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「ヒト・モノ・カネ」という言葉で表されるように、人材は企業にとって非常に重要な経営資源です。タレントマネジメントは人材に注目し、活用・育成することをその目的としています。
そんなタレントマネジメントにおいて効果的なツールのひとつがスキルマップです。今回は、タレントマネジメントやスキルマップとは何か、どのようなメリットやデメリットがあるのか、作成法や活用法などについて詳しく解説します。
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スキルマップの意味とスキル、分類、評価の3要素
タレントマネジメントの実践において効果的なツールであるスキルマップとは、どのようなものなのでしょうか。
スキルマップとは
スキルマップとは、社員一人一人が業務を進めるうえで必要となるスキルやその習熟度を一覧の表に表し、可視化したものです。スキルマップを作成すると社員の現在のスキルレベルを把握できるようになり、社員自身が自分の現在地を把握できるようになります。
また、スキルを一目で把握できるため客観的なデータから公平な評価がしやすくなり、個々人の強みや弱点なども把握できることから、一人一人に応じた効果的な育成計画も立てやすくなります。
さらに、部署内における社員の構成が明確になり、不足する人材を補うなど、人材配置に有効活用できます。
スキルマップは「スキル」「評価」「分類」の3つの要素で構成されるものです。それぞれの詳細については以下で詳しくご説明します。
<関連記事>人事業務に活用できるスキルマップとは?作成方法や得られるメリットを解説!
スキル
スキルとは、社員が有する知識や技術、能力などです。たとえば、パソコンやソフトウェアを操作する能力や英語で他者とコミュニケーションする能力、自己マネジメント能力、タスク管理能力などが挙げられます。スキルマップではこれらのスキルを定量的に評価し、一覧にして可視化することで、社員一人一人の能力を把握し、組織全体の生産性の向上や人材育成、人員配置の最適化などに役立てられるというわけです。
社員のスキルを可視化するためには以下の3つの観点から定義することが重要です。
- 特定の分野に関する知識
- 特定の作業やタスクを遂行するための技術
- 特定の状況下で成果を出すための能力
スキルの定義が曖昧だと、スキルマップの作成や活用が難しくなります。そのため、まずは自社の状況や目的に合ったスキルとは何かを明確に定義することが大事です。
分類
スキルを分類することで、スキルマップは整理されたより分かりやすいものになります。スキルの分類にはさまざまな方法があります。具体的には、社員が行う業務に基づいてスキルを分類する方法、共通の特性に基づいた分類(スキルカテゴリ分類)、習熟度に基づいた分類(スキルレベル分類)などがあります。どのように分類するのが適切かは、企業の状況や目的によって異なります。そのため、まずは自社の状況や目的に合ったスキルの分類方法は何かを検討することが大切です。
評価
社員のスキルを客観的に把握するためには、評価をしなければなりません。スキルの評価方法には、以下の3つの方法があります。
- 自己評価
- 上司評価
- 360度評価
自己評価とは、社員が自分で自分自身のスキルを評価する方法です。上司評価では、上司が社員のスキルを評価します。360度評価は、社員の同僚や顧客といったさまざまな立場の人がスキルを評価する方法です。スキルマップの精度を高めるためには、スキル評価を欠かすことができません。評価方法についても自社の状況や目的に合った方法はどれか、よく検討しましょう。
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タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、社員のスキルや能力、目標評価、経験、属性などを一元的に管理し、活用することで企業の成長と社員の成長につなげる人材マネジメント手法です。
社員のスキルや能力を的確に把握することで、適材適所の人材配置や、社員のスキルに合わせた人材育成が可能になります。また、能力やスキルを十分に発揮できる部署や業務に配置することで、社員のパフォーマンスが向上するため、組織全体の生産性も向上させることができます。
