タレントマネジメントでのスキルマップの作り方は?目的、メリット、注意点も解説

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慢性的な人手不足や、新規採用が難しい状況が続き、既存の従業員のスキルアップや、効果的な人員配置で乗り切ろうとする企業が多くなっています。そこで注目されているのが、タレントマネジメント(システム)のスキルマップです。こちらでは、スキルマップの意味や目的に触れ、タレントマネジメントのスキルマップを使うメリット・デメリットを把握した後、作り方や導入、管理する際の注意点を記載します。

タレントマネジメントのスキル管理・可視化方法:スキルマップとは

タレントマネジメントを自社で取り入れる場合や、タレントマネジメントシステムの導入を決定した際に考慮したいのが、「スキルマップ」です。スキルマップは、タレントマネジメントを検討する前から、ビジネスの世界である程度意識されてきました。スキルマップとは、在籍している従業員のスキルを可視化したもので、一覧表にしたりリスト化するケースもある、スキルの管理方法です。なお、スキルマップは、力量表・力量管理表・技能マップと呼ぶ企業もあり、海外ではスキルマトリックスといわれることが一般的です。

スキルマップを作成する場合、それぞれの従業員がどんなスキルを持っているのかに加え、スキルの習熟度をレベル分けします。それらを明確にしたうえで、どの部署に配置するか、持っている能力やスキルを発揮して会社に貢献してもらえる分野は何か、逆に業務遂行に不足しているのはどんなスキルか、これからどの点を伸ばしていってほしいかなど、潜在的な部分まで深掘りして考えられるツールになることがスキルマップに求められます。

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タレントマネジメントでスキルマップを作成する目的

タレントマネジメントにおいてスキルマップを作成する目的として、以下の4つの点を挙げることができます。

1.各従業員のスキルを可視化する

スキルマップは、各従業員のスキルを可視化するのに役立ちます。イメージとしてとらえられがちだった従業員のスキルや能力、特性を、項目や数字を使って明らかにするのが、スキルマップの目的の一つです。スキルの見える化で、さまざまな展開が可能になります。

2.人材採用や育成に役立てる

同一基準により、同じ部署の各従業員のスキルを明確にすると、個人とともに部署の強みや弱みがわかるようになります。足りないとされる部分を、スキルを持つ人材の採用や異動で解消したり、育成プログラムを整備するといった対策が立てやすくなります。スキルマップで得られた結果をもとに、会社全体の業務効率化を考えたり、業績アップに必要な施策を打ち出すうえでも、スキルマップは役立つはずです。
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3.従業員が自分に足りない能力を把握し、改善する

スキルマップは、経営層やマネージャークラスが利用するだけでなく、従業員の成長を促す手段としても活用できます。スキルマップの評価項目や評価の結果を個々の従業員に開示し、自分の強みを把握し、弱いところに気づいてもらうのもスキルマップの役割です。
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4.従業員のモチベーション維持・向上に役立てる

スキルマップを従業員と共有すると、求められているスキルの要件が明確になり、従業員の向上心や意欲を高めることもできます。スキルマップを職場の壁などに貼ったり、個別面談などで開示し、他の従業員のスキルの状況を見られるようにしている会社もあります。良い意味で競争心を刺激できるのも、スキルマップならではの効果といえます。
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タレントマネジメントでスキルマップを作成するメリット

スキルマップを作成すると、多くのメリットが得られます。タレントマネジメントシステムを導入するなど、スキルマップの作成が必須の場合は、良い点・懸念点を理解したうえで作り始めると、自社の目的にマッチしたものが出来上がるに違いありません。

メリット1:業務を標準化できる

スキルマップのメリットの一つに、業務を標準化できる点を挙げられます。誰が業務を担当しても、一定以上のクオリティで行えるのが理想の形です。担当者によって結果にばらつきが出ると、手戻りややり直しが発生するなど、業務効率に影響が出てしまうからです。スキルマップで業務に求められる質とともに範囲を明確にできれば、重複や抜け・漏れ防止につながりますし、業務マニュアル整備に活かすことも可能になります。

メリット2:適材適所の人員配置が可能

スキルマップを作成すると、適材適所に人員を配置したり、採用のミスマッチを避けられるメリットがあります。従業員一人一人のスキルを把握することで、スキルを活かしたい人のチャレンジを後押しできます。逆に、スキルが足らない人を無理な業務につかせるといった事態は避けられるでしょう。

