目次
企業が多大な費用をかけて人材を採用しても、採用した人材が早期に退職してしまうケースは少なくありません。
早期退職は、採用コストの無駄になるだけでなく、人材の育成も進まず、採用計画や育成計画の見直しも必要になるなど、企業にとって頭を悩ませる問題となります。
そこで注目されているのが、新入社員の定着率を高める育成法である「オンボーディング」です。
では、オンボーディングプログラムとはどのような手法なのでしょうか。オンボーディングの意味やメリット、設計のプロセスや注意点などを紹介します。
効果的な「1on1」を実施できていますか?
- 1on1による学習サイクル
- 業務習熟度別コミュニケーション
- 1on1の進め方
- 傾聴態度チェックリスト
- 11の1on1テーマ
- 1on1改善事例
オンボーディングとは
オンボーディング(on-boarding)とは、本来「船や飛行機に乗り込む」という意味の英語に由来する言葉です。
オンボーディングは、飛行機や船に新しく乗り込んだ乗組員や乗客が早期に新しい環境に慣れるために支援するプロセスという意味で使われ始めました。
さらに、オンボーディングには「受け入れる」「参加する」という意味もあるため、元々の意味から派生して人事用語として使われるようになりました。
人事用語のオンボーディングは、新しく入社した社員が早く職場になじんで能力を発揮できるようにサポートするプログラムという意味です。
また、オンボーディングの対象になるのは新卒の社員に限りません。
中途採用者、社内異動者や出向者、中堅社員や幹部クラスなど、新たに組織に加わった人材もオンボーディングの対象としているケースもあります。
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オンボーディングとOJTとの違い
オンボーディングと似た言葉にOJTがあります。OJTとは「On the Job Training」の略称です。
OJTとオンボーディングは目的が異なります。オンボーディングは組織になじめるようにすることが目的であり、業務内容だけでなく企業文化も学ぶことが特徴です。
一方、OJTでは、上司や先輩が部下や後輩に対して即戦力化を目的として仕事を通じた指導をおこない、知識や技術を身に付けさせる教育をおこないます。
オンボーディングでは、人間関係などの社内環境になじむことを目的としたサポートをおこなうため、OJTより幅広い意味を持つといえるでしょう。
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納得感のある評価を効率的に行うための仕組みを整備し、従業員の育成や定着率の向上に効果的な機能を多数搭載
・360°フィードバック
・1on1レポート/支援
・目標・評価管理
・従業員データベース など
オンボーディングが注目されている背景
オンボーディングプログラムが注目されている理由として3つの背景があります。
新卒の早期退職が高止まり傾向
厚生労働省が2024年10月25日に発表した新規学卒就職者(令和3年3月卒業)の離職状況によれば、就職後3年以内に離職した人の割合は高卒者が38.4%、大卒者が34.9%でした。
高卒は前年度より1.4ポイント上昇、大卒は2.6ポイント上昇しており、高止まりの傾向があります。
中でも中小企業の状況は深刻で、事業所規模が5~29人の企業の就職後3年以内離職率は、高卒者が54.4%、大卒者が52.7%、30~99人の企業では高卒者が45.3%、大卒者が42.4%となっており、いずれも前年度と比較して増加傾向です。
人材育成には多くのコストがかかるため、時間と費用をかけて育成した人材が早期退職してしまえば、その投資が無駄になってしまいます。
労働力の減少により、人材の確保が難しくなっている状況下においては、社員を定着させることが重要な課題です。
そのため、オンボーディングを活用して社員の定着を図ろうとする企業が増加しているのです。
転職が珍しくなくなっている
雇用が流動化し、転職が一般的な選択肢となりつつあります。
総務省の労働力調査(詳細集計)によれば、2024年の転職者数は331万人となり、3年連続で増加しました。また、転職等希望者数は約1,000万人となり、前年より7万人減少し、8年ぶりの減少となっています。
転職希望者が増加する一方で、転職先に採用されても、それまでとは社風や環境が異なる中で職場の環境や企業文化になじめないことから十分に力を発揮できず、早期退職につながるケースも増えています。