タレントマネジメントを実施するためには、社員のスキルの可視化が不可欠ですが、スキルの把握は簡単ではありません。そこで役立つのがスキルマップです。スキルマップを活用すれば、社員のスキルを効率よく把握でき、スムーズにタレントマネジメントを進めやすくなります。
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なぜ今スキルマップが注目されているのか
現在、多くの企業がスキルマップを導入しています。
スキルマップが注目を集めている背景には、労働力人口の減少が関係しています。
少子高齢化が進む中、優秀な人材の確保は簡単ではありません。そこで、既存の社員のスキルを高め、生産性を向上させることで企業の成長を図ろうとする企業が多いのです。
また、日本では年功序列の慣習から社員のスキルを明確に測定し、評価をするという制度が定着していなかったため、能力のある若い社員が不満を抱き、定着しにくいといった問題も起きています。
このような状況から各社において人材育成の重要性が高まっており、能力を可視化し、適正な評価を可能にするスキルマップが注目を集めているのです。
・入社手続きの効率化
・1on1 の質の向上
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・組織課題の可視化
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スキルマップを活用するメリット
スキルマップ活用のメリットは大きく3つに分けられます。それぞれどのようなメリットにつながるのか、詳しく解説します。
適材適所の人材配置を実現できる
スキルマップを活用すれば、社員のスキルを見える化できます。これによって社員のスキルと仕事内容のミスマッチを防ぎ、適材適所の人材配置を実現できることで、採用時のミスマッチによる早期退職の予防、異動・昇格時の適切な配置を実現できます。また、スキルマップは社内に必要なスキルを持った人材が何人いて、どのくらいの人員が不足しているのか、といったことを把握する助けとなるでしょう。組織の人材バランスを評価するのにも効果的です。
ただし、スキルマップはあくまでもツールにすぎません。適材適所の人材配置を実現するためにはスキルマップ以外の要素も考慮する必要があります。たとえば、社員の経験や適性、組織の文化なども考慮したうえで人材配置を行うことが重要です。
人材育成を効率的に行える
スキルマップを活用することで、社員のスキルの強みや弱みを把握できます。企業は社員のスキルや能力の棚卸しを行い、それぞれのスキルや能力に合った人材育成計画を策定できるでしょう。これにより、社員育成の効率化をはかれるようになります。プロジェクトチームの成功につながるチーム編成の実現や効果的なスキルアップ研修の企画立案などです。また、社員のスキルの強みや弱みを把握することで、効果的なOJTを実施することもできるでしょう。
<関連記事>OJTとOFF-JTとは?違いやメリット・デメリットを人材育成の観点で解説
社員のモチベーションアップにつながる
スキルマップを活用すれば、社員がそれぞれ自分のスキルを客観的に把握できるようになります。自分のスキルや能力を把握することで、社員は以下のようなメリットを感じることができます。
- 自己肯定感の向上
- 成長意欲の向上
- キャリアアップへの意欲の向上
これらを感じることは自身のキャリア開発への意欲を高めることにつながるでしょう。その結果、社員のモチベーションアップが期待できます。
<関連記事>モチベーションアップとは?社員のモチベーションを上げる方法、事例
将来の人材ニーズの予測と採用計画への活用
スキルマップの作成は、社員個人のスキルを可視化するだけでなく、組織全体におけるスキルの過不足状態の把握を可能にします。スキルマップの作成によって、会社として充足しているスキルや、不足しているスキルが明確になるのです。
自社に不足しているスキルが明確になれば、新卒採用や中途採用の際の採用基準も策定しやすくなります。また、社員の年齢ごとにスキルの状況を把握することもできるため、退職などによって社内でのスキル不足が生じないよう、計画的に採用活動も進められるようになるでしょう。
