リテンションマネジメントとは?意味や人事施策、事例などを解説

企業にとって、経営陣や人事・労務などの部門が展開する人材関連のマネジメントは、従業員の士気や、ひいては企業全体の収益や価値も左右する非常に重要なものです。

マネジメント手法はさまざまですが、多くの企業が抱える課題を解決する可能性をもつ「リテンションマネジメント」の存在は無視できません。本記事では、リテンションマネジメントの概要やタレントマネジメントとの関連性、成功のためのポイントなどを解説します。

リテンションマネジメントの意味とは

リテンションマネジメントとは、従業員に長期にわたり企業に在籍し続けてもらうための経営戦略や人事手法を指す言葉です。

「リテンション(retention)」は、維持や保持、引き留めの意味をもちます。人材流出の防止を目的として、経営陣や人事担当者などが取り組まなければならない施策ともいえるでしょう。

企業にとって、従業員の感情や行動を完全にコントロールするのは不可能です。しかし、多くの従業員が働き続けたいと考える組織風土は、経営陣などの努力により構築できます。その努力を施策という形で取り組む経営の戦略や手法がリテンションマネジメントです。

<関連記事>人事にとってのリテンションとは?その意味や人材確保に効果的な施策を解説!

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リテンションマネジメントにはタレントマネジメントが不可欠

人材のマネジメント手法の一つに「タレントマネジメント」があります。「タレント(talent)」は、能力や資質、才能などを意味する言葉です。

タレントマネジメントとは、従業員の能力や資質などに着目し、具体的なスキルや経験値などの情報を一元管理しながら、戦略的に人材の配置や開発を行う手法を指します。タレントマネジメントが適切に行われている企業では、多くの従業員が責任ややりがいを感じられるでしょう。

プロジェクトや業務に対する意義や、自身の存在意義も見出しやすくなり、こうした効果は人材流出の防止にも寄与します。そのため、リテンションマネジメントの成功には、タレントマネジメントの実践が欠かせません。個々の従業員にいかに着目し、それぞれの能力や経験を活かしながらマネジメントを行うのかが重要なポイントとなります。

<関連記事>【タレントマネジメント入門】人事に活用できる仕組みから実践的導入まで

リテンションマネジメントが注目される背景

リテンションマネジメントは、業界問わず多くの企業から注目を集めているマネジメント手法です。それには、社会を取り巻くさまざまな変化が影響しています。ここでは、リテンションマネジメントが注目される背景を解説します。

慢性的な人手不足

日本では、多くの業界や企業で人手不足に陥りつつあります。

人口が減少し、少子高齢化も進み、労働人口そのものも減っているためです。しかし、欧米の一部の国のような移民政策にも、積極的に取り組んではいません。そのため、企業にとっては人手の確保自体が困難な状況です。人手の確保が難しいなか、従業員が流出してしまえば、さらに人材不足に悩まされることになるでしょう。

そのような事態を防ぐ方法の一つとして、多くの企業がリテンションマネジメントを取り入れ始めています。日本の人手不足は慢性化しており、今さらに激しい労働者の奪い合いが生じかねないため、早めにリテンションマネジメントに注目し、積極的に導入を検討することが企業に求められているのです。

人材の流動化

日本社会では、人材の流動化も進んでいます。日本でしばらく続いていた終身雇用制度や年功序列制度の維持が難しくなり、転職がキャリアの選択肢として当たり前になったためです。

リテンションマネジメントにより、自らの意思で企業に留まり続ける従業員を増やすことが企業にとっては欠かせません。労働人口の減少とともに、今後はさらに人材の流動化も加速する可能性が高いでしょう。そうした未来を見据えた企業においては、積極的にリテンションマネジメントに取り組んでいます。

価値観の多様化

人々がさまざまな情報を獲得できる社会となり、価値観の多様化が進んでいます。

価値観の多様化により、これまで常識とされていたことが変化しています。終身雇用制度や年功序列制度の崩壊と同様に、働き方や人生設計、仕事とプライベートのバランスなどにも多様化の影響は及んでいます。価値観の多様化は、人材の獲得と引き留めを困難にします。特色がなく、多様な働き方や価値観を認めない企業で働こうと考える人が減るためです。

リテンションマネジメントは、経営や環境、従業員の価値観など、さまざまな点に着目しながら、人材の定着を目指すマネジメント手法といえます。価値観の多様化に対応するための経営および人事戦略でもあることが、多くの業界や企業から注目を集めている理由の一つです。

