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タレントマネジメントを実際に行うにあたって、重要となるのが「項目」です。従業員を適切に管理するためには評価にも必要になるため、項目の設定が必要不可欠となります。しかし、具体的にどのようなデータを項目として設定するべきなのでしょうか。今回は、タレントマネジメントにおいて管理すべき項目を5つピックアップして解説します。
タレントマネジメントに必要な管理項目5つ
1.基本情報
まず、従業員の基本情報はタレントマネジメントにおいて最も重要となる情報です。具体的には、年齢・性別・住所・所属・役職などといった属性の情報が該当します。これらの基本的な情報は従業員を検索したり、特定の属性のデータを抽出したりする際に多用することになりますから、適切に管理を行い、誤りや不整合などが起こらないようにしなければなりません。男の従業員なのに登録上女性になっていたり、営業部の部長という所属と役職を持っているはずが企画部の平社員になっていたりする事態はあってはならないのです。
企業における従業員のアイデンティティそのものとも言える基本情報ですが、同時に最も更新することが多くなる情報でもあります。毎年誕生日が来るたびに1歳ずつ加算されていく年齢や、人事異動によって大きく変動することがある所属や役職、転勤等によって移動が発生する住所など、常に最新の情報に更新し続けて正確さを維持しておかなければなりません。更新をしないことで、実際の情報との不整合が発生し、タレントマネジメントを行っていく上での障害となりかねないのです。
基本となる情報であるがゆえに、状況の変化に対してすぐに更新ができるように、常にアクセスすることを心がけるのが重要です。昇進や配置転換といった様々な人事イベントの際には、基本情報をすぐに更新するという癖をつけておくことを心がけましょう。もちろん、設定された誕生日を迎えたり、結婚や引っ越し等のライフイベントが社員本人から報告された場合には、その情報も忘れずにしっかりと更新することをおすすめします。
使う機会が多く、更新頻度も高い基本情報は、従業員の最も重要な個人情報でもあります。故に、情報漏洩に関しては細心の注意を払わなければなりません。外部への持ち出しや外部からの不正なアクセスなどは、絶対にあってはならないことです。適切な権限を持った人員だけがアクセスや更新ができるように、万全の情報セキュリティ対策を敷くようにしましょう。
2.キャリアに関する情報
学歴や職歴、所属履歴などといったキャリアに関する情報は、タレントマネジメントを行っていく上で是非とも集めておきたい情報と言えるでしょう。それと同時に、集めることはあまり難しくない情報でもあります。何故ならば、従業員の経歴に関しては採用活動を行う過程で自然と集まってくるからです。履歴書や職務経歴書、選考面接などで、企業は求人への応募者に対してそれまでの経歴について問います。新卒であれば学歴、中途採用であれば前職までのキャリアなどを聞き、それをもとに応募者を評価して自社とマッチする人材を採用しているのです。
この採用活動の際に応募者から預かった履歴書や職務経歴書は、そのまま従業員のタレントマネジメントに活かすことができるのです。採用が決まった後も、履歴書や職務経歴書はすぐ廃棄するのではなく、タレントマネジメントの情報として活用することをおすすめします。入社後の研修カリキュラムを定めたり、配属先を決めたり、案件をアサインしたりする上ではこのキャリア情報が大いに役に立つことでしょう。
例えば、前職でIT関連の仕事をしていた従業員の場合、ITスキルは十分に備わっていることはほぼ確実であるため、ITの入門研修を行って基礎をもう一度学び直してもらうよりも、いきなり実践的な研修を行って早々に自社での業務フローを覚えてもらうのが効率的です。また、配属先を決める際も情報システム部門やIT関連のサービスを取り扱う部署などに配属させることで、その従業員のパフォーマンスを最大限に発揮してもらえることでしょう。IT業界に関する知識を活かしてもらうために、IT系の事業を展開しているクライアント企業への営業を任せるといったことも可能です。