新卒者の早期の退職を防止するだけでなく、転職で入社した中途社員を定着させる目的でも、オンボーディングに注目が集まっているのです。
採用活動の変化
新卒一括採用に変わって通年採用に移行する企業も増加しています。
帰国子女、留学生、第二新卒などの採用は新卒一括採用では対応できないためです。
通年採用では、不定期に新しい人材が組織に加わることになるので、新卒一括採用のように、一斉に研修やトレーニングを実施することが困難になります。
そのため、通年採用に対応した育成プログラムとしてオンボーディングを活用する企業が増加しています。
グローバル化の進展
経済や社会のグローバル化が進む現在では、外国人の採用が必要になるケースも増えています。
言葉や文化が異なる外国人に日本企業で十分に能力を発揮してもらうためには、適切なオンボーディングが欠かせません。
オンボーディングを実施しない場合、言葉や文化の壁が原因で日本企業の環境になじめず、早期退職のリスクが高まります。
反対に、オンボーディングによって早期に組織に順応することができれば、早いタイミングで高いパフォーマンスを発揮してもらえる可能性があるのです。
オンボーディングでは、新たに加わった社員が早期に組織になじめるよう、企業ビジョンや風土を共有します。
しかし、外国人を採用した場合には、オンボーディングの際に職場でのコミュニケーションの図り方やビジネスマナーなど、日本企業ならではのルールや慣習を伝えることも必要になるでしょう。
リモートワークの普及による新たな課題
コロナ禍に急速に広がったリモートワークですが、コロナの収束に伴い、オフィス回帰の動きが加速しています。
なぜなら、リモートワークによって従業員間のコミュニケーションが希薄になり、チームワークの連携が難しくなるという課題が生じるようになったからです。
リモートワーク下は、同僚や上司と直接的なコミュニケーションが図りにくい環境です。そのため、リモートワークを前提で採用した社員の場合、より丁寧なオンボーディングが必要になります。
リモートワーク下でオンボーディングを進める際には、新入社員のケアをする人物に対して適切な研修などを実施し、より質の高いサポートを提供できるようにするとよいでしょう。
また、オンラインコミュニケーションのツールを活用し、定期的に1on1ミーティングを実施するなどして、社員の心理的安全を確保することも大切です。
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オンボーディングプログラムのメリット
オンボーディングプログラムを実施すると、さまざまなメリットを得られます。
早期退職の防止
人間関係の悩みや仕事とのミスマッチが、早期退職の主な要因となっています。
しかし、退職理由を確認すると「職場でのコミュニケーションが円滑でない」「仕事のやりがいが感じられない」といった点が原因になっているケースが少なくありません。
仕事のやりがfいに関する対応策としては、新入社員に目標を設定させる施策が有効です。また、メンター制度や1on1ミーティングを取り入れ、積極的にコミュニケーションを図ることで、理想と現実のギャップを調整することもできます。
オンボーディングは、新入社員や中途採用者の不安を少なくし、早く職場になじめるようサポートすることで早期退職のリスクを低減させます。
新入社員が戦力となるまでの期間短縮
新入社員は企業文化や社内ルールなど、学ばなければならないことが多くあります。
また、人間関係や社風などにもなじんでいかなければなりません。
一般的な新入社員研修の場合、戦力として成果を上げられるようになるまで半年~1年程度かかるといわれています。
オンボーディングは新入社員が組織になじみやすいようサポートし、業務に必要な知識をインプットし、スキルを身に付けて仕事に生かせるようになるまでの時間を短縮する手段です。
中途採用者が早期にパフォーマンスを発揮できる
中途採用者の受け入れは現場に任されていることが多く、受け入れ体制が不十分な場合は中途採用者が組織になじむことが難しくなります。
そうなれば、自身のスキルを生かしきることができない、パフォーマンスの発揮までに時間がかかるなどの問題が発生しがちです。
オンボーディングを実施すると、業務の流れを把握しやすくなるほか、既存社員との距離も縮まり、期待される能力を発揮しやすくなるでしょう。