競争力の維持

日本の競争力は年々、低下しているといわれています。国際経営開発研究所が2024年6月に発表した「世界競争力ランキング2024」によると、日本の順位は38位となり、過去最低を記録しています。競争力を高めるためには、優秀な人材の確保は必要不可欠です。

しかし、日本では急速なスピードで少子高齢化が進んでおり、多くの企業が労働力不足の問題に直面しています。労働力の母数が減少すれば、限られた労働市場での奪い合いが起き、企業間の人材獲得競争は激しさを増しています。

労働力不足を解消するためには、新たな人材を確保するだけでなく、人材の流出の防止も重要になります。豊富な経験やノウハウを持つ優秀な人材の流出は、企業にとって大きなダメージをもたらします。さらに、人材の流出は、競合他社への技術流出につながる恐れもあります。

労働力不足の今、人材の流出を防止し、競争力の維持を叶えるリテンションマネジメントは注目を集めているのです。

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リテンションマネジメントの基本原則

リテンションマネジメントにはさまざまな手法や考え方がありますが、いずれにしても欠かせない基本原則があります。ここでは、リテンションマネジメントの導入の際に意識しなければならない5つの基本原則を解説します。

評価と信頼

従業員に長く働きたいと思ってもらうためには、企業からの評価と信頼が不可欠です。

企業から従業員への信頼の高まりは、往々にして、従業員から企業への信頼も高めます。そのような関係性の構築には、公平な評価が欠かせません。評価と信頼は密接な関係にあり、リテンションマネジメントに欠かせないものとなります。

育成

従業員の成長を、従業員任せにしてはいけません。

ある程度の自発性を求めるにしても、そのための環境を企業が率先して整える必要があります。育成のためのプロセスを明確にし、それに必要な環境の整備や指導、サポートなどは、リテンションマネジメントの側面からも重要です。

<関連記事>人材育成のポイントとは?考え方や指導のコツを紹介

責任と成長

多くの従業員に対して、責任を負わせながら成長させる制度や文化もリテンションマネジメントには欠かせません。

より多くの責任と成長の機会を与えることは、企業にとっての責任ともいえます。責任と成長は、評価と信頼、そして育成とも密接な関係にあり、リテンションマネジメントにとって不可欠な原則となるでしょう。

<関連記事>企業文化を醸成する方法とは?社風との違いやメリット・デメリットも解説

良好な関係性

企業と従業員、上司と部下、チームのメンバー同士など、組織内のさまざまな関係性を良好なものとする取り組みも重要です。

この場合の関係性とは馴れ合いではなく、心理的安全性の確保といえるでしょう。組織に属する人の多くは、何かしら人間関係の悩みを抱えています。その悩みが退職などにつながるケースも少なくありません。リテンションマネジメントでは、組織内の良好な関係性の構築と維持が不可欠です。

成功

成功は、従業員の士気を向上させます。

成功体験を積み重ねられれば、その企業や業務に対してポジティブな感情を抱くでしょう。ポジティブな感情は、その組織に留まる理由となりえます。立場や業務により成功の定義や程度は異なるものの、企業側が積極的に成功体験を経験しやすい制度や文化の構築が必要です。

リテンションマネジメントを行うメリット

リテンションマネジメントの成功は、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、リテンションマネジメントを行うことで得られる可能性の高いメリットを紹介します。

採用コストの削減

リテンションマネジメントを適切に行うことができれば、離職率の低下につながります。

離職率の低下により、新たな人材を確保する必要性も減るでしょう。その結果、採用コストの削減が見込まれます。離職率の高い企業は、入社直後の退職も考慮し、採用人数を多めに設定するケースも少なくありません。

離職率が低くなれば最低限の採用だけでよくなるため、人材にかけるコストの削減が可能です。新たな人材を獲得した際には、業務遂行のためのトレーニングや研修が必要になります。

リテンションマネジメントにより人材の流出が防げ、採用の回数や人数が減ると、育成にかかるコストも削減できるでしょう。

生産性の向上

リテンションマネジメントが適切に行われている企業では、多くの従業員が高いモチベーションを保ちながら働いています。責任や成長の機会も与えられているケースが多く、そうしたモチベーションは、イノベーションや工夫にもつながり、結果的に生産性の向上をもたらすでしょう。