スキルマップのデメリットと対策
スキルマップにはいくつかデメリットもあります。スキルマップを活用したタレントマネジメントを成功させるためにはデメリットについてもしっかりと認識し、対策を講じることが大事です。ここからは、どのようなことがデメリットとして想定されるのか、詳しく解説します。
スキルの見える化に不満を抱く社員が出てくる
スキルマップは社員のスキルを浮き彫りにするためのツールですが、だからといってスキルマップだけで社員の能力を完全に把握できるわけではありません。スキルマップでの評価には限界もあり、スキルマップの活用に不満を抱く社員が出てきてしまう可能性を考慮しておかなければならないでしょう。また、そのような社員が出てくることを防ぐため、スキルマップ作成の際には客観性を保つことも重要です。
評価の際には、社員の自己評価だけで決めるのではなく、上司や同僚の評価も参考にし、社員にフィードバックを行うのもよいでしょう。そうすることで納得感を持ってもらいやすくなります。
<関連記事>360度評価とは?導入のメリットや項目例、成功のポイントを解説
社員がスキルを上げることだけを目的としてしまう
スキルマップの目的のひとつは社員のスキルアップを促進することですが、その目的の先には会社の成長やビジネスの発展、社会への価値の提供があります。また、客観的な評価によって適材適所に人材を配置したり、効果的なプロジェクトチームを編成したりするのに役立てることもスキルマップの重要な目的です。しかし、スキルマップが注目されすぎると、社員がスキルを上げることだけを目的としてしまう可能性があります。スキルマップはあくまでもツールにすぎません。スキルマップの項目を埋めることが最終的な目的ではないことを社員に理解してもらうことが大切です。
管理者がスキルだけで評価してしまう
最終的な目的が会社の成長やビジネスの発展、社会への価値の提供にあることは、社員を評価する管理者側もしっかり理解しておかなければなりません。なぜなら、スキルマップが評価に利用されることにより、評価する側が社員をスキルだけで判断するようになってしまう可能性があるからです。スキルマップはあくまでも評価の一要素にすぎません。たとえば、周りからどれくらい信頼されているかなどのように、スキルマップからは分からないこともあります。社員の全体的な評価においては社員の多様性を尊重することが重要です。管理者はスキルマップの項目以外の要素も考慮し、公平な評価を行うようにしましょう。
導入から運用まで時間がかかってしまう
スキルマップの導入にあたっては、まず、業務の内容を細かく洗い出さなければなりません。
そのうえで業務プロセスを明確にし、業務に対する達成度をどのように評価するか、評価基準も明確に策定しておく必要があります。
また、数値化しにくいスキルをどのように扱うかについても慎重な議論が必要になり、全員が納得できる評価基準の作成は簡単ではなく、スキルマップの作成には労力と時間がかかります。
しかし、スキルマップは、企業の成長のために重要な役割を果たすものであり、手間がかかるという理由で導入を断念すべきではありません。スキルマップを作成する際には、簡便にスキルマップを作成できるシステムの導入や、外部の専門コンサルタントの活用などを検討することをおすすめします。
スキルマップの作成方法
それでは、スキルマップはどのように作成し、導入すればよいのでしょうか。作成から導入のための手順は以下の4つのステップに分けられます。
1.目的と目標の設定
まずはスキルマップを作成する目的と目標を明確にしなければなりません。目的とは、スキルマップを作成することで一体何を実現したいのかを示す指標です。一方、目標は目的を達成するために達成すべき具体的な数値や状態を指します。
2.スキルの定義と分類
スキルマップを作成する際は社員のスキルをどのように定義し、分類するかをあらかじめ決めておかなければなりません。スキルの定義が曖昧だと、作成や活用が難しくなってしまうからです。また、スキルの分類が適切でないと、スキルマップから得られる情報が役に立たないものになる可能性があります。
また、スキル項目を決定する際には、知識や技術力、能力などのほか、高い成果を上げる人に共通する行動特性(コンピテンシー)も含めることが大切です。コンピテンシーを含めた人材評価を行うことで、将来、リーダーとなるべき人材の発掘や育成も可能になります。
