コンピテンシーとは?面接評価や目標管理への使い方をわかりやすく解説

コンピテンシーとは、パフォーマンス力の高い社員に共通する行動特性のことです。職能資格制度や成果主義に代わってコンピテンシー評価を取り入れたり、面接官の勘に頼る面接をなくすためにコンピテンシー面接を取り入れたりする企業が増えています。

コンピテンシーをもとに人事評価や採用面接を行えば公平な判定を行えますが、効果的に活用するためには正しい意味やメリットなどの理解が不可欠です。本記事では、コンピテンシーの意味や注目された背景、コンピテンシー評価のメリット・デメリット、失敗しない導入手順などを網羅的に解説します。

コンピテンシー評価とは?

まずコンピテンシー評価がどのようなものか、意味を押さえておきましょう。

コンピテンシーとは?

コンピテンシー(competency)とは、高業績者(Hi-Performer)の成果達成の行動特性をモデル化したもので、「能力」「適性」などと訳されます。コンピテンシーは、1970年代にハーバード大学の心理学者であるD.C.マクレランドによって研究が開始され、現在まで経営学や心理学において多くの研究が行われています。

コンピテンシー(行動特性)は、すべての従業員を対象とするわけではありません。組織において活躍している、いわゆるハイパフォーマーと呼ばれるような人物に限定されています。

コンピテンシーの具体的例としては、問題の発生時に原因を見極める注意深さや、取引中に的確な判断が可能な冷静さといった行動特性が挙げられます。コンピテンシーの種類は多岐にわたりますが、どれも企業の武器として大事な役割を果たしていることがポイントです。

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コンピテンシー評価の意味・定義

コンピテンシー評価とは、高業績者の成果達成のコンピテンシー(行動特性)に着目した人事評価制度です。優秀な成果を出している従業員が持続的に高い業績をあげる能力をコンピテンシー(行動特性)に置き換えて表現し、人事評価を行います。

コンピテンシーの研究者であるSpencer and Spencerによると、コンピテンシーは「ある基準に対する有効性やずば抜けて高い業績を生み出す根源的な個人差」と定義されており、以下の2つの要素から成り立つと言われています。

  • 深層的なコンピテンシー…動機、性格・特性、自己概念など
  • 表層的なコンピテンシー…知識・技能・態度(Knowledge,Skill,AttitudeのKSA)

つまり、優れた従業員を見つけてコンピテンシーを真似をすれば、誰でも高評価を得られるという単純なものではありません。また、コンピテンシーは行動そのものを指すのではなく、行動につながる素養部分を示す概念といえます。

コンピテンシー評価の課題

コンピテンシーは高業績者の行動につながる動機や性格、知識や技能などをまとめた概念となるため、正確に可視化するのが難しい点が課題です。この課題を解決するためには、具体性のある評価項目を設定しなければなりません。

高業績者の結果のみに注目せず、そこに至った思考やプロセスを細かく判定します。たとえば、高業績者のセールス手法だけを見るのではなく、市場や消費者の好みを徹底的にリサーチする慎重さや顧客ニーズを掴む技術など、その従業員の性格、特性、知識、技能、態度などを満遍なく把握します。

正しくコンピテンシーを抽出できなければ、コンピテンシー評価そのものの質が低下する点が、コンピテンシー評価の難しさといえるでしょう。

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コンピテンシー評価を導入する企業が増えている背景

従来の職能資格制度の代わりになる人事評価制度として、または能力主義を重視した新しい制度として、コンピテンシー評価を導入する企業が増えています。本章では、コンピテンシー評価が注目されている時代背景について掘り下げます。

成果主義の登場

コンピテンシー評価が注目される前に、成果主義が注目された時代がありました。新卒一括採用をして、定年まで1社で勤め上げる終身雇用制度が主流だった頃は、年功序列や職能資格制度によって従業員の待遇が決まるのが一般的でした。しかし、少子高齢化やグローバル化、技術革新の進展など複数の要因が背景となり、終身雇用制は終焉。国全体で転職や副業を推進する時代となりました。

その結果、勤続年数に応じて評価をされる年功序列制度や、従来型の職能資格制度では、若手や能力の高い従業員を評価しづらいと指摘され始めました。納得感のある人事評価が行われず、能力の高い従業員の転職が相次いだ結果、勤続年数問わず「仕事の成果」で評価を行う成果主義が登場したのです。