従業員の入れ替わりの頻度が少なくなる点も、生産性の向上へとつながります。同じ職場や業務を、同じ人が継続して担うためです。あるいは、タレントマネジメントによりポジションや業務を、それぞれ適した人材が担うことでも、同様の効果が得られます。勤続年数が長くなったりノウハウやスキルの共有をすることで業務が効率化され、組織全体の生産性が向上しやすくなるでしょう。

<関連記事>モチベーションアップとは?社員のモチベーションを上げる方法、事例

採用力の向上

リテンションマネジメントは、従業員の価値やモチベーションを向上させる取り組みともいえます。

このような取り組みを積極的に行っている企業で働きたいと考える労働者は少なくないでしょう。就職や転職活動を行っている人に選ばれやすくなる可能性が高まります。

また、企業にとっても必要かつ重要な人材の特徴が明確になるのもポイントです。採用後のミスマッチも防ぎやすくなるため、結果的に採用力の向上へとつながります。

社内ナレッジの蓄積

勤続年数の長い従業員が組織内に増える点は、リテンションマネジメントのメリットの一つです。企業の理念や文化、各業務に関する知識や技術などを持ち合わせた従業員が増えれば、社内にナレッジが蓄積できます。人材の流出は、社内のノウハウなどの流出とも無関係ではありません。

リテンションマネジメントは、人材やノウハウ流出の防止にもつながります。新たな人材を採用した際にも、蓄積した社内ナレッジにより、適切かつ迅速な育成がしやすくなるでしょう。

満足度やエンゲージメントの向上

従業員が自らの意思で企業に在籍し続けているのであれば、多くの従業員が企業や業務、環境などに満足感を抱いている可能性が高いでしょう。

企業や商品への愛着をもっていることは、エンゲージメントが高い状態といえます。適正な評価も得ることで、高まるのが従業員の満足度やエンゲージメントです。離職率の低下や生産性の向上、イノベーションの創出にもつながる効果が期待できます。

<関連記事>エンゲージメント向上 施策とは?従業員満足度とはどう違う?取り組み方法や企業事例について解説

企業の評価や価値の向上

企業として商品を販売し続けている限り、外部からの評価は無視できません。従業員からの評価の高い企業は、社会的な企業価値も高い傾向があります。企業の評価や価値の向上は、優秀な人材や新規顧客の獲得のほか、上場企業であれば株価にもよい影響を与えるでしょう。

社会的評価の高い企業は、他社との取引もしやすくなります。事業の新たな展開や拡大にもつながり、さらに安定した組織の構築や維持をもたらす点もリテンションマネジメントによる効果です。

顧客満足度の向上

従業員にとって価値の高い企業は、顧客にとっても価値のある商品の提供が行える傾向があります。従業員が高いモチベーションとエンゲージメントの状態で業務を遂行していることは、生産性の向上やイノベーションの創出につながり、よい商品やサービスの提供を生み出します。

結果的に顧客満足度も向上し、さらなる顧客やリピーターの獲得を目指せる点も、リテンションマネジメントを積極的に行うメリットです。

組織の安定性の強化

従業員の入れ替わりが重要だと考える企業もあるでしょう。

しかし、モチベーションやエンゲージメントの低下などネガティブな要素に起因する従業員の入れ替わりは、多くの企業にとってデメリットとなりえます。

組織の安定化には、特に優秀な人材の定着が不可欠です。リテンションマネジメントにより従業員の定着率が高まれば、業務の継続性が確保できます。

長期的な経営戦略や計画も立てやすくなり、腰を据えた経営がしやすくなるでしょう。組織の一体感を作り上げる効果も得られ、企業体として安定した成長も見込めます。

リテンションマネジメントが必要な企業の特徴

リテンションマネジメントは、人材の流出を防止し、人材を確保する取り組みであり、次のような企業こそリテンションマネジメントを取り入れるべきだといえます。

離職率が上昇傾向にある

退職する従業員が増えている場合は、会社に対してのエンゲージメントが低下していると考えられます。かつてのような終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前の時代となっている今、働きやすい環境、働き甲斐のある環境を作らなければ、人材の流出を阻止できない可能性は高くなります。

人手不足が進むなか、従業員が退職した場合には、すぐに新たな人材を採用できるとは限りません。

従業員の退職が増え、適切な人材の補充ができなければ、他の従業員にかかる負担が増え、さらなる退職者を生むリスクもあります。離職率が高まっている企業こそ、リテンションマネジメントを取り入れ、人材の流出を阻止するべきでしょう。