<関連記事>コンピテンシーとは?面接評価や目標管理への使い方をわかりやすく解説
3.スキルマップの作成
定義と分類を行ったら、それに基づいてスキルマップを作成しましょう。作成方法としては、経営層がスキルマップを作成して社員に共有するトップダウン方式と社員一人一人が自分のスキルを把握してスキルマップを作成するボトムアップ方式、マネージャーが社員のスキルを評価してスキルマップを作成するミドルアップ方式の3種類があります。自社に合った方法を選びましょう。
4.スキルマップの評価
スキルマップを作成したら、スキルを評価する必要があります。会社にとって重要度の高いスキルもあれば、そうでないスキルもあるからです。先述した方法でスキルを評価し、スキルマップの精度を高めましょう。
スキルマップの活用方法
スキルマップを作成したら、それを実際に活用することが大事です。どのように活用すればよいのか、主な方法をいくつか紹介します。
採用時のスキル評価
スキルマップを活用すれば、応募者のスキルを客観的に評価することが可能です。応募者のスキルを客観的に評価することは採用時のミスマッチを防ぐことにつながり、採用活動の効率化にもなります。採用活動の効率化とは、スキルマップを基にした採用基準の設定や採用面接における質問、採用候補者の評価などです。
異動・昇格時のスキル評価
スキルマップに基づいて社員のスキルを評価することは、異動や昇格の適正な人材配置の実現にもつながります。なぜなら、スキルマップは企業が求める社員のスキルを定量的に評価できるだけでなく、その変化について把握することもできるからです。ただし、その際にはいくつか注意するべきポイントがあります。スキルマップを常に最新の状態に保つことや、スキルマップの活用を社員に周知させること、スキルマップに基づく評価の妥当性を検証することです。これらを怠ると、公平性を保てなくなります。
プロジェクトチームの編成
スキルマップはプロジェクトチームを編成する際に必要なスキルを把握するのにも有効です。必要なスキルを有するメンバーを集めてチームを編成すれば、プロジェクト成功の可能性が大きく高まるでしょう。
スキルアップ研修の企画
スキルマップは社員がどのようなスキルアップに対するニーズを持っているのかを把握するのにも役立ちます。なぜなら、スキルマップによって社員のスキルレベルを把握すれば、どのようなスキルが不足しているのかということも洗い出せるからです。また、社員のスキルアップ研修の成果を浮かび上がらせ、研修の効果を評価する際にもスキルマップを活用できます。
<関連記事>スキルアップとは?従業員のスキルを高める方法、メリットを解説
OJTの実施
スキルマップを作成しておけば、OJTを実施する際にも役立つでしょう。なぜなら、スキルマップを分析することでOJTの目標を設定できるからです。また、OJTの進捗状況や成果をスキルマップによって評価することもできます。その評価はOJTの効率化につながるでしょう。自社の状況や目的に合った取り組みを検討するのもひとつの方法です。
キャリア形成の支援
スキルマップを作成すれば、社員一人一人のスキルを的確に把握できるため、スキルや適性に合わせたキャリアパスの設計が可能になります。
また、キャリア形成のサポートにより、社員が高いパフォーマンスを発揮できるようになれば、高い評価を得られるようになるため、社員のモチベーションアップにも大きく寄与します。
加えて、スキルマップを用いると不足している部分を補う効果的な育成計画が立てられるため、社員自身も成長を感じやすくなります。「自分は目標を達成するための能力を保有している」と自覚する自己効力感が高められる点も、モチベーションの向上につながるといえるでしょう。
<関連記事>キャリアパスとは? キャリアプランとの違いやITエンジニアなど職種別具体例
スキルマップ導入の際に注意するべきポイント
スキルマップの導入を成功させるために注意するべきポイントをいくつか紹介します。
経営層の理解と協力を得る
スキルマップの導入には経営層の理解と協力が必要不可欠です。そのためには、導入の目的や得られる効果が十分に伝わるよう、経営層に対して明確な説明を行い、スキルマップの必要性について理解してもらわなければなりません。経営層が十分に理解していない場合、次のような問題が発生する可能性があります。