成果主義の課題

1990年代後半から、成果主義の考え方を人事制度に取り入れる企業が増加しました。成果主義によって従業員の不公平さは和らいだものの、成果主義ならではの課題が出てきたのも事実です。

成果主義はその名の通り、「成果」のみに着目する制度です。つまり、成果を出すまでのプロセスや人材の持つ性格、動機、スキルなどは重要視されない点が大きな特徴となります。この特徴によると、最終的に成果を出した人のみに評価が集中し、成果を出す過程で支援をした人材の存在がないがしろになるリスクが発生します。成果だけを見て表面的に判断をしてしまうと、プロセスに貢献した人材のモチベーションを下げ、補佐的な業務を担当する人が減り、プロジェクトをスムーズに進行できない可能性もあるでしょう。

また、成果に至った要因が曖昧なため、再現性がないことも課題です。なぜ成果が出たのか、要因やプロセスが可視化されなければ、従業員が安定的にパフォーマンスすることが難しくなります。これらの成果主義ならではの課題を解決策として注目されたのがコンピテンシー評価でした。

成果主義の解決策となるコンピテンシー評価

コンピテンシー評価は「成果」のみならず、高業績者の「行動特性」に着目する人事評価制度です。繰り返しとなりますが、コンピテンシー評価であれば、高業績者の性格や動機、態度、技術など複数の要素を包括して人事評価を行います。また、行動特性を軸とすることで、従業員のキャリアの方向性が明らかになり、目標を立てやすいのも魅力です。

また、グローバル化や外国籍を含む多様な人材確保に取り組むためには、諸外国で導入されているコンピテンシー評価に注目が集まるのは自然な流れといえるでしょう。このような時代背景から、日本でもコンピテンシー評価の導入が増加していると考えられます。

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コンピテンシー評価導入のメリット

コンピテンシー評価を導入したいなら、自社にどのような影響を及ぼすのか事前に確かめましょう。検証の参考になるように、ここでは主なメリットを挙げていきます。

メリット1:納得しやすい人事評価

基準が明確なので、従業員が人事評価について納得しやすくなります。定義されたコンピテンシー項目ごとに判断されるため、高評価につながった理由を容易に把握できるでしょう。低評価だった場合も、どのような行動が不足していたのか理解できます。また、業務の流れごとに行動特性が検証されるので、最終的な成果を出すステップに関与しない人でも、軽んじられる心配はありません。ノルマや売上などの形で数値化できない業務に携わっていても、自分の働きを正当に評価してもらえる可能性が高くなります。コンピテンシー項目ごとにレベルを細分化することで、評価者との人間関係や主観の入り込む余地を減らせることもポイントです。

メリット2:人材育成を促進

従業員の育成を促すことができることもメリットです。自社が求めるモデルを掲げているので、それと比べる形で長所や短所を明示できます。従業員は理想的な自分をイメージすることで、そこまでのロードマップを想定することも可能です。やみくもな努力を避けられるようになり、伸び悩んでいた従業員が急成長することも珍しくありません。コンピテンシー評価の指標は具体的なので、その結果によって従業員ごとの課題がよく分かります。そして、課題の解消がキャリアアップに直結し、自社のみならず市場における評価の上昇にもつながるのです。よって、各自のモチベーションが高まり、行動も短期間で改善されるケースがよくあります。

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メリット3:人材配置の最適化

人材の配置を適切に行いやすい点もメリットの一つです。コンピテンシー項目と照らし合わせることで、従業員ごとに行動の傾向が明らかになります。それを考慮することで、各自の素養を活かせる部門への再配置が可能です。たとえば、コミュニケーションを得意としている従業員なら、営業部門で高い成績を残せる見込みがあります。物事を慎重に分析する従業員は、研究部門で活躍できるかもしれません。もちろん、技能や資格なども関係するので一概にはいえませんが、適材適所を判断する材料として役に立つでしょう。再配置された従業員も働きやすくなり、離職や転職のリスクが下がることも期待できます。

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メリット4:企業の継続的な発展

コンピテンシー評価を長期的かつ適切に運用すれば、企業全体に良い効果が出てきます。なぜなら、そもそもコンピテンシーは企業が必要だと捉えている素養だからです。多くの従業員がその指標で高い評価を獲得すれば、おのずと組織全体の生産性も上がっていきます。そうなると、報酬という形で従業員に成果を還元できるため、さらなるモチベーションの向上も狙えます。社風として定着することで、各部門のポテンシャルを底上げすることも可能です。また、このような好循環を作れることは、中小企業にとっても魅力的なメリットに他なりません。企業の発展を継続させやすく、新規事業を手掛けるような余裕も生まれやすいからです。