採用活動が難航している

企業イメージは、採用活動に影響を与えます。従業員が働きやすい職場環境であれば、従業員の定着にもつながります。

反対に離職率の高い職場では、待遇面や就業環境など、働く人が不満を抱く要素があるのではと疑われる可能性が高くなります。そのため人材が定着しない企業は、採用活動が難航するケースが多いのです。

リテンションマネジメントにより、従業員が働き続けたいという環境を整えられれば、離職率も低下し、企業イメージもアップします。従業員の定着率が高くなれば、イメージのよい企業で働きたいと考える人も増え、結果として採用活動もスムーズに進められるようになるでしょう。

競争が激しい業界である

競争が激しい業界を勝ち抜くためには、他社との違いを生み出す自社だけの強みが必要になります。自社ならではの技術やノウハウを知る従業員の存在は非常に大きいものです。

しかし、仕事に対するやりがいが感じられなくなったり、職場環境や待遇に不満を抱くようになったりすれば、転職を考えるようになるでしょう。

人手不足が加速するなか、競合する会社から見れば、業界をよく知る人材は大きな魅力です。よりよい条件を提示され、経験豊富な人材がライバル社に転職すれば、今後の事業運営に大きなマイナスとなります。

競争が激しい業界だからこそ、競争力を維持するためにはリテンションマネジメントを行い、従業員の定着率を高めることが重要になるのです。

高い専門性を持つ人材が必要である

高い専門性を求められるニッチな分野において、業務に必要な知識やノウハウを持つ人材が退職してしまうと、人材の採用は非常に困難を極めます。退職する従業員と同等レベルの知識やノウハウ、技術を持つ人材がなかなかいないことが分かっているのであれば、やりがいを持って業務に取り組めるよう、従業員のエンゲージメントを高める必要があります。

専門的な知識や技術を持つ人材が、働きやすい環境で長く業務に取り組めるようになれば、技術やノウハウがチームに蓄積するため、後進も育成しやすくなるでしょう。リテンションマネジメントによってよい循環が生まれれば、業務の俗人化を防ぐことができ、事業の安定的な成長を叶えられるようになります。

リテンションマネジメントの具体的な施策

リテンションマネジメントは、さまざまな施策により構築されます。企業の特徴や従業員の特性などにより、適切な施策は異なるでしょう。ここでは、多くの企業が取り組む価値のあるリテンションマネジメントの施策について紹介します。

人事評価制度や報酬の見直し

リテンションマネジメントにかかわる施策のなかで、もっとも重要な位置付けとなるのが人事評価制度です。

適正な評価を受けていないと感じる従業員の多い企業では、リテンションマネジメントが適切に行われているとはいえません。よりよい評価、正当な評価をしてくれる企業に転職してしまうのも当然でしょう。

業務や商品に愛着をもっていたとしても、人事評価制度に問題があれば、やはり退職につながりかねません。正当かつ公平であり、さらには透明性の高い人事評価制度の整備がポイントです。成果や成績に対する報酬も見直しましょう。インセンティブ制度もあれば、従業員のモチベーションはさらに上がりやすくなります。よい意味での社内での競争も促し、成長意欲も高められるでしょう。

<関連記事>人事評価制度とは?意味・導入の目的・注意点など徹底解説!

福利厚生の整備

福利厚生の充実度も、従業員のモチベーションやエンゲージメントに大きくかかわります。生産性やプライベートにも影響を与えるため、必要に応じて新たな福利厚生の導入も検討してみましょう。

福利厚生には、住宅補助や各種施設の割引制度、社員食堂の設置や休暇制度など、さまざまなものがあります。ポイントは、多くの従業員が望んでいるものを取り入れる点です。企業によって従業員の特性や働き方は異なります。有名企業が取り入れている福利厚生が、必ずしもほかの企業に合うとも限りません。

経営陣の独断ではなく、従業員の声も聞きながら、必要な福利厚生から導入する必要があります。また、導入後は、利用率や効果などの分析・検証も行いましょう。

健康やメンタルヘルスの管理

健康は従業員が業務を遂行するうえで非常に重要です。

身体的な健康だけではなく、精神的な健康に対する管理もリテンションマネジメントに不可欠な施策となります。定期的な健康診断やジムの優遇的な利用などは、福利厚生でも対応可能です。

