目次
従業員一人一人のデータを一元管理して活用するタレントマネジメントは、特にリーダー育成を目的に導入されるケースが多く見られます。
本記事では、企業が抱える人材育成全般の課題を解説するとともに、タレントマネジメントを活用したリーダー育成の具体的な流れと、リーダー育成事例についてご紹介します。
企業が抱える人材育成の課題
ビジネス環境の急速な変化やデジタル化の進展が続く現代は、人材育成の重要性と難度が高まっています。まずは、企業が抱える人材育成の課題をさまざまな視点から解説します。
時間と予算の不足
多くの企業では、日常業務の遂行に追われ、人材育成や人材開発のための時間を確保できないことが大きな課題となっています。
特に中小企業では、限られた人員で業務を回す必要があり、育成のための時間確保が困難です。独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」によると、全体の約3割が「人材育成を行う時間がない」と回答しています。
また、2023年度の従業員一人あたりの教育訓練費用は34,606円で、すべての企業規模で前年より増加の結果となっています。コロナ禍の2020年には30,000円を一時期下回ったものの徐々に回復傾向にあり、今後の人材教育費の見通しを増加とする企業が約6割となりました。
人材育成コストを増やす意志を示している一方で「指導する人材が不足している」「人材を育成しても辞めてしまう」「育てがいのある人材が集まらない」などの課題を抱えている企業が多いのが現状です。
育成スキルと意識の不足
人材育成を担当する管理職や中堅社員が、効果的な指導方法や育成スキルを十分に身につけていないことも課題の一つです。
多くの企業で指導する人材不足が課題となっており、人材育成に取り組みたくても取り組めない状況が続いています。
また、人材育成の重要性に対する認識が甘く、後回しになっている現状も見られます。特に中小企業は日々の業務遂行が優先され、指導者も従業員も、ともに人材育成の実施に必要な時間を割けず、教育の質が下がってしまうケースが多いです。
計画性と体系性の欠如
リスキリングや人的資本経営、DX人材の育成が重要視される現代では、明確な目標を立てて計画的かつ体系的に人材育成に取り組むことが求められています。
しかし、多くの企業では人材育成が場当たり的に行われ、明確な計画や体系的なアプローチが欠如しているのが課題です。
厚生労働省の令和5年度「能力開発基本調査」によると、事業内の職業能力開発計画の作成状況は芳しくなく、すべての事業所で計画を作成している企業は約14%にとどまりました。
企業目標から逆算して必要な人材要件を定め、その人材にあった育成プランを練ることは不可欠といえるでしょう。
従業員の意欲低下
育成される側の従業員の学習意識が低いことも、人材育成課題の一つです。
個の学び直しやリスキリングが注目される昨今、精力的に学ぶ人が増えている一方で、日本人の平均学習時間は低水準となっています。
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によると、学業以外の学習・自己啓発・訓練にあてる時間は1日平均で13分(2021年の調査結果)となっており、従業員個人の学習意欲向上を促す取り組みは必須といえるでしょう。
多様性への対応
人材育成の際は、異なる世代の価値観にあわせた育成プランが求められます。
Z世代やα世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代は「コストパフォーマンスよりもタイムパフォーマンスを重視」「社会課題への関心が強い」「ワークライフバランスを重視」といった特徴があります。
若手社員の価値観に寄り添うならば、会社の利益ばかりを重視せずに、SDGsを意識した研修テーマを取り入れたり、倍速再生などが可能な動画の研修教材を整えたりする必要があるでしょう。
若年層以外にも、外国籍やシニア、子育て世代など、多様な人材の能力を引き出すための工夫が求められています。
効果測定の難しさ
人材育成の効果を客観的に測定し、評価することの難しさは、多くの企業が直面している課題です。
特に、ソフトスキルや長期的な能力開発の成果を数値化することは容易ではなく、投資対効果の判断が困難となっています。
加えて、企業目線の効果と、従業員本人が感じる研修効果は異なるため、二つの側面から効果測定を行わなくてはなりません。
人材育成・能力開発に取り組んだ企業は、従業員のモチベーションアップや生産性向上などの効果を少なからず感じているものの、まだまだ改善の余地があるといえるでしょう。
環境整備の課題
社内環境の整備が追い付かず、人材育成効果を実感できていない企業も少なくありません。
人材育成の効果を最大化するためには、学んだことを実践する機会を提供したり、学び続けることの重要性を社内に周知し続けたりすることが不可欠です。