組織力の向上
従来の育成法では、同じ部署の担当者が新人を教育することが一般的でした。
しかし、オンボーディングでは事業部を越えて多くの人が新人教育に携わることになるため、組織内での情報共有が活発になり、社員同士の助け合いも促進されます。
縦のつながりだけでなく横のつながりも強化されることで、組織力の向上が期待できるでしょう。
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採用コストの削減
就職みらい研究所の「就職白書2020」によれば、2019年度新卒採用および中途採用1人あたりの平均採用コストは新卒採用が93万6,000円、中途採用が103万3,000円でした。
2021年度は45.6%の企業が前年と同じ、33.5%の企業が減ったと答えました。
また「就職白書2024」データ集によると、2025年卒の採用活動に費やす総費用は2024年卒採用と同じと答えた企業が54.2%、増やすと答えた企業が40.8%、減らすと回答した企業はわずか5%となっています。
これらのデータからも採用活動には多額の費用がかかっていることが分かりますが、戦力になる前に退職してしまえば、採用コストは無駄になるでしょう。
オンボーディングプログラムを活用することで退職を防ぐことができれば、採用コストの削減が可能です。
人材育成計画のアップデート
オンボーディングでは、一定の数値目標を達成するために、メンター制度、面談、懇親会、キャリア相談窓口などさまざまな施策をおこなうのが一般的です。
リモートワークを導入している企業では、チャットツールやオンライン会議システムを利用したオンボーディングを実施するケースも増加しています。
オンボーディングの実施を通じて、企業全体で人材育成の手法を見直し、新たな施策を取り入れることで人材育成計画をより強化し、改善していくことが可能です。
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従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは企業に貢献したいと感じる従業員の自発的な意欲のことで、「愛社精神」や「愛着心」とも訳されます。
オンボーディングプログラムで1on1ミーティングの施策を取り入れると、従業員が抱える悩みや不安、課題を早期に解決できるようになるため、企業に対して愛着を持つようになるでしょう。
組織の活性化は既存社員にもよい影響を与え、組織全体の従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
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コンプライアンスや安全基準の徹底
仕事を進めるうえで知っておかなければならない、自社の事業に関連する法律や情報セキュリティの知識、ハラスメント防止の知識、安全に業務を進めるための手順など、入社後に伝えるべき事項は多数あります。
オンボーディングを通じて、関連する法律や職場のルールなどを身に付けさせることで、社員のコンプライアンス意識を向上させることができます。
システムを活用した企業の改善事例多数
・成果につながる1on1の実現
・評価業務を年間150時間削減
・人事の業務負担が3分の1以下に
・評価運用の工数を2週間分削減
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オンボーディングプログラムのデメリット
オンボーディングプログラムには多数のメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
育成コストがかかる
オンボーディングプログラムの実施には、育成コストが伴います。
新入社員の育成に携わる担当者は、自身の業務に加えてオンボーディングプログラムを担当しなければなりません。
オンボーディングプログラムを選定、作成する人事担当者の業務も増えるため、導入当初は育成コストが高くなりがちです。
定期的にアップデートして社員に周知させる必要がある
オンボーディングプログラムは、新入社員の反応や世の中の情勢、日々変化する社内の情報に合わせ、定期的にアップデートしていく必要があります。
