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人材の持つ能力を十分に活かしたいと考えるのは、企業として当然のことです。従業員側から見ても自身の能力を活かせて評価してもらえる仕事なら、やりがいを感じ、さらなるスキルアップを目指すでしょう。しかし実際にタレントマネジメントをしようとすると、ノウハウがわからず躓くこともあります。この記事ではタレントマネジメントの成功事例、導入効果を詳しく解説します。
タレントマネジメントと人事管理システムの違い
タレントマネジメントとは?
マネジメントは経営や管理を意味する言葉です。アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが、著書「マネジメント」の中で提唱したとされています。ドラッカーのマネジメントの定義は「組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関」です。企業がマネジメントするものには「ヒト」「カネ」「モノ」があります。タレントマネジメントは、人材マネジメントの1つです。タレントマネジメントでは企業の成長に欠かせない「ヒト」の持つスキルや能力、経験といった情報を経営資源と考え、人事戦略として採用や育成、配置に活用して従業員と企業のパフォーマンスを最大化することを目指します。
タレントマネジメントは1990年代に米国の大手コンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニー社が「War for talent(人材育成競争)」という言葉を発信したことが始まりだと言われています。2000年代になって「優秀な人材の早期発掘」「適正配置」「育成支援」の一連のプロセスを統合的に捉える人材マネジメントを指す言葉として欧米で使われるようになりました。日本で普及したのは2010年前後です。タレントマネジメントの対象には正社員だけでなく、パートやアルバイトなどのすべての従業員が含まれます。
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人事管理システムとは?
人事管理システムは採用や育成、退勤管理や給与計算などの人事業務に必要なデータを一元化して、人事業務の効率化を図るためのものです。例えば採用面では優秀な人材の採用というよりは、採用業務を一括管理して効率化し、選考スピードを上げるなどの役割を持ちます。人事業務が効率化されることによって、担当者は採用課題の解決や採用力強化などの主要な業務に力を注ぐことができます。人事業務は給与計算や年末調整など、税金や法律とも密接に関わる業務です。人事管理システムの導入によって手入力による人為的ミスを減らしたり、機密性の高い情報のセキュリティ強化につなげたりといったメリットもあります。
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タレントマネジメントが注目される背景
タレントマネジメントが企業から注目される背景には次のようなものがあります。
1.労働力人口の減少
日本は少子高齢化が進み、慢性的な人材不足に陥っています。これまでのような人を増やして成果を上げるという考え方から、適切な人材を採用・育成して人材のパフォーマンスを高めて成果を上げる方向にシフトしなければ、必要な人材の確保が難しくなってきました。
人材や働き方の多様化
テクノロジーの急速な発達や仕事の専門分化などによって、企業は多様な人材を必要とするようになっています。政府が推し進める「働き方改革」では長時間労働が是正され、それを補うためには人材の生産性向上が必須です。
市場の変化
市場がグローバル化したことで、企業間の競争は世界に及んでいます。誰も考えつかないアイデアを捻出し新しい製品を生み出すには、世界的な競争力を持った人材の育成が急務です。これまでのような新卒一括採用や年功序列などの雇用慣行は、企業の競争力を弱める可能性があります。
技術革新
技術革新によって物理的に人材の能力を管理しやすくなったことも、タレントマネジメントが普及した理由の1つです。いわゆる「HRテクノロジー」が進化し、人材管理を可視化・数値化することができるようになりました。「HR」はHuman Resources(人的資源)の略語です。
成功事例1:ICTを活用して人材の確保とリテンションに成功した事例
A社は、全国展開するフランチャイズ型のチェーンです。店長のパフォーマンスによって店舗の売り上げが左右されるため、従来からパートやアルバイトを店長候補として積極的に社員登用してきた実績があります。A社はタレントマネジメント実践のためのICT(情報通信技術)を導入して、パフォーマンスの高い店長の特性をデータ化して解析しました。同時に店長候補のパートやアルバイトの適性や意欲、商品知識やスキルなどの情報をデータ化し、月ごとに収集・更新しています。これによって、店長候補を全国から簡単に検索できるようになりました。各地のスタッフからの相談をデータとして集め、緊急性の高いスタッフを定期的に検索して、相談内容に応じたサポートができる仕組みを構築したことによってリテンションも高まりました。
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成功事例2:若手社員の育成にタレントマネジメントを利用した事例
総合商社B社の成功事例では、タレントマネジメントの導入によって若手社員の活躍の場が広がり、エンゲージメントも向上しました。B社の課題はグループ内の事業会社の経営領域に若手社員を配置するため、社員を早期に育成することでした。しかし縦割りの組織運営などに阻まれ、従来の人材マネジメントでは対応できないと判断してタレントマネジメントの導入に至ります。B社はまずデータベースを構築して、複数のシステムに分散されていた人事や評価などの社員情報を一元化しました。目的は全社横断的な、人と組織の可視化です。データには経歴やスキルだけでなく、性格や行動特性、上司や同僚との相性なども定期的に蓄積されます。
年次や職種を超えた活躍ができるような環境を整え、年功序列の人事評価にメリハリをつけ若手社員を積極的に登用してモチベーションを高めました。若手社員が希望するキャリアプランを上司と共有する場を設定し、自身の望むキャリアを築ける可能性を示唆して、それに向けた会社のサポートを厚くすることでリテンションも向上しました。
成功事例3:専門部署を置き、優秀な人材の選定と長期的な育成に成功した事例
自動車メーカーのC社がタレントマネジメントに取り組んだ理由は、人材活用のグローバル化が進んだことによって日本人が就くキーポストが減少し、優秀な日本人後継者の不足に直面したことでした。そこで日本人のよさと、データに基づくロジカルな思考ができ、多様性を尊重してグローバルに活躍できる力を兼ね備えた日本人人材の育成強化を図りました。C社は日本人がキーポストに就けない原因を現場経験やマネジメント経験の不足や、早期昇格や抜擢に対する抵抗感、包括的な育成体系や育成環境の不足だと分析します。
実践としては40歳台でビジネスリーダーになったりポストに着任したりできる人材の育成を目指して、タレントマネジメントに特化した部署を置きました。ユニークな取り組みには、人材発掘のための社内スカウトマンの導入があります。スカウトマンは優秀な人材に声をかけ、リーダー育成用プログラムへの参加を促します。C社の育成プログラムは人選とアセスメント、育成計画とフォロースルーからできています。新卒の採用を強化し、3年目からはリーダー候補を発掘します。5年~7年目の社員からリーダー候補を選抜して育成します。これらすべての層について包括的で連続的な育成の仕組みを作り、人選からフォロースルーまでのサイクルを重ねることで育成が加速する仕組みです。
その他、ニトリホールディングス様やグロービス経営大学院様のタレントマネジメントに関するインタビュー内容もご参考ください。
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成功事例を参考にタレントマネジメントを行いましょう
タレントマネジメントの難しさの1つは、人事戦略や目標が企業によって異なり、それに伴って行うべき実践内容も変わるため、ほかの企業の実践を範例として使えないことにあります。しかし他企業の成功事例が、自社でのタレントマネジメント実践のヒントになることは間違いありません。人材を適材適所で使うことは、重要な経営戦略の1つです。