- スキルマップの作成や運用に必要な予算や人材が確保されない
- スキルマップの活用方法が明確にならず、有効に活用されない
- スキルマップによる人材育成や配置、異動が経営戦略に沿ったものにならない
また、導入を成功させるためには経営層に次のポイントを理解してもらうことが重要です。
- スキルマップの目的や意義
- スキルマップの作成や運用に必要な予算や人材
- スキルマップの活用方法
- スキルマップによる人材育成や配置・異動の重要性
社員の理解と協力を得る
スキルマップは社員のスキルを可視化し、社員を成長させるためのツールですが、社員が導入の効果やメリットを理解していなければ、十分にスキルマップを活用できません。
社員がスキルマップを理解していない場合に発生する可能性のある問題は次の通りです。
- スキルマップへの回答が適当になる
- スキルマップの活用方法が理解できず、活用されない
- スキルマップによる人材育成や配置、異動に納得感が得られない
導入を成功させるためには、以下のような取り組みを行うとよいでしょう。
- 導入目的や意義を社員に説明する
- 作成や運用に社員を参加させる
- スキルマップによる人材育成や配置、異動のメリットを社員に説明する
- スキルマップによる個人の成長やキャリアアップを支援する
これらの取り組みを通じて社員が導入の意義を理解してくれれば、積極的に活用してくれるようになるでしょう。
スキルマップの精度を高める
スキルマップの精度が低いと適材適所の人材配置や人材育成が難しくなるだけでなく、評価の公平性が失われて社員のモチベーションを下げてしまいます。スキルの定義や分類を明確にし、評価方法を検討するなどして、スキルマップの精度を高めるようにしましょう。以下の取り組みを行うことで精度を高めることができます。
- スキルの定義を明確にするためのワークショップを開催する
- 評価方法を検討するための専門家を招聘する
- スキルマップの更新を定期的に行うための仕組みを構築する
これらの取り組みを通じてスキルマップの精度を高め、スキルマップの導入を成功させましょう。
スキルマップを継続的に更新する
スキルマップの導入を成功させるためには、スキルマップを継続的に更新することが大切です。社員のスキルは常に変化しています。そのため、スキルマップは定期的に更新し、最新の情報を反映させなければなりません。
スキルマップを継続的に更新することには、以下のようなメリットがあります。
- 人材育成や配置・異動の精度を高めることができる
- 企業の目標や戦略の変化に迅速に対応できる
- 社員のスキルアップを促進できる
また、スキルマップの継続的な更新を実現するには更新頻度や更新方法を明確にすること、更新を社員に周知することが大事です。更新頻度は企業の規模や業種、スキルマップの種類や規模によって異なります。自社にとって適切な頻度や方法は何かを明確にしておくことが、更新を効率的に行うための重要なポイントです。
スキルマップを使ったタレントマネジメントの成功事例
最後に、スキルマップを使ったタレントマネジメントの成功事例をいくつか紹介します。
KDDI株式会社
KDDI株式会社はauブランドを中心とした携帯電話事業や固定通信事業、インターネット関連事業などを展開している大手通信業者です。
同社ではスキルマップを活用して適材適所の人材配置を実現しています。たとえば、スキルマップを活用した社員のスキルの可視化もそのひとつです。スキルを可視化することで仕事とのミスマッチを防ぎ、人材配置の効率化をはかっています。
具体的には、以下のような取り組みを行っています。
- スキルマップに基づいた採用候補者の適性判断
- スキルマップに基づいた社員の適切なポジションへの配置
- プロジェクトチーム編成の際におけるスキルマップに基づいた社員のマッチング
また、自律的なキャリア形成支援を目的とした「ジョブ図鑑」を社員向けに公表しています。ジョブ図鑑には、30の専門領域とそれをさらに細分化したジョブの役割や業務内容、必要なスキルなどが掲載されているほか、スキルアップを叶える研修なども紹介されています。