メンタルヘルスに関する相談窓口やカウンセラーの設置も、施策として検討する価値があるでしょう。健康に影響を与えるものや程度は、個人で異なります。

一様な判断基準を設けるのではなく、個々の従業員への丁寧な対応も重要なポイントです。プライベートでの出来事が、健康に影響を及ぼすケースも少なくありません。

プライバシーに踏み込み過ぎない配慮は必要ですが、従業員が自発的に相談できる環境の整備は整えておいた方がよいでしょう。

オンボーディングの導入

新たに採用した従業員に対するオンボーディングも、リテンションマネジメントの施策の一つとなりえます。

組織に馴染みやすい環境を整え、能力の発揮を早めるための取り組みがオンボーディングです。入社後、少しでも企業にマイナスなギャップを感じれば、早い段階で退職してしまう従業員もいるでしょう。早期退職の防止にオンボーディングは効果的であり、人材育成環境の充実や標準化にも寄与します。

組織の底上げが図れる点も大きなメリットです。

在籍中の従業員だけではなく、新たに入社した従業員に対する制度や環境も整えることで、さらにリテンションマネジメントの効果を高められるでしょう。

成長機会の提供

成長はリテンションマネジメントの基本原則の一つでもあり、その機会は企業が従業員に積極的に提供しなければいけません。

より多くの従業員に対して責任のある業務を任せたり、新たな役割を与えたりすることが重要です。スキルや経験などは考慮するものの、年齢や役職などにはあまり固執せずに成長機会を与えた方がよいでしょう。

同じ役割ばかりを担っていると、成長機会を逸してしまう可能性もあります。業務やプロジェクトに対する熱意やモチベーションにも悪影響を及ぼしかねません。

成長機会の提供は信頼関係の構築にもつながります。失敗したとしても、再度チャンスを与える仕組みや文化もリテンションマネジメントには重要です。

社内コミュニケーションの活性化

従業員の退職理由はさまざまです。

家庭の事情などでやむを得ず退職するケースもあれば、新たなキャリアを求めて退職するケースもあるでしょう。

しかし、職場の雰囲気が合わなかったという理由や上司とうまく意思の疎通が取れなかったなど、人間関係が問題で退職に至るケースも少なくありません。従業員の離職率を低下させるためには、人間関係によるトラブルを解消し、働きやすい環境を作ることも重要になります。

みんなが平等に意見を言い合える風通しのよい職場を作るためには、社内コミュニケーションの活性化が欠かせません。上司と部下が定期的な話し合いの場を持ち、仕事の悩みを気軽に相談できるような関係性を築けば、心理的な安全性が増し、退職のリスクを抑えられる可能性があります。

柔軟な働き方の導入

核家族化が進み、結婚や出産を経ても仕事を続ける女性が増えたことなどから、以前とはライフスタイルも変化しています。

また、政府が進める働き方改革でも、多様な働き方を選択できる社会の実現が求められています。ワークライフバランスを考慮した多様な働き方を受け入れる体制の導入も、リテンションマネジメントには必要になるでしょう。

具体的には、リモートワークや在宅勤務、始業時間や就業時間を従業員が設定できるフレックスタイム制、育児や介護のための時間単位年休などの導入は、柔軟な働き方を促進するものです。仕事とプライベートに割く時間や労力のバランスを取りやすくなれば、働きやすくなるため離職率も低下し、さらには仕事に集中しやすくなることで生産性が高まる可能性もあります。

リテンションマネジメントを成功させるポイント

施策を安易に取り入れるだけでは、リテンションマネジメントが成功するとは限りません。ここでは、リテンションマネジメントを成功へと導く重要なポイントを解説します。

現状を正しく把握する

まず行わなければならないのは、現状の把握です。離職率の推移や定着率などを数値化することにより、課題を洗い出し可視化します。

そのうえで、各課題の改善施策を取り入れなければいけません。そのためには、現状の正確な把握が不可欠です。想像ではなく、より多くの従業員の実感や実態に伴った課題や必要な施策を洗い出しましょう。

サーベイやアンケートの実施による従業員の実態の調査・把握も一案です。ミーティングなども実施し、さまざまな意見を収集します。部署ごとに課題や従業員の実態が異なるにもかかわらず、全社的に同じ施策を取り入れても、効果は最大化できません。問題や課題も細分化し、それらを解消するために必要な施策の導入が求められます。

