場や目的には違いがあります。
1on1ミーティングは、主に上司と部下の間で行われ、業務の進捗確認や目標設定、成長支援を目的とするケースが一般的です。評価に関わる話題が含まれることもあり、一定の緊張感を伴う場になりやすい特徴があります。
一方、メンター制度は、評価から切り離された関係性を前提としています。そのため、日々の不安や悩み、将来に対する迷いなど、1on1では話しづらいテーマも扱いやすい点が特徴です。
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リバースメンター制度への関心
リバースメンタリングとは、若手社員がメンターとなり、先輩社員や管理職に対して助言や支援を行う仕組みです。
若手社員が得意とするデジタルスキルや新しいツールの活用方法、若い世代の価値観を共有することが主な目的となります。これにより、ベテラン社員のスキルアップや意識改革につながるだけでなく、世代間の相互理解を促進する効果も期待されています。
従来の「先輩から後輩へ」という関係とは逆の構造を取る点が特徴で、双方が学び合う関係を築くことで、組織全体の活性化を目指す制度として導入が進んでいます。
まとめ
メンター制度は、新入社員や若手社員の定着・育成を支援する有効な仕組みです。一方で、目的や役割が曖昧なまま導入すると、形骸化や負担増につながり、「意味がない」と評価されてしまうケースも少なくありません。
導入にあたっては、制度の目的を明確にし、他制度との役割分担や運用ルールを整理したうえで、継続的に見直していくことが重要です。適切に設計・運用できれば、メンティーの成長支援だけでなく、メンター自身の育成や組織全体の活性化にもつながるでしょう。
HRMOSタレントマネジメントによるメンター制度の属人化予防
メンター制度がうまく機能しない原因の一つが、属人的な運用です。誰がどのような支援を行っているのかが見えない状態では、制度の改善につなげることが難しくなります。
HRMOSタレントマネジメントを活用すれば、従業員のスキルやキャリア志向をもとにメンター候補を検討しやすくなり、面談履歴や支援内容の可視化も可能です。
メンター制度を「やって終わり」にせず、継続的に機能させるためにも、タレントマネジメントシステムを活用した再現性のある運用を検討してみてはいかがでしょうか。