オンボーディングプログラムは社内全体で統一した指導マニュアルを整備することで、指導の標準化を図る取り組みですが、マニュアルの更新が滞ると、十分な指導ができない恐れがあります。
オンボーディングの質を高めるためには、マニュアルを見直す時期を明確に定め、アップデート完了後は社員にも変更内容について周知することが大切です。
既存社員の協力を得る必要がある
オンボーディングプログラムを実施するためには、既存社員の協力が不可欠であり、オンボーディングの重要性についても十分に説明をし、理解を得ることが重要です。
万が一、理解が浸透しないまま実施すると、通常業務の他にオンボーディング対応の負担が生じ、既存社員から不満が出る可能性もあります。
オンボーディングを継続的に実施するためにも、実施目的や実施のメリットを分かりやすく説明し、十分に既存社員の理解を得るようにしましょう。
標準化による柔軟性の欠如
オンボーディングでは、マニュアルを作成し、新人教育を標準化します。
しかし、実際のビジネスシーンでは、状況に応じた臨機応変な対応が求められるケースは少なくありません。
オンボーディングによる標準化されたプログラムにしたがって教育を進めると、状況に応じた柔軟な対応が難しくなる可能性があります。
また、部署により求められる知識やスキルは異なるため、オンボーディングプログラムだけでは十分な対応ができないケースもあります。
したがって、オンボーディングを実施する際には、ある程度、仕事の流れや業務上のルールなどを周知することはできても、オンボーディングだけで人材育成を完了させることはできない点を理解しておく必要があるでしょう。
期待と現実のギャップ
新卒採用に限らず、中途採用の新入社員も新たな期待を胸に入社します。
しかしながら、思い描いていた理想と現実の違いを認識すると、退職につながる恐れがあります。
オンボーディングは、入社前と入社後のギャップを埋める有効な手段ではあります。
しかしながら、研修時に説明された企業理念と配属後に感じる組織の風土に、違いを感じる場合もあるでしょう。
また、研修時に描いていた業務の内容と配属後の業務の内容にギャップを感じる可能性もあります。
オンボーディングを実施する際には、不安やギャップを早いタイミングで解消できるよう、こまめなコミュニケーションとフォローが求められます。
オンボーディングプログラムを設計するプロセス
オンボーディングプログラムを設計する際のプロセスを紹介します。
目標の設定
新入社員に対して、いつまでに何のスキルを身に付けて欲しいのか、最終的にどのようになっていて欲しいのか、目標を設定し、言語化します。その結果、理想像が明確になり、どうすべきなのかが伝わりやすくなるでしょう。
目標を設定していくうちに課題が見つかった場合は掘り下げて、本質的な問題を明らかにし、解決を図ります。業務に関することだけでなく、自社になじむためのコミュニケーションも目標として設定することが求められるでしょう。
入社後に早期退職した事例があれば、早期退職に至った理由や定着率が低い理由を分析します。課題が見つかれば、新入社員に対してどのようにサポートすればよいのかも考慮し、目標設定をおこないましょう。
プランの作成
目標を設定したら、問題や課題を解決するために具体的にどのような取り組みを実施していくか、プランを作成します。
入社から1年後がオンボーディング期間の目安です。
課題や最終目標に合わせて1カ月、3カ月、半年ごとに達成して欲しい目標や取り組みの内容も決めていきましょう。
それぞれの目標に対し、実務前の研修や説明会、OJT、ランチミーティングなどの施策と携わる人員などを決めていきます。
プランを作成するにあたっては、社内で話し合いを重ねて、実現可能性や達成の見込みについても慎重に検討を重ねることが必要です。
企業になじめない、業務が覚えられないなど、新入社員がぶつかることが多い課題もプランに入れ込みましょう。
プランの実行とフォロー
プランに基づき、新入社員に対してオンボーディングプログラムを実施していきます。
計画段階では想定外だった質問を新入社員がしてきたり、問題が出現したりして予定通りに進められない場合もあるでしょう。改善点がある場合は速やかに対処することが重要です。
プランの進捗状況を記録しておくと、引継ぎの際に役立ちます。
プランを実行してから定着するまでは時間がかかりますが、オンボーディングを担当する社員だけでなく、部署を越えて協力することが大切です。新入社員との積極的な関わりを通じて、企業全体でフォロー体制を築くことが重要です。