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メリット5:ビジョンの見直し

企業の経営状況が良くないときもコンピテンシー評価は役立ちます。評価の結果、自社のビジョンに適した従業員が少ないと判明することもあるでしょう。この場合、従業員をビジョンに合わせる形で教育することが、必ずしも正解とは限りません。かなりの時間とコストが必要なので、発想を変えたほうが有利になるケースもあるのです。たとえば、重視していなかった行動特性をコンピテンシー項目に加えたところ、高評価の従業員が多いと分かる場合もあります。その行動特性が業績に結びつくような戦略にシフトすれば、現状の従業員のままでも収益を伸ばせる可能性が高いです。

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コンピテンシー評価導入のデメリット

コンピテンシー評価によって解決できる課題はたくさんあります。一方、以下に挙げるデメリットの存在を認識しておくことも重要です。メリットだけに注目せず、総合的な観点で導入を検証しなければなりません。もし導入するなら、デメリットの影響が小さくなるような運用を心がけましょう。

デメリット1:導入にかかる手間

導入に手間がかかることはデメリットといえます。コンピテンシー評価で重視する素養は企業によって異なるため、書籍やセミナーなどで方法を学んでも、すぐに実施できるわけではありません。共通のテンプレートがないので、新しい評価制度をゼロから構築することになります。コンピテンシー項目の確定までに、多大なヒアリングが必要になることも少なくありません。そもそも優秀な従業員の選定すら、思うように進められないケースもあるでしょう。既存の評価結果を参考にするだけでは、本当に優れている人材を見落とすリスクがあります。よって、普段から各職場に目を向け、誰がハイパフォーマーなのかチェックしておくことが欠かせません。

デメリット2:目指す役割の偏り

一般的に企業の業務はチームワークによって遂行されています。事業をスムーズに進めるには、自分の役割をそれぞれ果たすことが不可欠です。コンピテンシー評価におけるモデルの定義を誤れば、協調性が失われる原因になります。たとえば、優れたリーダーがいるからといって、その人物像を全社共通のモデルにするのは良くありません。なぜなら、全員がそれを目指すとチームが成り立たなくなるからです。リーダーをフォローできる人材や、指示の内容を迅速にこなせる人材なども必要になります。したがって、どのような役割があるのか部門ごとに検証し、それぞれに適したモデルを定めるという対策が必須です。

デメリット3:柔軟性の低さ

環境の変化に対応する柔軟性が低いこともデメリットです。コンピテンシー項目やそのレベルは具体的に細かく定義されています。つまり、業務や役割が変わったときに、そちらの評価として流用できるような状態ではありません。ステージが変われば、その都度コンピテンシー評価の基準を検討する必要があります。また、企業内の事情だけでなく、業界や社会の情勢によっても、自社で重視される素養は変わりやすいです。よって、PDCAサイクルを回しながら、常にコンピテンシー項目を最適化していくスタンスが求められます。運用を開始したからといって安心せず、フィードバックを受けながら定期的に改良することがポイントです。

コンピテンシー評価の導入を成功させるポイント

企業によって、コンピテンシー評価で得られる効果には違いがあります。十分な恩恵を期待しているなら、以下に紹介する3つのポイントを意識しましょう。あらかじめ把握しておくと、成功の可能性を高められます。

1.導入の目的を理解

コンピテンシー項目を定めても、それらで高評価を得られる人物が少ないケースもあります。だからといって、落ち込んでしまうなら、この評価手法の本質を理解できていません。なぜなら、コンピテンシーが高水準な人物を見つけることは、導入の目的ではないからです。そもそも発展途上の企業において、完成度の高い人材の比率は低くても当たり前です。目標とする水準までの差を正確に割り出し、妥当性がある評価をすることが本来の目的となっています。もちろん、すべてのコンピテンシー項目で高評価の従業員が多いことは理想です。ただし、それは最終的な話であり、少なくとも導入した時点では伸びしろを探ることがポイントになります。