ビジョンや方向性を明確にする

企業や部署ごとのビジョンや方向性の明確化も必要です。

どんな方針なのか、どのような理念を追求したいのかなどが曖昧なままでは、やはり効果の高いリテンションマネジメントは行えません。

リテンションマネジメントは、従業員のエンゲージメントや顧客満足度の向上、商品の質の向上やイノベーションの創出など、さまざまな効果をもたらします。しかし、効果の出る順序は企業ごとに異なります。

組織として明確な目的や具体的な目標を掲げたうえでリテンションマネジメントに取り組まなければ、形骸化するリスクが高まってしまいます。リテンションマネジメントという概念が一人歩きしないためにも、ビジョンや方向性の明確化は重要です。

社内コミュニケーションの活性化を図る

従業員の意見を汲み取ったり、組織の風通しをよくしたり、企業の理念や目標などを浸透させたりするには、活発な社内コミュニケーションが欠かせません。

多くの従業員が気兼ねなく意見交換できる環境が整えられていれば、リテンションマネジメントの効果をさらに高められるでしょう。

社内コミュニケーションの活性化は、リテンションマネジメントの基本原則である良好な関係性の構築にも大いに寄与します。

その結果、高い心理的安全性がもたらされます。心理的安全性の確保は、離職率の低下やイノベーションの創出など、さまざまな効果をもたらします。

上下と横のつながりを見直す

タレントマネジメントは、従業員の持つ能力や経験を発揮してもらうための人事戦略です。従業員のスキルや資格を一元管理することにより、部署の垣根を越えて横断的に業務に取り組むことができます。

このような、上下と横のつながりの見直しは、リテンションマネジメントの重要なポイントとなるでしょう。それぞれの従業員に適した役職や業務を担わせることができ、適切な責任も与え、大きな成果も期待できるためです。

それに対して適正に評価されれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントは、さらに高まります。特定の部署やチーム内のみ、もしくは近い立場の者同士で業務やプロジェクトが完結しないよう上下や横のつながりを見直しましょう。

適切なフィードバックを行う

従業員の成長のためには、適切なフィードバックが欠かせません。

役割を与え責任を負わせれば、ときには失敗もあるでしょう。その場合、単に評価を落とすのではなく、課題を明確にし、次につながるためのサポートをしなければいけません。成果を残した際には、さらなる成長のためのアドバイスや環境を提供するのもポイントです。適切なフィードバックを受けた従業員の企業や経営陣への信頼感やモチベーションの向上も期待できます。存在意義も見出しやすくなり、転職するよりも、「この企業でさらなる成長を目指したい」といった意欲も湧きやすくなるでしょう。

そのような意欲を掻き立てるフィードバックの仕組みの構築が、企業にとってリテンションマネジメントを成功させるためのポイントとなります。

<関連記事>メンバーのモチベーションを上げる!正しいフィードバックの仕方とは

施策の実行と改善を繰り返す

リテンションマネジメントは短期的な効果を狙えるものではありません。

取り入れた施策に効果がなかったり、従業員にとって違和感のあるものとなってしまったりする可能性もあります。

施策を実行したら、その効果を検証・分析し、さらに改善するなどし、それらを繰り返しましょう。中長期的に取り組むのも、リテンションマネジメント成功のためのポイントです。

タレントマネジメントを活用しエンゲージメントを高める

タレントマネジメントを活用すれば、従業員の能力や適性を的確に把握し、能力を最大限に発揮できるポジションに配置できます。また、従業員の強みや弱みを明確にし、適切な研修や教育を行うことで、より高いパフォーマンスを発揮できる人材への育成が可能です。

能力を存分に発揮できるようになれば、仕事に対するやりがいも増すでしょう。また、実績に対する評価が高まれば、自信も深まり、報酬もアップします。さらに、従業員の価値観や適性に合わせたキャリアパスを示すこともできるため、明確な目標を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

つまり、タレントマネジメントを活用することが従業員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させ、優秀な人材の定着につながるのです。

<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

リテンションマネジメントの事例

企業のなかには、従業員の離職率の低下、定着率の向上を目指しリテンションマネジメントを導入しているところがあります。リテンションマネジメントの導入事例を3つご紹介します。