見直し
個人のオンボーディングプログラムが終了したら、関わったすべての人による評価を実施します。
よかった点や改善点を共有することで、施策の妥当性や有効性を可視化できます。退職防止につながったか、従業員エンゲージメントは向上したのか、新入社員の成長につながったのか、効果測定もおこないます。
フィードバックを受けた内容は次回のオンボーディングプログラムに反映させましょう。オンボーディングプログラムで成果を出すためには、目標設定から見直しまでPDCAサイクルを回すことが大切です。
オンボーディングの具体的な施策事例
オンボーディングを実施するにあたって参考となる具体的な施策をいくつかご紹介します。
入社前のオンボーディング施策
入社前からオンボーディングを実施すると、新入社員の不安を和らげ、従業員エンゲージメントを高める効果が期待できます。
ウェルカムキットの送付
ウェルカムキットとは「新たなメンバーになることを待ち望んでいる」という歓迎の気持ちを伝えるために、入社予定の人に送付するアイテムのことです。
具体的には社員証を入れるケースや名刺、オフィス案内、文房具、企業理念をまとめた冊子など、入社後に役立つグッズを揃えるケースが多くなっています。
また、企業によっては自社のロゴ入りのノベルティグッズや、先輩社員からのメッセージなどを同封するケースもあります。
ウェルカムキットを送付すると歓迎の意を伝えられるため、新入社員の帰属意識も高まりやすく、入社後の離職率を低下できる可能性があります。また、事前に企業理念なども伝えられるため、オンボーディングも進めやすくなります。
交流会の開催
入社前の交流会も新入社員の不安を和らげ、入社後にスムーズに職場の環境になじめるようにサポートする有効な施策です。
内定者同士や、配属予定の部署との交流会を開くのもよいでしょう。
同じ組織の一員となるメンバーと交流することで、入社後に困ったことがあった場合や、不安なことがあった場合でも相談できる相手を見つけることで、心理的安全性の向上につながります。
また、遠方から入社する場合や感染症のリスクが考えられる場合などは、オンラインでの交流会を実施してもよいでしょう。
入社直後のオンボーディング施策
入社直後のオンボーディング施策としては次のような取り組みが効果的です。
オフィスツアーの実施
入社後、実際に業務をおこなうデスクまで案内するだけでなく、関連部署にも案内するとよいでしょう。その際、訪問した部署で挨拶をすると、他部署の社員との交流も生まれます。
また、休憩室やロッカー、社員食堂、トイレ、エレベーター、給湯室なども案内すると、よりスムーズに職場になじめるようになります。
社員が利用できる施設や設備があれば、利用方法や利用ルールなどについてもあわせて説明することをおすすめします。
体系的な研修プログラムの実施
入社直後は、新たな仕事に対する期待や意欲が高いタイミングです。
そのため、業務に対する意欲を維持できるよう、企業理念やビジョンなど、会社が目指す方向性や大切にしている考え方、企業文化などを分かりやすく伝えられる研修を実施しましょう。
また、社員として知っておくべき就業規則や業務上のルール、業界知識、自社の製品やサービス、自社の特徴などについて学び、研修を通じて理解を深めることが求められます。
研修を進める際には、新入社員の状況を適宜様子を確認しながら、質問などがあれば丁寧に回答するなどし、フォローを続けていきましょう。
メンター制度の導入
メンター制度とは、1人の新入社員に対し、1人の先輩社員がサポートをする制度です。
メンター制度では、直接業務の指示をおこなう上司ではなく、経験を豊富に持つ先輩社員が新入社員をサポートします。
直接的な上下関係にない社員がメンターとなるため、評価を気にすることなく、職務上の悩みやキャリア形成についての悩みを気軽に相談しやすいといったメリットがあります。
入社直後からメンター制度を導入すると、社内に相談できる相手がいるという安心感が高まり、離職の防ぐことにもつながります。
メンター制度の基盤となるメンタリングプログラムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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メンタリングプログラムとは?メンタリングの意味やメリット、プログラムの導入方法について詳しく解説!