このように、キャリアに関する情報は、うまく活用することで従業員を適材適所の部署に配置し、業務効率を向上させるという効果をもたらします。もちろん、入社して以降もキャリアは積み上がっていきますから、基本情報ほど頻繁ではないものの、昇進や人事異動といったイベントの際などには更新をすることが必要となる点に注意しましょう。
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3.能力やスキルに関する情報
人事評価において、「どのようなスキルを持っているか」「この人はどのような能力を備えているか」は重要な指標の1つです。スキルを持っていることは、そのスキルを必要とする仕事ができることを意味します。即ち、スキルを持っている人はスキルを持っていない人に比べて任せられる仕事の幅が広く、その人の存在によって企業もより能率的に業務を回したり、事業の幅を広げたりすることが可能となるのです。結果として、スキルを持つ人材を企業は高く評価し、高い給料や地位などといった好待遇を用意して自社で末永く働いてもらうことを目指します。
スキルや能力を持っているかどうかの情報を管理することも、タレントマネジメントにおいて重要です。企業が人材評価を行う上で必要となる情報ですから、誰がどんなスキルや能力を持っているのかについて、普段からきちんと整理しておく必要があるでしょう。その最たるものが資格の取得状況です。資格はそのスキルを持っていることを担保しますから、タレントマネジメントにおいては是が非でも管理しておきたい情報となります。
スキルや能力に関しては、基本的に自己申告であり、業務の中で上司が仕事ぶりを見て「確かにこの人にはこのスキルがあるな」と認めることで、人材評価の際にその評価を加味してスキルや能力に関する情報を修正・確定させていくことになります。入社時にそれまでのキャリアや経歴に基づいてスキルや能力の登録を行い、仕事を通じて得た能力やスキルは上司やメンターとの目標設定面談の中で上司やメンターの承認のもと登録を行うようにするのが良いでしょう。「上位者の補助が必要な場合はレベル1」、「上位者に補助してもらうこと無く最低限の水準で遂行できればレベル2」と言った形で、ある程度定量的な基準が設けられていれば、評価や管理がしやすくなります。
資格については、従業員が資格等を取得した場合に申告して貰うようにすると良いでしょう。資格取得に際して受験料や教材費を企業側に負担してもらえる資格取得支援制度などがあると、従業員も申告しやすくなります。IT企業における基本情報処理技術者や、住宅メーカー等における宅地建物取引士など、企業によっては積極的に取得して欲しい資格が存在する場合もありますので、それらの資格については他の資格とは別に専用の項目を用意しておくのがおすすめです。
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4.勤務状況に関する情報
いくら優秀なスキルを持っていても、いくら仕事に対するモチベーションが高くとも、実際の勤務においてそれらが発揮されているかどうかは別問題です。高いスキルを持っていても遅刻や欠勤が多かったり、高いモチベーションがあってもミスやインシデントを頻発させたりなどといったように、能力やモチベーションの高い人は、必ずしも優秀な従業員ではなく、むしろ問題児である可能性すらあります。そのため、勤怠記録やインシデント記録といった勤務状況の情報は、優秀な従業員であるかどうかを測る上ではスキルや資格、キャリアと並んで重要度が高いと言えるでしょう。
特に勤怠記録に関しては、従業員の日々の勤務状況を知る上で極めて重要な情報となります。遅刻や欠勤が多い場合は生活習慣や体調面に関する改善を求めることがありますし、病気がちであると判断されれば休職を勧告するなど、従業員の心身の健康を守ることにもつながるのです。また、毎日残業をしている状況であれば従業員のタスクが過剰となっていないか、あるいは本人のスキルレベルに見合った業務を行っているかどうかを確認し、是正することができます。
