パフォーマンス評価とは?ISO9001・ISMSのパフォーマンス評価とデメリット

教育現場で多く活用されているパフォーマンス評価の手法を人事評価に採用する企業が増えてきています。

自社でも導入を検討しているという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、パフォーマンス評価を導入する際に知っておくべきことやパフォーマンス評価のメリットとデメリット、具体的な導入手順などについて詳しく解説します。

パフォーマンス評価とは

ビジネスにおけるパフォーマンス評価は、組織や個人の業績や成果を評価するためのプロセスです。

パフォーマンスレビューや業績評価と呼ばれることもあります。パフォーマンス評価では、目標達成度や行動、能力、生産性、品質、顧客満足度など、さまざまな要素が評価されます。フィギュアスケートにおける演技の採点のように、実際に行動に現れたさまざまな能力を評価する方法だ、と考えると分かりやすいでしょう。

パフォーマンス評価は組織の効果的な運営や従業員の成長に不可欠な要素ですが、一方で評価の適正性や公平性、フィードバックの質の確保など、実施方法や環境にも注意を払わなければなりません。設計や実施が不適切であった場合、従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させてしまう恐れがあります。

能力を多角的に評価できる評価方法

パフォーマンス評価は最初、学校教育の場で始まり、その後ビジネスの場でも用いられるようになりました。教育におけるパフォーマンス評価は、「探究学習」のように学生が自分自身で課題を設定した学習を評価する際によく用いられます。

この場合、まずは学習の前に目標を提示します。そうして学習後、どの程度その目的を達成したかを測定します。この評価方法により、ペーパーテストだけでは測れない学生の能力を多角的に評価できるようになります。

この方法が高く評価され、パフォーマンス評価の手法はビジネスの場でも人事評価の方法として導入されるようになりました。

現在、パフォーマンス評価という言葉は学校教育やビジネスの現場以外でも、医療や投資、経営の分野などで使用されています。

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ビジネスにおける「パフォーマンス」とは

ビジネスにおいてパフォーマンス評価を行う際、重要なポイントは、そもそもビジネスにおける「パフォーマンス」は何を意味する言葉なのでしょうか。ビジネスにおけるパフォーマンスという言葉が示す意味は、従業員や組織が目標や期待に対してどれだけ効果的に仕事を遂行し、成果を出すか、です。

つまり、パフォーマンスは個人やチーム、組織全体の能力や成果を測定するための指標です。組織はパフォーマンスの向上を目指し、従業員の能力開発やモチベーション向上に努めることで、より高い成果を出すことができます。パフォーマンスの評価や向上は、組織の効果的な運営と成長に不可欠な要素だといえます。

具体的には、ビジネスにおけるパフォーマンスは以下の要素を含みます。

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目標の達成

個人やチームが設定された目標を達成する能力は、パフォーマンスという言葉が示す重要な意味のひとつです。目標は、業績目標、生産性向上、品質基準の達成など、さまざまな形で設定されます。個人やチームのパフォーマンスが高ければ高いほど、これらの目標の達成度も高いとされます。

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仕事の質と効率性

仕事の質と効率性、という意味でパフォーマンスという言葉が使われることも多いです。仕事の質は、正確性、適切さ、創造性などの要素に関連しています。効率性は、リソースの最適利用、時間管理、プロセスの改善などによって評価されます。

スキルと能力

パフォーマンスは、従業員のスキルや能力の発揮を示すものです。スキルとは、専門知識や技術、コミュニケーション能力など、仕事の遂行に必要な能力を指します。パフォーマンスが高い場合、従業員は自身のスキルと能力を存分に活かして業務に貢献しているといえます。

貢献度と成果

従業員の組織に対する貢献度と成果も、パフォーマンスです。貢献度は、従業員がチームや組織に対してどれだけ価値を提供しているかを示し、成果は、その貢献によって得られる具体的な成果物や効果を指します。