2.企業の業績向上が重要

コンピテンシー評価の目的は上述のとおりですが、企業が目指しているのはあくまでも業績の向上です。人材の再配置や育成にも大いに役立つため、従業員を主体として考えやすくなります。従業員の満足度が高くなり、職場全体のモチベーションが向上しても、収益に結びつく成果が出なければ意味がありません。成果だけに着目しないことはコンピテンシー評価の特徴です。しかし、成果を軽んじることは、企業の成長につながるという人事評価の前提に反します。この点を忘れていると、コンピテンシー評価の成果は中途半端になるでしょう。企業の業績向上というゴールを意識し、それに必要なコンピテンシーを掲げることがポイントです。

3.従業員への事前説明

既存の評価制度が根付いていると、コンピテンシー評価を運用するのは難しい場合もあるでしょう。年功序列に慣れている従業員や、成果を出すことだけに固執してきた従業員は、導入に反対するかもしれません。そのような状態で強引に運用をスタートすると、全社のモチベーション低下を招くリスクがあります。したがって、事前に社内で説明会を実施し、従業員の理解を求めることが大事です。メリットをしっかり印象づけて、デメリットの対策なども説明すると良いでしょう。企業だけでなく、自分にとって恩恵が大きいと分かれば、前向きに受け入れてもらいやすくなります。導入によって成功している事例などを紹介することも有効な手段です。

コンピテンシー評価の導入手順

次にコンピテンシー評価の導入手順を紹介します。具体的な手順は企業によって異なりますが、大まかなフローは以下のとおりです。段階ごとにポイントを説明するのでチェックしておきましょう。

【第1段階】ハイパフォーマーのヒアリング

最初に行うのはハイパフォーマーを調査することです。部門ごとに、貢献度が大きな従業員をピックアップしていきます。そのような人物に詳しく話を聞いて、どのような行動特性があるのか分析しなければなりません。ここでポイントになるのは、成果だけに注目しないことです。成果を生む原因になったアクションを抽出し、それを実施した根拠などもヒアリングします。そうすると、会社生活で大切にしている考えなどが明らかになる場合もあるでしょう。多角的な質問をして、高いパフォーマンスの原動力となっている要素を探ります。自分について正しく理解できていない従業員もいるので、自覚のない潜在的な要素まで見つけるつもりで臨みましょう。

【第2段階】コンピテンシー項目の設定

第1段階の情報をもとにコンピテンシー項目を設定します。優れた従業員ごとにデータをまとめ、共通して多く見られる要素をリスト化することが大事です。ただし、前述のようにコンピテンシー自体は抽象的なものが多いため、そのまま記述すると評価の指標として利用しづらいです。よって、できるだけ具体的な項目を定め、レベルも細かく定義しなければなりません。たとえば、現状に満足しない積極性という素養があるなら、業務改善などのコンピテンシー項目を用意すると良いでしょう。さらに、5つほどのレベルに分けると評価しやすくなります。自分を改善できない人が最低で、チームを改善できる人が最高といった具合です。

【第3段階】指針となるモデルの明確化

コンピテンシー項目が明らかになったら、それらを高いレベルで満たす人材のモデルを明確にします。すべてを兼ね備えている従業員が実在するなら、その人物をモデルにするのが効率的です。しかし、たいていの場合、優れている従業員でも何か欠けている点があります。万能な従業員がいないなら、すべてのコンピテンシー項目が高いレベルの人物をイメージしましょう。それこそが自社の求める人物像なので、理想型のモデルとして定義します。また、実在する従業員と理想型のモデルを融合させ、ハイブリッド型のモデルを設定するという手もあります。このようなモデルを決めておくと、従業員への説明が容易になり、評価の指針を立てやすいです。

【第4段階】自社の戦略とすり合わせ

コンピテンシー項目やモデルが、自社の戦略にマッチするのか検証します。ビジネスシーンの移り変わりは激しく、企業の状況も時間とともに変化していくのが一般的です。企業ごとに求める人物像は異なりますし、同じ企業でも重宝する人材は変わっていきます。したがって、コンピテンシー項目を1つずつ検証し、現時点の指標として適切か判断しなければなりません。モデルに関しても、企業を発展させる人物像として本当に適切なのか考えましょう。自社のビジョンに合っていないなら、評価や育成に関して十分に機能しない可能性があります。そのまま運用を開始するのではなく、第2段階や第3段階に戻ってブラッシュアップすることが大切です。