勤怠記録に関してはタイムカード等が参考となりますが、DX化のことも考えると勤怠管理システムを導入すると良いでしょう。勤怠管理システムの中には工数管理を行えるものもあるため、どれだけのタスクが存在しているのか、一人の従業員に対して負荷がかかりすぎていないかといったタスク管理にも役立てることが可能です。また、タレントマネジメントシステムと連携させることで、タイムカードを見ながら手入力する手間を省いたり、勤怠管理システム側で入力された勤怠情報をタレントマネジメントシステムにリアルタイムで反映させたりすることが可能となるため、大幅な省力化に繋がることでしょう。
ISO27001などに基づく情報セキュリティ対策を敷いている場合、インシデントが発生した際の記録は事例の周知と再発防止につなげることが可能です。インシデントを発生させてしまった当人に反省を促しつつ、組織全体で再発防止のために協力し合う態勢を作ることができれば、情報セキュリティに関する重大な危機を防ぐことができます。このように、インシデント記録はタレントマネジメントのみならず、企業の情報や財産を守ることにもつながるため、積極的に活用しましょう。
5.性格・価値観に関する情報
これまで解説してきた4種類の項目に比べるとやや軽視されがちですが、実は意外と侮れない項目として「従業員の性格や価値観に関する情報」が存在します。従業員が何故この仕事を選んだのか、どのようにしてモチベーションを保っているのかの根底には、従業員一人ひとりの価値観や性格が強く影響しているのです。例えば、正社員として働く理由1つとっても、「各種福利厚生が利用可能であり、安心して働けるから」と考える人もいれば、「自分をより高めるために難しい仕事を任せてもらえるから」と考える人もいます。何がモチベーションとなっているか、何が働く理由となっているのかは、従業員一人ひとりがそれぞれの考えを持っているのです。従業員の性格を企業が把握することは、企業が従業員を理解し、満足して働くための労働環境を作っていく上では重要となります。
入社に際して行われる選考の過程で、企業風土に合う人材を探すために応募者の性格や価値観を面接などで探ることになりますが、その後も人事考課や上司との面談などで性格や価値観は定期的に確認を続けていくと良いでしょう。性格や価値観は一度定まってしまうと不変なように感じられますが、ふとしたきっかけで変化が生じることも少なくありません。それまでは仕事一筋で家族やプライベートは二の次だった価値観の持ち主が、子供が生まれたことを境に家庭のことを重視するようになるなど、急に真反対の価値観や性格に変わってしまうこともあるのです。
価値観や性格は個々人によって微妙に異なりますから、一見すると記録が難しいように見えますが、MBTI診断やOCEANモデルなどである程度分類・記録を行うことが可能です。大まかな性格の傾向について把握することができますから、例えば上司や同僚との折り合いが悪い場合、性格が合わずに衝突してしまっているのだろうという推測を立てることもできます。また、仕事に対する適性についてもある程度把握できますから、忍耐強い人には一般事務や工場のライン管理といったルーチンワークが主となる部署に配属し、変化や創意工夫を好む人には商品企画や営業などといった業務に変化が求められる部署に配属するといったことが可能です。
しかしながら、MBTI診断やOCEANモデルなどの性格類型はあくまでも「大まかな傾向」に過ぎません。個々人のより詳細な性格や価値観については、採用面接や入社後に行われる上司とのフォローアップ面談などの中で文章による記録を行い、変化があれば更新を行うようにしていくと良いでしょう。また、変化があった場合、可能であれば「変化のきっかけ」についても聞き取り、記録をしておくことをおすすめします。
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タレントマネジメントの管理項目は、段階的に更新を行うのがおすすめ
タレントマネジメントでは、今回挙げた5種類の項目に該当する情報以外にも、従業員に関する様々な情報を管理することが可能です。ただし、最初から全ての情報を網羅しようとすると、それ相応の労力がかかってしまうためあまり推奨されません。まずは今回紹介した5つの項目を中心に、集められる情報から順次登録していくことをおすすめします。人事考課の度に更新をかけていけば、自然と他の情報も網羅されていくことでしょう。