ISO9001におけるパフォーマンス評価

ビジネスにおけるパフォーマンス評価は、従業員の評価だけにはとどまりません。マネジメントシステムの中にもパフォーマンス評価の項目があります。

ISO9001とは、品質マネジメントシステムの国際規格であり、世界中で最も普及しているマネジメントシステムの規格です。ISOでは、マネジメントシステムを構築する際には、PDCAサイクルに則り、課題の解決に向け、継続的改善を行っていくことが必要だとしています。

ISO9001におけるパフォーマンス評価は、PDCAの「(C)チェック」に該当するものです。つまり、マネジメントシステムの活動が計画通りに実行されているのか、実行の結果を評価する行為がパフォーマンス評価だといえます。

製品やサービスのチェックを行い、パフォーマンス評価を行うことで、よりよい「(A)改善処置」につなげていくのです。


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ISMS(ISO27001)におけるパフォーマンス評価

ISMS(Information Security Management System)とは、情報セキュリティマネジメントシステムのことです。また、ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格です。

ISMSの国際基準を満たすISO27001の取得においても、パフォーマンス評価が求められます。

ISO9001と同様にISO27001でも、パフォーマンス評価はPDCAサイクルのCに該当するものです。具体的には、次の項目が定められています。

監視、測定、分析及び評価

情報セキュリティマネジメントシステムが計画通りに運用されているかをチェックします。

  • 内部監査

会社やISOが規定した要求事項に適合しているかをチェックし、監査プログラムや監査基準、監査結果などを文書化します。

  • マネジメントレビュー

経営者がISMSの取り組みを定期的に確認し、改善すべき部分があるかを判断します。改善の必要があった場合は、期限を定めて計画を立て、対応をすることが望まれます。

パフォーマンス評価の目的

ビジネスにおけるパフォーマンス評価は一体何のために取り入れるものなのでしょうか。評価を行う主な目的としては、次の5つが挙げられます。

フィードバックと成長の促進

パフォーマンス評価は、従業員やチームに対してフィードバックを提供し、成長と改善を促進することがその第一の目的です。上司や人事部の担当者が従業員の優れた業績や行動を認識し、必要な改善点やスキルの開発を特定することは、従業員の能力向上やパフォーマンスの向上につながります。

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給与と報酬の決定

パフォーマンス評価は、給与や報酬の決定に使用されることもあります。従業員の成果や貢献度に基づいて公平な報酬体系を構築し、パフォーマンスに見合った報酬を提供することが目的です。

昇進とキャリアの進展

同じく、従業員の昇進やキャリアの進展の判断基準として使用されることもあります。従業員の能力や成果を評価し、適切な昇進やキャリアパスの決定を行うことで、従業員のモチベーションアップやキャリアの発展を促進します。

目標管理と業績向上

パフォーマンス評価は、個人やチームの目標管理と業績向上を支援するために使用されます。目標設定と評価を通じて目標の達成度や課題を特定し、必要な調整や支援を行うことで効果的な業績管理を実現します。

コミュニケーションと従業員エンゲージメントの向上

パフォーマンス評価は、上司と従業員のコミュニケーションの場でもあります。フィードバックや評価結果の共有を通じて従業員の関与やエンゲージメントを高め、組織との連携を強化します。

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タレントマネジメントを活用しモチベーションアップにつなげる

タレントマネジメントは、従業員のタレントである能力や素質、スキルを管理して、適切な人材配置や人材育成を行うマネジメント手法です。タレントマネジメントによって、従業員のスキルや適性を的確に把握することができれば、持てる力を存分に発揮できるポジションに配置することができます。

能力や適性に見合った部署に配属することで、パフォーマンスの向上も期待できます。

会社からよい評価を得られれば、従業員のモチベーションも高まり、より意欲的に業務に取り組むようになるはずです。従業員がパフォーマンスを発揮できるようになれば、会社全体としての生産性も高まり、よい循環を生むことができます。