メリット3:採用ミスマッチの防止

スキルマップにより、採用を予定しているポジションとそのポジションに求められるスキルを明確化できているので、選考基準もぶれずに済みます。

メリット4:従業員が抱く不公平感の減少

従業員が不公平感を抱くことが少なくなる点もメリットといえるでしょう。評価基準があいまいなままだと、評価の結果に満足できず、モチベーションの低下や離職の原因になりえます。特に、スキルが高く、将来を嘱望している人材が力を発揮できない状況に置かれたり、辞めてしまうとしたら、会社にとって大きな損失です。スキルマップにより、スキルに重きを置いた明確な評価基準作りや運用が可能になるので、意欲低下や離職阻止の大きな力になるでしょう。

タレントマネジメントでスキルマップを作成するデメリット

タレントマネジメントでスキルマップを作成するデメリット・懸念点を紹介します。こちらも把握しておくことが必要です。

デメリット1:項目や内容、評価基準の決定に時間がかかる

スキルマップを新たに作成しようとすると、項目や内容、評価基準を決めるのに時間がかかるデメリットがあります。スキルマップの項目や基準を決定した後、各従業員のスキルやレベルの把握には、関係者にヒアリングを重ねるなど、さらに時間が必要です。0からスキルマップを作成するには時間とかかわるすべての人の協力が欠かせません。スキルマップ作成にかかる作業工程が膨大になる場合は、テンプレートや成功例を参考にし、自社のニーズにかなったスキル項目を効率よく作れるよう工夫できます。

デメリット2:定期的な見直しが必要

スキルマップは一度作成した後、定期的な見直しが求められます。技術革新が進むにつれ、必要とされるスキルが増えたり、重みづけが変わることが考えられます。作成したスキルマップの評価基準の良しあしは、運用してみて初めて分かることも多いものです。スキルマップの最終ゴールは、自社の経営戦略や成長に、各従業員の能力やスキルが生かされることです。その用途に合っていない・目的と合致していない場合は、スキルマップの改修が必要になります。

タレントマネジメントのスキルマップ作成方法

タレントマネジメントにおいてスキルマップを作成する方法を紹介します。タレントマネジメントシステムを使用し、スキルマップを有効に活用するには、システムに情報をインプットする前段階が重要になります。その点を踏まえた作成方法・手順を記載します。

ステップ1:スキルマップの目的を明確にし、関係部署ですり合わせを行う

スキルマップの目的が明確でなく、各部署が別々の方向を向いてしまっていると、スキルマップ自体の作成が困難になりますし、運用がうまくいかなくなる可能性があります。そのため、スキルマップの目的や最終ゴールを明確化し、関係部署と情報共有しておくことが大切です。スキルマップの目的の通達にあたり、人事評価に活用するものと、人材育成や採用に活かすものとに分けて考えるよう促すと、各関係者は具体的に考えるのに役立つでしょう。

ステップ2:社内で必要とするスキルの洗い出し

スキルマップに載せる項目をピックアップしていきます。項目の洗い出しには、各部署のリーダーだけでなく、実際に業務を担当している方にもヒアリングします。業務レベルでの情報をもとに、網羅性の高い項目を見つけるのが、このステップの目標です。業務の種類別に項目を作成するとともに、難易度を分けて整理しておくと、タレントマネジメントシステムへの設定が容易になるでしょう。

スキルマップの項目設定例(職種別)

スキルマップにどんな項目を設定するとよいか、職種別に参考例を記載します。

ITエンジニア

まず、ITエンジニアですが、プロジェクトの進行と進捗管理に役立つ分野をそのままスキルマップ項目とできるかもしれません。例えば、要件定義・設計・プログラミングといった技術系の項目に加え、ロジカルシンキング・マネジメント・コミュニケーションなど、ヒューマンスキルも評価できるようにするのが効果的です。

営業職

営業職の場合、対象となる顧客が法人か個人かで評価項目が違ってくることが考えられますが、商品知識・顧客開発維持・交渉・進捗管理・クレーム対応・コミュニケーションなどを設定できるでしょう。数値化や言語化が難しいのが営業職のスキルマップで、そこをうまくすくい上げられるかどうか、力量が問われるところです。