業務マニュアルや社内システムの使用方法の説明
業務を遂行するにあたっては、業務の進め方などについて、一定のルールを理解しなければなりません。また、社内で使用するシステムについても操作方法を学ぶ必要があるでしょう。
入社直後のオンボーディング時には、実際に業務を担当するまでに、業務の流れや社内システムの操作方法などを理解できるよう、業務マニュアルを準備したうえで分かりやすく説明をおこなうことが大切です。
入社後の継続的なオンボーディング施策
オンボーディングは入社直後まで実施するのではなく、継続して実施するとより効果を得られます。入社後は次のようなオンボーディング施策を実施してみましょう。
定期的な1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で向き合い、定期的に対話の機会を持つマネジメント手法です。
ミーティングというと仕事の評価を伝える場や、成果を確認する場のように思う方も多いかもしれません。しかし、1on1ミーティングは上司から仕事の評価を伝える場ではなく、部下の話を聞き、部下が自らの力で課題を解決できるようにサポートする、人材育成を目的としたミーティングです。
1on1ミーティングで適切なアドバイスを送ることで、新入社員は自ら成長する力を身に付けられるようになります。
また、定期的に上司と1対1でコミュニケーションを図る機会を持つことになるため、上司と信頼関係も築きやすくなります。
効率的な人材育成に必須ともいえる1on1の実施方法について、こちらの記事では実践的なトーク例も交えながら解説しています。
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部門横断プロジェクトへの参加
入社後は、所属する部署だけでなく、他の部署との交流の機会を持つとより自社の特徴や強みを把握できるようになり、業務の質の向上も期待できます。
また、他部署との交流によって普段とは異なる考え方などに触れ、業務へのモチベーションが向上したり、社内における横のつながりができることで業務で連携しやすくなるといったメリットがあります。
部門を横断したプロジェクトなどへのアサインは、入社後のオンボーディング施策として有効です。
キャリアパスについての相談機会の設定
入社前や入社直後のオンボーディングにより早期退職を防止できた場合でも、入社後しばらくしてから、キャリアパスを見い出せないという理由で退職してしまうケースもあります。
長期的な視点におけるキャリアパスが明確になっていない場合、仕事を続ける理由を見失う可能性があるのです。
社員の定着率を高め、高いモチベーションを維持して業務に取り組めるような環境を作り出すためには、定期的にキャリアパスについての相談会などを開催し、企業が社員のキャリア形成を積極的にサポートする必要があるでしょう。
適切なキャリアパスの立て方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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キャリアパスとは? キャリアプランとの違いやITエンジニアなど職種別具体例
オンボーディング施策に関する意見の聞き取り
オンボーディング施策は定期的に見直し、効果を測定することでよりよいプログラムに改善することができます。
効果については、新入社員はもちろん、指導にあたった社員や同僚、上司などからも意見をヒアリングする必要があります。
HRMOSタレントマネジメントには、新入社員だけでなく、上司、同僚、指導担当者など、立場の異なる複数の社員からのフィードバックを収集する「360度評価機能」が付加されています。
また、評価結果の分析もできるため、本人の評価と周囲の評価とのギャップを可視化することもでき、オンボーディング施策の精度の向上にも役立てられます。
<関連サイト>
HRMOSタレントマネジメント「360°フィードバック」機能
オンボーディングプログラムを設計する際の注意点
オンボーディングプログラムを設計する際には、新入社員の成長を阻む可能性がある5つの壁を知っておくことが重要です。
準備の壁
Googleでは、入社日に受け入れ態勢がしっかり整えられていた場合、3カ月以内のパフォーマンスが30%上がるという社内調査の内容を報告しています。
また、株式会社リクルートキャリアの調査によれば、入社後に高いパフォーマンスを発揮した中途採用者の8割は、入社前から人事担当者とコミュニケーションを取っていたとしています。
配属先や業務内容、チームメンバーが分からない状況で研修などを実施しても、新入社員は研修後の状況を予測できないため、不安が強くなり、本来の能力を発揮できない可能性があります。
所属するチームや組織、指導担当者、相談できる相手が明確であるほど、新入社員の不安は軽減され、入社直後からチームや部署でよいパフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。
人事担当者や上司は、入社前から新入社員と積極的にコミュニケーションを取ること、受け入れ態勢をしっかり整えておくことが大切です。
人間関係の壁