パフォーマンス評価機能を持つタレントマネジメントシステムの活用により、従業員の強みや弱みを明確にできるため、より的確に個人の成長を促す研修プログラムや、よりスキルを生かせるキャリアパスの提案もできるようになります。

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ルーブリック表とは

パフォーマンス評価において多く用いられるのが、「ルーブリック」と呼ばれる評価基準を明確に示すためのツールや枠組みです。

ルーブリックは元々大学や初等中等教育の現場で用いられていたものですが、現在はビジネスの現場でも多く活用されています。

ルーブリックは「課題」「評価尺度」「評価観点」「評価基準」の4要素から成り、これらを一覧表にしたものを「ルーブリック表」、その使用を「ルーブリック評価」と呼びます。 

ルーブリック表は、従業員のパフォーマンスを複数の基準や尺度で評価し、それぞれの基準に対する評価レベルを示した表です。通常、行列状の表形式で示され、各行に評価基準や要素、各列に評価のレベルや記述が記載されます。ルーブリック表により、評価者は客観的な評価と明確なフィードバックが可能になります。

ルーブリック表使用のメリット:

  • 評価の公正性向上
  • 具体的なフィードバックの提供
  • 目標設定や成長の促進

デメリット:

  • 作成時に慎重な計画と管理が必要
  • 特定の状況や業務への柔軟な適応が困難
  • 評価者の主観やバイアスの影響の可能性
  • すべての重要な要素を網羅することの難しさ

ルーブリック表の作成は、次の手順に沿って行います。

1.目的の明確化

評価の目的を明確にし、評価したいスキルや能力、業績の項目を特定します。従業員への期待、必要なスキル、想定される最高・最低水準を考慮します。 

2.評価基準の設定

目的に基づき、具体的で明確な評価基準を決めます。例えば、コミュニケーション能力の評価では「明確な情報伝達」「適切な言葉遣い」「対話能力」などを設定します。

3.評価項目の作成

目的と評価基準に基づいて、具体的な評価項目を作成します。例えば、プレゼンテーションスキルの評価では「プレゼンテーションの構成」「情報の伝達」「視覚的な表現」などを設定します。

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4.評価レベルの定義

各評価項目に対して、通常3〜5段階の評価レベルを定義します。

たとえば、レベル1は「未達成」、レベル3は「達成基準」、レベル5は「優れた達成」などのように定義していきます。

5.評価項目とレベルのマッピング

評価項目を縦軸、評価レベルを横軸に配置してルーブリック表を作成します。各セルには、対応する評価基準を記述します。 

企業向けのルーブリック評価を提供しているサービスやルーブリック表を公開している大学などがあるので、それらを参考にするとよいでしょう。

6.具体例やコメントの追加

各評価レベルに具体的な例やコメントを追加し、より明確なフィードバックを可能にします。

ポートフォリオ評価

ポートフォリオとは書類やファイルを意味する言葉であり、教育分野ではポートフォリオ評価を用いるケースが多くあります。

ポートフォリオ評価は、学生が作成したレポートや作品、自己評価の記録、指導者の記録などを計画的に集積し、学習状況の把握と評価をする方法です。

ポートフォリオ評価では、学生と指導者が共同でポートフォリオを作成し、学生に目標を明確に伝えるという特徴があります。また、目標達成のために行ったパフォーマンスを評価する際には、評価に合わせて、なぜそのような評価になったのか理由も伝える点も特徴です。

評価の理由を伝えることには、具体的な指導をするためだけではなく、学生の達成感や自尊心を高め、次の課題を認識させる狙いがあります。さらに、学生自身にも自己評価を促すため、自身を評価する力の育成にもつながる点もポートフォリオ評価の特徴です。

「本質的な問い」と「永続的な理解」

パフォーマンス評価において重要な概念に、「本質的な問い」と「永続的な理解」があります。 

「本質的な問い」とは、従業員のパフォーマンスを深く理解し、長期的な成長や発展に焦点を当てるための問いかけです。例えば、「従業員がどのように学び、成長し、自己を向上させたか」といった問いが挙げられます。この観点からの評価は、個々の成果だけでなく、従業員の能力や潜在性を評価する上で重要です。