【第5段階】評価シートを用意して運用スタート

戦略にマッチするコンピテンシー項目を設けたら、それらを含める形で評価シートを作成します。厳密な方法は定められていませんが、業務単位で行動特性を細分化すると点数を付けやすいです。業務で実施するアクションごとに、関連するコンピテンシー項目を評価できるようにします。そこまで終わったら、いよいよ運用をスタートするタイミングです。しかし、完ぺきな評価シートをいきなり用意するのは簡単ではありません。高評価の従業員が多いのに、自社の業績が上がらないようなケースもあるでしょう。その場合は、コンピテンシー項目やモデルが不適切となっています。実際に運用を開始してからも、クオリティを上げるための取り組みも必要です。

コンピテンシー評価の具体的な項目例

コンピテンシーの項目を自社で定める際、コンピテンシーの基本的な考え方を示したコンピテンシー・ディクショナリ―が役立ちます。コンピテンシー・ディクショナリーとは1993年にライル・M・スペンサーとシグネ・M・スペンサーが提唱したものです。コンピテンシー・ディクショナリーでは21の代表的なコンピテンシー群を包括的に説明しており、さまざまな職務に適応可能なように作られています。ただし、これらは個別の職務に合致するわけではないため、あくまでも参考にとどめるよう注意が必要です。

コンピテンシー群コンピテンシー項目
達成とアクション達成重視秩序、クオリティ、正確性への関心イニシアティブ情報探求
支援と人的サービス対人関係理解顧客サービス重視
インパクトと影響力インパクトと影響力組織の理解関係の構築
マネジメント・コンピテンシーほかの人たちの開発指揮命令ー自己表現力と地位に伴うパワーの活用チームワークと強調チーム・リーダーシップ
認知コンピテンシー分析的思考概念化思考技術的/専門的/マネジメント専門能力
個人の効果性セルフ・コントロール自己確信柔軟性組織へのコミットメント

出典:コンピテンシー・ディクショナリー コンピテンシー・マネジメントの展開 抜粋

コンピテンシー評価が採用活動に与える影響もチェック

労働力人口の減少は社会問題となっており、従業員不足に悩んでいる企業がよく見受けられます。そのため、採用活動に力を入れているケースも多いですが、やみくもに募集すると双方にとって喜ばしくない状況になりやすいです。企業は十分なレベルの人材を得られず、応募者もミスマッチにより早期に離職や転職をしかねません。そうなると再び採用活動が必要で、前回の時間やコストが無駄になってしまいます。このような事態を回避するには、できるだけ自社のニーズに合う人材を探すことが重要です。コンピテンシー評価はその観点でも役に立っています。

人手が足りないからといって、増員するだけでは根本的な解決になりません。長期的に活躍できる戦力を確保したいなら、まず自社のニーズを明確にすることが必要になります。コンピテンシー評価を実施している企業は、この点をすでにクリアしている状態です。なぜなら、コンピテンシー項目は自社が重視する行動特性に基づくものだからです。それらを高い水準で満たす人材を採用すれば、企業の戦略において重要な役割を果たす存在になるでしょう。応募者も自分の能力を発揮しやすく、採用後にミスマッチが発覚するようなリスクも小さくなります。自社で末永く活躍してもらうことを見込みやすくなるでしょう。

以上のように、コンピテンシー評価の導入は採用活動にも好ましい影響を与えます。コンピテンシー評価におけるモデルを定めることは、採用したい人物像の明確化に他なりません。即戦力が必要なら、なるべくモデルに近い人材を探すことが重要です。とはいえ、そのような優れた人材がすぐに見つかることは多くありません。行動特性の点でポテンシャルがあると感じるなら、採用してから教育を施すことも視野に入れると良いでしょう。

コンピテンシー面接とは

コンピテンシー面接とは、候補者のスキルや経歴などではなく、過去の経験を掘り下げて行動特性を明らかにして判断する面接手法です。自社の業務で高い成果を上げるための行動特性、すなわちコンピテンシーを持っているかどうかを軸に合否を決定します。

コンピテンシー面接は、面接官による評価のばらつきを防いだり、候補者の学歴や社歴といった表面的な情報だけで判断しないようにしたりする目的で実施されます。

STARメソッドを用いた質問設計

コンピテンシー面接を行う際は、Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Resuits(結果)の4つを中心に対話を掘り下げていきます。これらの頭文字をとったSTARメソッドというフレームワークを使うことで、どのような状況で課題にぶつかり、どんな行動をとって成果に結びつけたのかを聞き出し、候補者のコンピテンシーを確認することができます。