人間関係を理由に退職する人は少なくありません。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概要」によれば、前職を辞めた理由として人間関係を挙げた人は男女ともに2番目に多くなっています。
新入社員や中途採用者のようにチームに後から加わる人にとって、すでに関係性が構築された組織の中でうまくやっていけるかは、大きな不安要素です。
新入社員の不安を軽減するためには、既存の社員が積極的に新入社員をフォローする体制が求められます。
組織に誰がいて、どのような役割を果たしているのか、困ったときには誰に聞けばよいのかを事前に知らせておくことで、不安は軽減されるでしょう。
必要に合わせてメンター制度を設けることや、定期的にランチミーティングを開催すること、相談窓口を整備するなどの取り組みも効果的です。
期待値の壁
企業側と新入社員とが抱いている期待値がかみ合っていない場合「こんなはずではなかった」と感じる原因となり、定着率に影響することがあります。
業務内容や役割、成果などは双方の期待値にずれが生じてしまいがちです。
企業側が新入社員に期待することだけでなく、新入社員が求めていることや期待していることも確認し、すり合わせをしておくことも必要です。
例えば、入社前にインターン制度を実施すると入社後のギャップは少なくなるでしょう。また、インターンへの参加は、新入社員が自身の能力をアピールする機会にもなり、配属先の決定に役立つ可能性もあります。
学びの壁
新入社員は社風や事業内容、担当する業務、業務遂行に必要なスキルや知識、社内施設、備品の使い方、社内規定、残業申請などさまざまなことを学ぶ必要があります。
しかし、誰に質問すべきなのか、調べ方が分からない場合、新入社員のストレスや不安は増長します。
人事や現場の担当者には、新入社員が分からないことをスムーズに解決できるような仕組み作りが求められます。
具体的には、マニュアルを整備する、社内コミュニケーションツールを用いて分からないことを質問できる環境を構築することなどです。
成果の壁
新入社員が成長を実感できなければ、自己肯定感を高めることができません。
自己肯定感が育まれないと、行動意欲が低下する可能性があります。
その結果、自発的なチャレンジをおこなわなくなり、成長のスピードが低下するという悪循環に陥りがちです。
こうした悪循環に陥ることがなく、順調に成長を続けていけるよう、人事担当者と現場担当者は新入社員の成果を把握することが求められます。
所属するチームや部署のメンバーと新入社員でフィードバックグループを作り、細やかにフィードバックを受けられるしくみを構築しましょう。
また、最初から大きな目標を設定してしまうと最終的な目標達成まで時間がかかり、目標を達成する以前にモチベーションが下がる原因になりかねません。
ミッションを細かく分け、スモールステップでの達成を積み重ねることで、成功体験を得やすくなり、モチベーションも向上していくでしょう。
オンボーディングの成功事例
オンボーディングを導入し、成果を上げている企業も存在します。ここでは3社の成功事例をご紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、日本国内であれば、どこからでもリモートワークができる体制をコロナ禍に導入し、入社時のオンボーディングも完全オンラインでおこなっていました。
しかし、対面でのコミュニケーションの方がより会社の雰囲気や価値観が伝わりやすく、同期との関係を構築しやすいといった社員の声を受けて、2023年12月から入社時のオンボーディングのオフィス開催を復活させています。
新入社員からは、対面で直接会話ができることや、オフィスツアーへの参加に対する前向きな意見が寄せられているといいます。
また、入社時のオンボーディングはオフィスで実施するものの、入社後は、社員の働き方に合わせてオンラインとオフラインの両面からオンボーディングを展開し、柔軟に対応をしています。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、新卒入社メンバーを対象に1年間を通したオンボーディングプログラムを実施しています。
入社直後は企業文化や事業戦略、製品、ビジネスマナーや社内ルールなどについて学び、入社3週間後から実践研修に移るしくみです。
オンボーディング期間中は、内定者懇親会やウェルカムセレモニー、研修打ち上げなど、同期や社員との交流を深める機会を多数設けています。
また、中途採用者には、6カ月間のオンボーディングプログラムを実施しており、その間、チームメンバーとの交流を深めるために飲食費を補助する制度や、社員が人事に相談できるサポート制度なども用意しています。
そのほか、オンボーディング期間終了後も社員の学びをサポートする制度が用意されており、社員の成長とキャリア形成を継続して支援する体制を整えています。
株式会社ディー・エヌ・エー
株式会社ディー・エヌ・エーでは、新卒者を対象としたオンボーディングを実施してきましたが、2022年1月から、中途採用者向けのオンボーディング「DOP(DeNA Onboarding Program)」も始動させました。