トヨタ自動車の変革を叶える3つの柱

トヨタ自動車株式会社では「誰もが、いつでも、何度でも、失敗を恐れず挑戦できる」会社を目指し、変革の実現に向け3つの柱を打ち出しました。

1つは、多様な選択肢の提供です。

パートナー育休取得制度や本人の希望を尊重する社内公募、社内FA制度などが採用されています。

また、2つ目の柱は従業員の能力やチャレンジに重きを置いた評価制度の導入です。

そして3つ目の柱が、仕入先やグループとの人材交流や、マッチングの活性化による自動車産業全体の発展に貢献する仕組みと、オフィスや託児所などの資産をグループ各社で共同利用できる制度の拡大です。

さらに、個々の従業員としっかり向き合えるよう、管理者のマネジメント教育の拡充も進めています。

鳥貴族が実践する安心して働ける環境整備

全国に居酒屋をチェーン展開する株式会社鳥貴族も、リテンションマネジメントによって従業員の働きやすい環境整備を行っている会社です。

飲食店ではポストが空いていないために昇進できず、昇給できないために退職する人が多いという問題がありました。この問題を解消するため、人事制度を見直し、明確なキャリアパスを示すとともに、独立をサポートする制度も用意しています。

また、柔軟な働き方として、働く地域を限定するコースや、短時間で働くコースなどを設定しており、ライフステージに合わせてコース変更も認める仕組みを導入しています。

さらに、入社後は段階に合わせた研修を行い、転職者の不安を解消するために面接担当者がフォローを行い、悩みをヒアリングすることで離職率を低下させる取り組みを実施しています。

離職率の大幅改善に成功したカネカデリカフーズ

食品製造会社であるカネカデリカフーズ株式会社では、入社3年以内の離職率が約50%にも上るという問題に直面していました。高い離職率の背景には、新入社員に対する十分な教育制度が整っていなかったという問題があったといいます。

そこで、同社では配属してから約半年間は若手社員が指導員となり、新入社員にマンツーマン指導を行う制度を導入しました。

若手社員が指導をすることで、若手社員の指導能力も育成できるとともに、新入社員への技能の伝承も可能です。

さらにこの制度では、コミュニケーション不足も改善できるというメリットがあります。指導期間終了後は、指導員から指導報告書を所属長と人事総務課に提出し、引き続き指導が必要な点についての申し送りも行っています。

新入社員指導員制度の導入により、新入社員の離職率は大幅に減少しています。

イグジットマネジメントの必要性

イグジットマネジメントは、健全な新陳代謝の促進を目的に、従業員の円満な退職を叶えるマネジメント手法です。

従業員の定着率を高めるリテンションマネジメントとは反対の取り組みですが、人材マネジメントにおいてはイグジットマネジメントも大きな意味を持ちます。

かつては、日本企業では終身雇用制度が主流であったため、退職といえば定年退職をするケースがほとんどでした。しかし、現在では、退職を待たずに転職をする人も増えています。そのため、円満な退職によって退職後も退職者との関係を維持できれば、取引先やアルムナイ採用につながる可能性も高められるのです。

アルムナイ採用とは、一度、転職などの理由で退職した社員を再び採用する手法です。自社をよく知る人材であれば、採用や育成のコストもかからず、即戦力として活躍してもらえる可能性があります。

労働力不足が進む今、アルムナイ採用の可能性を高めるためにも、リテンションマネジメントと併せてイグジットマネジメントにも注目する企業が増えています。

まとめ

労働力人口の減少が深刻化する現代において、人材の流出を防ぐためのリテンションマネジメントは、離職率の低下や社内ナレッジの蓄積など、多くのメリットを企業にもたらします。

代表的な施策は、公平かつ透明性の高い人事評価制度の導入や福利厚生の充実などです。とはいえ、効果の高い施策は企業ごとに異なります。まずは自社の現状や従業員の意見を把握したうえで、適切な施策を取り入れなければいけません。適切なリテンションマネジメントは、組織の活性化にもつながるでしょう。

組織診断サーベイで実現するリテンションマネジメント

タレントマネジメントによって従業員のスキルや適性を把握し、持てる能力を最大限に発揮できるポジションへの配置ができればやりがいも高まります。エンゲージメントの向上は、リテンションマネジメントの成功に欠かせないものです。

「HRMOSタレントマネジメント」には、優先して取り組むべき組織の課題が明確に分かる組織診断サーベイ機能が備えられています。改善すべき課題を可視化できれば、リテンションマネジメントも効果的に進めやすくなるでしょう。

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