評価者がこの概念を理解していなければ、客観的で公平な評価は困難になるでしょう。

一方、「永続的な理解」は、パフォーマンス評価を単発的なイベントではなく、継続的なプロセスとして捉える考え方です。評価時点での理解だけでなく、その理解が時間を経ても保持され、実践されることが重要です。

この「永続的な理解」を確認し促進するためには、定期的なフィードバックやコミュニケーションが不可欠です。

具体的には、「永続的な理解」は以下の要素を含みます

  • 従業員の成果や行動を時期に応じて評価する
  • フィードバックや目標設定を通じて成長と改善を促す
  • 従業員と上司の関係を築き、互いの期待や目標を共有する

「本質的な問い」と「永続的な理解」は、数値や結果のみに基づく評価を超えて、従業員の成長と発展を重視するパフォーマンス評価を実現するための概念です。

これらの要素を取り入れることで、従業員のモチベーションとエンゲージメントの向上、持続的な成果の実現につながると考えられます。

パフォーマンス評価のメリット

パフォーマンス評価を導入することで従業員や組織に多くのメリットをもたらします。ここからは、その主なものをいくつか紹介します。

パフォーマンス向上につながる

パフォーマンス評価は、従業員やチームの成果を評価し、改善点や強みを特定する機会を提供します。 

パフォーマンスを向上させるためには、適切なフィードバックと明確な目標設定が不可欠です。パフォーマンス評価の結果は、従業員が自身を客観的に見つめる機会となり、それによって能力向上とパフォーマンスの改善につながります。

特に、パフォーマンス評価のメリットのひとつに詳細な評価をできることが挙げられます。パフォーマンス評価は課題を多面的にとらえ、それぞれの側面についての達成度を評価するからです。

たとえば、課題がプレゼンテーションであれば、「資料はどうだったか」「発表内容はうまくいっていたか」「発表の構成は分かりやすかったか」「発表の技術に長けていたか」といった項目ごとに評価します。そうした詳細な評価は従業員にとって有効なアドバイスとなります。

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報酬とキャリアの公平性

パフォーマンス評価は、給与や報酬の決定、昇進やキャリアの進展の基準となります。

評価における達成度は、明確な尺度と比較して判定されるため、客観性が高まります。例えば、プレゼンテーションスキルの各項目をS・A・B・Cなどの達成度に分類します。

このように評価基準が明確に示されることで、従業員は評価の公平性を実感できます。公正な評価プロセスに基づく報酬や昇進の機会は、従業員のモチベーションと組織への関与を高める効果が期待できます。 

目標の明確化と成果管理

パフォーマンス評価は、個人やチームの目標設定や成果管理をサポートします。

明確な目標設定と評価を通じて、業績の可視化や課題の特定が可能となります。これにより、従業員個人だけでなく組織全体の目標達成に向けた取り組みが促進されます。

フィードバックとコミュニケーション

パフォーマンス評価は、上司から従業員へのフィードバックの機会を提供します。

細分化された具体的な評価結果や改善点の共有は、従業員の成長や能力開発に大きく寄与するでしょう。また、評価プロセスは上司と従業員とのコミュニケーションを促進し、相互理解や協力関係の構築に役立ちます。従業員は改善点を理解しやすくなり、上司側も従業員にアドバイスするのが容易になるためです。

従業員エンゲージメントの向上

パフォーマンス評価は、従業員の組織への関与とエンゲージメントの向上に寄与します。

適切な評価とフィードバックによって自身の成果が会社に認められていると感じられれば、より献身的になることが期待できるためです。また、課題が可視化されて対処しやすくなることも、従業員エンゲージメントの向上に大きく役立つでしょう。課題が明確で改善点が分かりやすければ、従業員はより達成感を覚えられるようになるためです。