従業員が自律的に学べる環境づくりのために、e-learningやLMS(ラーニングマネジメントシステム)の導入など、学習支援インフラの整備が求められています。
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タレントマネジメントと人材育成
タレントマネジメントで蓄積したデータをもとに、従業員一人一人に適した育成プランを作成すれば、企業の人材育成の質向上につながります。ここでは、改めてタレントマネジメントの意味や人材育成が求められる背景について解説します。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、従業員のスキルや能力、経験を最大限に生かすため、従業員情報を蓄積・一元管理して組織目標の達成を目指す人材マネジメント手法です。
タレントマネジメントでは、従業員の個人情報や評価、目標、資格情報に加え、受講した教育研修の履歴やサーベイ結果などを管理することができます。
従業員ごとの教育プランや学習記録をLMSのように蓄積していくことで、人材育成の質の向上が期待できるでしょう。
関連記事:【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
人材育成が重要である背景
少子高齢化により急速な労働力人口減少が進み、引き続き人材獲得競争は激化の一途をたどる見込みです。
また、デジタル技術の発展とともにビジネスのグローバル化も必要性が増し、グローバル目線での企業競争力強化が求められています。
国際社会で生き残るためには、企業の技術革新を促しながらDX人材の育成も急務であるため、人材育成は企業の存続と成長に直結する重要な経営課題となっています。
タレントマネジメントによって人材育成を強化できる理由
タレントマネジメントには、従業員の保有スキルや経歴、評価や目標などの情報を管理できる従業員データベースや、人材育成が計画できる機能が備わっています。
従業員データベースをもとに、自社に不足する人材やスキルを見極めて育成計画を練り、一人一人の目標設定に落とし込むことで、根拠のある育成プランを作成できます。
タレントマネジメントシステムの基本機能については次の記事でご確認いただけます。
関連記事:タレントマネジメントシステムの基本機能とは?活用ポイントを簡単に解説
人材の能力を最大限に引き出し、自社の中で活躍し続ける状態をつくることが企業経営、特に人事戦略にとっての要となります。
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タレントマネジメントを活用した人材育成の進め方
企業の持続的な成長には、戦略的な人材育成が不可欠です。
タレントマネジメントを活用することで、従業員一人一人の能力を最大限に引き出し、組織全体の競争力を高めることができます。
ここでは、タレントマネジメントを活用した効果的な人材育成の具体的なステップを解説します。
1:目的の明確化
タレントマネジメント導入に際して、最も重要なのは目的の明確化です。
企業の経営理念や、中長期的な事業戦略と連動した育成方針を策定する必要があります。
特に、先々の経営者候補を育てるべくサクセッションプランを作成するのか、次世代の中堅リーダーを育成するのか、それとも全社員の基礎的なスキル向上を目指すのかによって、具体的な施策は大きく異なるでしょう。
また、現在の組織が抱える課題や企業目標から、将来必要となる人材像を逆算して、育成目標に反映させることも重要です。
2:人材情報の可視化
効果的な人材育成を実現するためには、従業員一人一人の持つスキルや資格、前職までの経験と在職時の参加プロジェクト、社内評価などの情報を詳細に把握し、一元管理することが不可欠です。
タレントマネジメントシステムを活用することで、これらの情報を組織全体で共有し、客観的な分析が可能となります。
また、タレントマネジメントのダッシュボード機能を用いれば、全社の人員構成を可視化できるため、育成プランの作成に役立つでしょう。
3:育成計画の策定
タレントマネジメントで収集した人材情報をもとに、組織の理想像と現状とのギャップを見出し、それを埋めるための具体的な育成計画を策定します。
育成計画を策定する際は、定期的な1on1ミーティングによるきめ細かな指導や、明確な目標設定と進捗管理、そして体系的な研修プログラムやOJTの実施計画などを含める必要があります。
HRMOSタレントマネジメントには、1on1ミーティングや目標管理機能も備わっているため、育成計画を実行する場面でも活用が可能です。
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4:適切な配置と経験の蓄積
策定した人材育成計画の効果を高めるためには、タレントマネジメントを活用して従業員を適材適所に配置して、適切な業務経験を積ませることも重要です。