DOPは、配属先でおこなうオンボーディングとは別にHR部門が実施している取り組みであり、多様なバックグラウンドを持つ中途採用者が自社の企業文化を理解し、早く職場環境になじめるようなサポートをおこなうものです。
DOPではまず、入社のタイミングでウェルカムボックスを送付し、歓迎の意を示すとともに歓迎会を開催して、同日入社の社員と横のつながりを持てる環境を提供しています。
また、CEO(最高経営責任者)とのセッションを開催することで、企業文化やミッション・ビジョン・バリューについての理解を深めるとともに、風通しのよい雰囲気を実感できるような工夫も行っています。
オンボーディング支援ツール
オンボーディングを実施する際には、オンボーディングをスムーズに実行するための支援ツールの活用がおすすめです。
人材管理システムとタレントマネジメントシステム
オンボーディングを効果的に実施するためには、新入社員の経歴やスキルを管理するだけでなく、オンボーディングの進捗具合や新入社員のコンディションなども把握する必要があります。
社員に関するデータを管理できる人材管理システムや社員の属性やスキルを一元管理できるタレントマネジメントシステムは、オンボーディングを支援する有効なツールです。
HRMOSタレントマネジメントの場合、経歴やスキルの管理だけでなく、1on1ミーティングの内容も記録できるため、社員の成長過程やコンディションの変化も可視化できます。
また、多面的な評価を実現する360度評価機能や、採用時との評価のギャップを比較できる機能も付加されており、社員一人一人に合わせた継続的なオンボーディング施策を実施しやすくなります。
さまざまな面でメリットのあるタレントマネジメントシステムの詳細は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
コミュニケーションツール
社員の不安を軽減し、早期に高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、不安や悩みを誰かに相談できる環境の整備が必要であり、そのためには気軽にコミュニケーションを促進するツールの導入が不可欠です。
人事担当者などとも気軽にコミュニケーションを取るためには、チャットツールやオンライン会議システムなどのツールが有効です。
特に、リモートワークを前提とした働き方を導入している場合は、コミュニケーションツールの導入が必須になるといえます。
e-ラーニングプラットフォーム
新入社員が組織に適応するだけでは早期の活躍は期待できません。
持てる能力を最大限に発揮し、納得できるパフォーマンスを実現するためには、業務に必要な知識の習得も必要です。
効率よく業務知識を身に付けるためには、学習管理システムと呼ばれるLMS(Learning Management System)などのeラーニングプラットフォームの導入も検討した方がよいでしょう。
LMSは学習状況を可視化できるため、進捗に応じて内容を調整し、効率的な研修を実施できます。
オンボーディングプログラムは入社後3カ月が肝心
新しい環境の中で戸惑うことが多い新入社員にとって、入社後3カ月は思い通りの成果が出せずモチベーションが下がり始めるタイミングです。
入社後3カ月間に適切な研修を実施しなければ、その後の定着率や成長スピードに悪影響を及ぼす可能性が高まります。
逆にいえば、入社3カ月間を目安に5つの壁を乗り越えられるような適切なプログラムを実施することで、今後の成長スピードや定着率を上げることにつなげられるでしょう。
新入社員の定着率を高め、早期に即戦力として活躍してもらうため、人事担当者と現場担当者は、入社から3カ月のオンボーディングプログラムには、特に注力する必要があります。
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まとめ
オンボーディングとは、新入社員が職場に早くなじみ、早期に能力を発揮できるようにサポートするプログラムです。
オンボーディングを実施すると新入社員の心理的な不安を軽減でき、企業理念や組織文化などへの理解が深まるため、入社後早いタイミングで成果を上げられるようになり、早期退職を防止できます。
オンボーディングは、入社前、入社後と継続して実施することが重要です。また、オンボーディングプログラムを設計する際には、今回ご紹介した「5つの壁」に着目するとともに、定期的にプログラムの見直しをしながら、社員の継続的な成長をサポートできるようにしましょう。
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オンボーディングを継続的に実施し、社員の成長を支えるためには、社員の経歴やスキルの管理はもちろん、社員の考えやコンディションの変化にも配慮する必要があります。
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また、個人コンディションサーベイ機能により、適切なタイミングでのフォローが可能になるため、退職のリスクにも早期に対処することができます。
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