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組織全体の生産性向上

パフォーマンス評価の実施により、目標が明確になると、より意欲的に業務に取り組めるようになります。また、評価の結果を伝え、高い評価を受けたポイントやより評価を高めるためのポイントを伝えれば、さらに高いモチベーションを持って業務に向き合えるようになるでしょう。

また、チームに対するパフォーマンス評価も実施すれば、個人のパフォーマンスだけでなく、チームの成果にも目を向けやすくなります。一人一人の従業員のパフォーマンスとエンゲージメントが向上し、各チームのパフォーマンスも向上すれば、必然的に組織全体の生産性も向上するのです。

人材配置の最適化

パフォーマンス評価を実施すると、従業員のスキルや成果をさまざまな側面から評価できるため、その人の適性や課題を明確に把握できるようになります。

従業員の適正を見極めることで、能力を最大限に発揮する環境に配置できるようになり、人材配置の最適化を叶えられるのです。

また、従業員の能力を正確に把握できていれば、急な退職などによって人材が不足した場合でも、新規採用をせずに社内から適切な人材を異動させることが可能です。

パフォーマンス評価のデメリット

一方、パフォーマンス評価には以下のようなデメリットもあります。導入の際には、これらのポイントによく注意することが大切です。

基準作成に労力と時間がかかる

パフォーマンス評価の基準作成には多大な労力と時間を要します。

評価の目的明確化、スキルや能力の特定、具体的な基準や尺度の設定、一貫性と客観性の確保が必要です。さらに、組織のニーズに合わせたカスタマイズも求められます。

 例えば、10種類のパフォーマンスを4項目、4段階で評価する場合、160の基準を言語化する必要があります。

また、複数部署の基準表作成には各部署の協力が不可欠です。最も重要なのは、これらの基準の達成度合いや難易度を統一し、公平性を保つことです。 

主観性とバイアスの影響

パフォーマンス評価はしばしば主観的な要素が含まれ、評価者の個人的な意見やバイアスに影響を受けることがあります。

これにより、公平性や客観性に欠ける評価結果が生じるかもしれません。評価者は評価の項目や基準が客観的であるかどうか、よく確認することが重要です。評価が不公平だったり示された目標が不明確だったりした場合、パフォーマンス評価が逆に従業員のモチベーション低下をもたらす可能性があります。

特に、評価結果が従業員の努力や貢献を正当に評価していないと感じられる場合や、成果と報酬の関連性が不明確な場合、こうした結果になることが多くなります。

コンプライアンス志向とリスク回避

パフォーマンス評価が報酬や昇進の決定に直結する場合、従業員はリスクを回避するために安全な選択や低めの目標設定に偏る傾向があります。

これは、成果主義的な評価制度そのものが持つジレンマともいえるでしょう。従業員が挑戦的な目標を避けることや創造的なアプローチを抑制することがないよう、何らかの対策を取る必要があります。

適切なフィードバックの欠如

パフォーマンス評価のフィードバックが年次評価の1回だけの場合、従業員はフィードバックや成長の機会が不足している、と感じることがあります。

定期的なフィードバックや継続的なパフォーマンス管理の欠如は、従業員の成長や能力開発に悪影響を及ぼす可能性があるのです。その逆に、パフォーマンス評価の回数が多すぎるのも問題です。パフォーマンス評価は適切な回数を行わなければなりません。

チームワークやコラボレーションの無視

パフォーマンス評価は一般的に個人の評価に焦点を当てていますが、チームワークやコラボレーションの重要性を十分に評価しない場合があります。

この結果、個人の成果や行動が高く評価される一方で、チームのパフォーマンスが犠牲になるかもしれません。たとえば、従業員が目標となっている項目だけ努力して、ほかは後回しにしたり無視したりしてしまう、というような場合などです。