タレントマネジメントシステムを活用すれば、人材配置や組織シミュレーションが容易になるため、各従業員の能力や適性を踏まえた最適な配置が可能となります。
また、タレントマネジメントで設定したキャリアパスに沿って経験を積めるように、計画的な人事異動を実施しましょう。
5:定期的な評価とフィードバック
育成計画の実効性を高めるためには、明確な評価基準に基づく定期的な評価と、適切なフィードバックの提供が不可欠です。
目標の達成状況や成長度合いを客観的に評価し、その結果を本人にフィードバックすることで、自己認識の向上とさらなる成長意欲が期待できます。
例えば、HRMOSタレントマネジメントの1on1機能を活用して、個別に育成計画の進捗を確認し、必要に応じて計画を見直しましょう。育成計画は一度作成したら終わりではなく、従業員の成長にあわせて柔軟に変更するのもポイントです。
関連記事:メンバーのモチベーションを上げる!正しいフィードバックの仕方とは
6:継続的な改善
タレントマネジメントを通じた人材育成の効果を最大化するためには、定期的な効果測定と継続的な改善が不可欠です。
具体的には、従業員の満足度調査やパフォーマンス指標の分析、育成プログラムの費用対効果の検証などを通じて、人材育成計画の課題を特定します。
例えば、HRMOSタレントマネジメントの「個人コンディションサーベイ」と「組織診断サーベイ」を活用することで、教育実施後の個人・組織への効果を確認することも可能です。あわせて、360度評価や1on1を組み合わせながら進捗を確認し、改善点を洗い出していきましょう。
関連記事:マネジメントサイクルとは
人材・リーダー育成の事例紹介
最後に、タレントマネジメントを利用して人材育成に取り組んだ企業事例を紹介します。
事例1:資格保有者を可視化して育成計画を作成
製造業では、有資格者しか対応できない業務があったり、一人前の技能社員を育成するのに5年から10年ほどかかったりすることが多い業界です。
人材育成に時間がかかるため、一人の従業員が欠けたときのインパクトが大きい点が課題となっています。
そこで、とある製造業の企業様では、タレントマネジメントを用いて、社内の資格保有者の定量化を試みました。
現在、社内に何人の有資格者がいるのか、年代ごとに細かい数値を見える化し、数年後に何人の有資格者が定年退職をするのか、退職者が出たときに社内の技能職は何人不足するのか、といった情報を定量的に把握しました。
現状の数値を正しく把握することで、先々の不足人員数を予測でき、いつから何人の育成を行うべきか計画を立てやすくなります。万が一「社内育成だけで人員が追い付かない場合は、何人の技能職を外部採用すべきか」というデータも算出できるのがタレントマネジメントの強みです。
人材育成に時間がかかる企業では、タレントマネジメントを活用した現状把握が必須といえる事例です。
事例2:資格情報の把握と更新のリマインドを活用
とある不動産会社様では、国家資格の宅地建物取引主任者の保有者の数を正確に把握するため、タレントマネジメントを活用しました。
製造業と同様に、資格がなければ対応できない仕事も多く「○名の事業所には有資格者が○名必要」などと、法律で決められている業界も多いです。
タレントマネジメントを活用して、各事業所の有資格者数を可視化し、法令にのっとった人材配置ができているか確認することができました。
また、資格の更新期限がある場合は、タレントマネジメントで更新期限が迫っていることを通知して、再試験を促しているそうです。資格取得日、喪失日、更新日など、細かい従業員データを管理できるのは、タレントマネジメントシステムのメリットといえます。
事例3:次期リーダー候補の育成を実施
某人材サービス企業様では、タレントマネジメントシステムの従業員データにフラグをつけて、次期管理職の候補者を管理しました。
タレントマネジメントシステム内でフラグをつけておくことで、いつ、誰に、どのような育成を行えばよいかを見える化できます。
対象者の検索とリストアップの際も、タレントマネジメントシステムの従業員データベースでスムーズに行うことができるため、育成候補者の管理を効率化できたそうです。
まとめ
従業員の業務経歴や保有スキル、能力を管理できるタレントマネジメントを導入すれば、一人一人にあった育成計画を立てやすくなります。価値観やキャリアの多様化が進んでいる現代では、個々の能力や目標にあわせた育成支援が不可欠です。
ぜひ、タレントマネジメントの機能を活用して、人材育成を加速させましょう。
個別の人材育成計画を立てるならタレントマネジメントを
従業員の人材育成計画を立てるには、まず自社の従業員のスキルを正しく把握することが不可欠です。
従業員データを収集し、マネジメントに生かすステップについて、次の資料でご紹介しています。HRMOSタレントマネジメントの導入事例もあわせてご紹介しているので、ぜひダウンロードしてご覧ください。