STARメソッド質問例回答例
Situation(状況)部署の中であなたはどんな役割を持っていましたか?〇〇事業部はどのような状況でしたか?人材紹介事業部でマネージャーを務めていました。未経験社員が多かったため、育成を担当しながら現場に出る、いわゆるプレイングマネージャーとして抱える業務量が多くなっていました。
Task(課題)その部署やチームにはどのような課題がありましたか?プレイングマネージャーとして一定の営業目標を追いながら、後進育成もしなければならず、時間配分や優先順位付けが課題となっていました。教育・研修をアウトソースするか、ノンコア業務をシステム化するなど業務量の調整も課題であると感じていました。
Action(行動)チームの育成課題に対してどう対処しましたか。特に苦労した場面はありますか?チームで抱えている業務を洗い出して時間工数を計算しました。何となく忙しくて大変だと話すのではなく、数値的な根拠をもって上長に掛け合い、人材育成か売上目標のどちらかに集中したいと伝え、業務内容のすり合わせを行いました。
Resuits(結果)取り組みの結果、どのような成果が出ましたか?数値的にはどの程度、変化がありましたか。足もとの営業数字は下がったとしても、人材育成にコミットすることで中長期的に見れば売上拡大につながることをシミュレーションして伝えました。タイムラインと数値を分かりやすくプレゼンした結果、人材育成担当としてコミットできるようになり、半年後には未経験メンバーの売上額が平均1.3倍となりました。

コンピテンシー面接の導入メリット

コンピテンシー面接を導入すれば、候補者の本来の実力を可視化することができ、ミスマッチ防止にも効果的です。ここではコンピテンシー面接を取り入れるメリットを解説します。

公平な評価によりミスマッチ防止や人材発掘に寄与

コンピテンシー面接を導入すれば、面接官の属人的な判断を排除して公平な評価を行うことができます。また学歴や年齢、過去の職歴や転職回数など表面的な情報や、第一印象や雰囲気などに惑わされず、客観的な評価をできることもメリットです。

評価基準を確立することでミスマッチ防止にもつながり、ひいては組織文化とマッチする人材の採用にも効果的です。コンピテンシー面接は候補者の素の実力を見極めることができるので、継続的に活用することで、将来性の高い人材を発掘できる場合もあるでしょう。

面接官のスキルアップ

コンピテンシー面接は、面接官のスキルアップにつながる点もメリットと言えるでしょう。コンピテンシー面接では対話の中で「なぜそう思ったのか」「なぜそのような行動をとったのか」と、質問を重ねて状況や行動を深掘りする手法です。

候補者の第一印象や受け答え方、志望動機の内容ではなく、今までの行動・思考・価値観などを対話の中で聞き出して判断するため、面接官のヒアリング能力や対話力の向上にもつながります。面接官の主観を排除して公平な評価をくだすスキルは、日常の業務でも役立ちます。コンピテンシー面接の導入により、候補者の実力を見出し、自社の人材要件に照らし合わせて正確に判断する力を培うことができるでしょう。

タレントマネジメントシステムの活用

コンピテンシーを人事評価や面接に取り入れる際は、タレントマネジメントシステムの活用が有効です。タレントマネジメントシステムとは、従業員の基本情報や保有スキル、能力などの情報を一元管理して、データに基づいた採用や育成、人事配置、人事評価などの業務を行うためのシステムです。

コンピテンシー評価を実施するためには、従業員一人ひとりの行動特性を細かく記録する必要があるため、アナログな管理よりもタレントマネジメントシステムを活用した方が効率的です。

また、システムによってはコンピテンシーを専門的に管理する機能もついているため、人事評価や目標管理がスムーズになるでしょう。

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コンピテンシー評価の適切な運用を目指そう

コンピテンシー評価はメリットが多い評価手法です。公平性の確保や人材育成に役立つだけでなく、採用活動においても恩恵があります。一般的な手順を理解したうえで、コンピテンシー項目やモデルを選定することが大事です。デメリットに注意しつつ、あらかじめ成功のポイントを押さえておくことも欠かせません。導入後は定期的に見直して、自社用に最適化しながら運用しましょう。

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