ポテンシャルの軽視

パフォーマンス評価は、過去の実績や成果に重点を置くため、未来の可能性や潜在能力を十分に評価しにくいというデメリットがあります。

現在、リーダーとしてチームを引っ張るポジションにある従業員であれば、リーダーとしての成果が評価されます。しかし、将来的にリーダーシップを発揮できるポテンシャルを持つ人であっても、現在はリーダーの立場にいなければ、その能力を発揮できません。したがって、パフォーマンス評価だけでは潜在能力を十分に評価できない恐れがあります。

パフォーマンス評価の導入方法

パフォーマンス評価の導入は組織によって異なるため、それぞれの要件や文化に合わせて行われなければなりません。組織のリーダーシップとサポート、従業員へのコミュニケーションとトレーニング、評価プロセスの透明性と公平性の確保が成功のカギとなるでしょう。以下、パフォーマンス評価の導入に向けたステップについて詳しく解説します。

目的と目標の明確化

パフォーマンス評価を導入する前に、まずは明確な目的と目標を定義しましょう。たとえば、パフォーマンス向上や成長の促進、報酬や昇進の基準の設定など、組織が達成したい結果は何なのかを明確にしておかなければなりません。

評価基準の設計

目的と目標が明確になったら、次はパフォーマンス評価のための評価基準を設計します。評価基準は、成果や目標達成度、行動の評価基準、スキルや能力の評価基準など、評価する要素と基準を明確に示すものです。これにより、評価の一貫性と公平性を確保できます。

フィードバックと目標設定のフレームワークの構築

パフォーマンス評価にはフィードバックと目標設定の重要な要素が含まれます。フィードバックの提供や目標の設定において、具体的なフレームワークやガイドラインを作成し、評価者と従業員が効果的なフィードバックのやり取りと目標設定を行えるようにしましょう。

評価プロセスの実施とタイムラインの設定

パフォーマンス評価の実施プロセスとタイムラインを設定します。これには、年次評価や半期評価といった評価の周期性や、360度フィードバックや上司評価といった評価の方法などが含まれます。従業員への周知と説明、評価者のトレーニング、評価フォームの作成なども含めて計画しましょう。

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フィードバックと成果の共有

パフォーマンス評価を行ったら、その結果を従業員にフィードバックと成果についてのコミュニケーションを行います。評価者と被評価者の間で具体的な改善点や目標設定に関する合意を形成し、成長と発展のための行動計画を策定しましょう。

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監視と改善

パフォーマンス評価の実施後は、評価プロセスの効果と成果を監視し、必要な改善を行います。フィードバックの質や公平性、評価基準の適切性などについて定期的な評価と改善を行うことが重要です。

パフォーマンスマネジメントという考え方

パフォーマンスマネジメントとは、従業員のパフォーマンスの向上を目指すマネジメント手法です。一人一人が持つ能力やスキルを効果的に引き出し、モチベーションを高めるために、上司と部下が目標達成に向けて行動します。

パフォーマンスマネジメントは、一方的に課せられた目標を達成するための管理手法ではありません。上司と部下が積極的にコミュニケーションを図り、互いが納得できる目標を定め、短期間でのフィードバックを繰り返します。

パフォーマンス評価は、目標の達成ができたか、できなかったかという過去のパフォーマンスを評価するものです。しかし、パフォーマンスマネジメントは、目標を達成できるように部下の行動を促す、未来のパフォーマンスの向上に重きを置いたマネジメント手法なのです。

昨今では、パフォーマンスマネジメントを導入する企業も増えています。

まとめ

パフォーマンス評価を導入する際は公平性と客観性を確保することが重要です。

パフォーマンス評価を取り入れることで、従業員やチームのパフォーマンスやエンゲージメント向上が期待できます。しかし、そのためには公平で客観的な評価を心がけることが必要となります。

導入の際は綿密な準備を行い、従業員が不公平感を抱かないような評価基準を作成しましょう。また、パフォーマンス評価を単発的なイベントにするのではなく、継続的にフィードバックを重ねていくことも重要です。

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パフォーマンス評価では、従業員やチームの目標達成度や成果、能力など、さまざまな要素を評価しなければなりません。

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