事務職

事務職の場合は、職種により専門性が異なりますが、共通しているのはオフィスツールを含むパソコンスキルやスケジュール管理、臨機応変な対応ができるか、などでしょう。それに加えて、総務であれば内部統制、人事であれば労務管理、経理は財務諸表に関する知識や分析力などが加わっていくはずです。

ステップ3:ピックアップしたスキルの分類

収集したスキルの項目を、体系的に分類します。こちらの作業は各部署の責任者などが行いますが、3階層程度に分類していきます。例えば、業務別のスキル項目の整理では、大分類に業務内容、中分類に業務に必要なスキル、小分類にスキルのレベルというように考えるとよいかもしれません。その際、具体的な項目や内容にすると、各従業員は自分が何をすれば評価してもらえるかが明確に理解できるようになるため、運用面での混乱も避けられます。なお、こちらの作業は、次の段階で調整がかかります。7割程度達成できた時点で次のステップに進むと、スキルマップ作成のスピードアップにつながります。

ステップ4:最終調整

各部署で作成したスキルの項目を、人事部門の視点を加えて調整し、確定していきます。部署ごとに設定した項目や分類方法は、自社のスキルマップの目的に照らして考えた際に、足りない部分を発見することもあるでしょう。また、人事部門など、俯瞰して考えられる立場の人が見たときに、分類の粒度の甘さや、評価基準のあいまいさなどが露呈する場合もあります。出来得る限り、すべての人が納得いく項目や評価基準となり、継続した運用が可能なものを作り上げる作業が、こちらのステップです。項目が確定した後、タレントマネジメントシステムで設定し、各従業員のスキルの有無やレベルを入力します。

タレントマネジメントにスキルマップを設定する際の注意点

新たにタレントマネジメントの考え方を取り入れたり、タレントマネジメント(システム)でスキルマップを管理する場合は、作成時や運用面で以下のような注意が必要です。

1.偏った意見が反映されることを防ぐ

タレントマネジメントは、人が主役の人事評価制度であるため、経営層や責任者とともに、従業員の意見を反映した内容になるのが望ましいといえます。タレントマネジメントシステムの作成・運用には、各部署の担当者から最低一人以上選出し、参加してもらうと、バランスの取れた制度にできるはずです。評価する側・される側双方の意見を反映し、納得が得られる基準にしていくことが求められます。

2.評価者により評価結果にばらつきが出ることを認識しておく

どんなに良い評価制度を作成しても、評価する人によって結果にばらつきが生じることは否めません。評価の揺らぎを避けるための対策を講じておくことが大切です。例えば、定期的に評価者を対象とした研修を実施し、当初設定した評価基準の考え方を再認識する場を設けることができます。また、評価に迷うケースなどをヒアリングしておき、それを例題に意見交換するのも良い方法です。

3.評価した後には必ず従業員へのフィードバックを行う

スキルマップにより評価した後、従業員へのフィードバックを確実に実施することが大切です。単に評価結果を従業員に報告するというだけでなく、フォローアップ体制の構築に結び付けるとよいでしょう。全社的に不足しているスキルは、社内研修を利用したり、外部の研修会社に委託して底上げできます。
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4.スキルマップは定期的に改善・更新する

新たにスキルマップを作成する作業は、一大プロジェクトとなる企業も多いことでしょう。しかし、そこで息切れしてしまうと、会社としての成長につながらない点に注意が必要です。時代の移り変わりとともに業務内容が変更になったり、これまでのスキルマップでは対応できなくなるケースも想定されるからです。定期的に、また事業などに大きな変化があった場合にスキルマップの妥当性を考え、改善・更新していくことを忘れないようにしましょう。そのための時間的・人的資源を取り分けておく必要もあります。

タレントマネジメントに効果の高いスキルマップを作成するには

従業員一人一人のスキルが向上することで会社が成長し、経営目標をクリアしていくのが、タレントマネジメントの考え方・目的です。タレントマネジメントシステムを使い、効果を期待できるスキルマップを作成するには、全社的な協力が欠かせません。スキルの洗い出しや項目・レベルの設定の段階で、リーダーだけでなく業務担当の従業員にも参加してもらい、目標を持った働き方を実現できるツールにしていくことが大切です。

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