そのため、社員はジョブ図鑑を参考に、目指すべきキャリアの実現に向け、自律的なスキルアップが可能になります。ジョブ図鑑の完成には、スキルマップによるスキルの可視化が大きく貢献しているといえるでしょう。
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータはコンサルティング&システムインテグレーション事業やITプラットフォーム事業などで世界でも有数の大手IT企業です。
同社ではスキルマップを活用した社員のキャリア開発支援を実施しています。たとえば、キャリア面談やスキルアップ研修の企画、OJTの実施などです。具体的には、スキルマップに基づく以下のような取り組みを行っています。
- 社員のキャリアの目標を設定支援するキャリア面談
- 社員のスキルアップのニーズを把握し、企画したスキルアップ研修
- 社員のスキルアップを促進しているOJT
これらの取り組みにより、同社では社員のキャリア意識の向上やスキルアップの促進などの成果を上げています。
また、同社では自律的なキャリア構築を促すため、専門性に応じた多様なキャリアパスを用意しています。社員をプロフェッショナルな人材に育成することを目的に導入された「プロフェッショナルCDP」は、社員のスキル到達レベルの認定や能力開発の方法を提示し、一人一人に応じたキャリア形成を支援する仕組みです。
また、先進技術領域やコンサルティング領域におけるキャリア形成を支援する制度や、スペシャリストのキャリアパスを実現する制度なども導入し、社員のキャリア形成を積極的に支援しています。
株式会社リクルートホールディングス
株式会社リクルートホールディングスは求人広告や人材派遣、ITソリューションなどのサービスを手掛けるリクルートグループの持株会社です。
同社ではOJTの目標設定や進捗管理、成果評価においてスキルマップを活用しています。社員が習得すべきスキルや知識の明確化や社員のスキルアップの進捗状況の把握、社員が習得したスキルや知識の評価などです。その成果として、OJTの効率化や成果の向上を達成しています。
また、社員のキャリア形成を支援するため、さまざまな取り組みを実施しています。
同社が導入しているミッショングレード制は、任される職務に応じて等級を決定する制度です。
これは、個人の職務遂行能力を上司や人材開発委員会が見立て、期待値を設定し、期待値に合う職務とマッチングをさせるというものです。人材開発委員会とは、複数の組織のリーダーが社員の育成方針を検討する場です。人材を客観的に捉える個別特性診断も活用しながら、社員がスキルや能力を最大限に発揮できる環境の提供と、適切な人材配置を実現しています。
スキルマップの将来展望
スキルマップは、現在大きな注目を集めている、社員のスキルを可視化する手法ですが、今後、社会の変化に合わせて次のように進化していくと予測されています。
AIを活用したスキル分析と予測
近年、デジタル技術の進展に伴い、AIを活用した分析が進められており、スキルマップにおいてもAIの活用が進むと予測されます。
データを基にした客観的な情報を意思決定に加えられるため、人材開発やキャリア開発など、スキルマップの活用においてもより精度の高い判断が効率よくできるようになるでしょう。
さらに、AI技術で蓄積された社員のスキルと業務の成果、評価などのデータを分析していけば、優秀な人材の傾向から高い潜在能力を持つ社員の発掘や、有効な育成方法なども把握できるようになります。
HRMOSタレントマネジメントの新機能「社内版ビズリーチ」では、AI技術を活用し、社員のポテンシャルを見える化して、最適な人材配置を実現します。
グローバル人材のスキルマッピング
経済・社会のグローバル化に伴い、語学力や異文化への理解、積極性、チャレンジ精神などを持ち合わせているグローバル人材のニーズが高まっています。
海外進出の際、現地の人を採用し、事業を進めるためには現地の言葉でコミュニケーションを図り、現地の文化も受け入れなければなりません。また、国内の労働力人口が減少していることから、日本においても外国人労働者の雇用機会が増えるでしょう。
将来に向け、あらゆるバックグラウンドを持つ人材を活用するダイバーシティマネジメントは、より重要な課題になると考えられています。したがって今後、スキルマッピングの項目には、異文化理解や語学力といった能力も加える必要が出てくるでしょう。
まとめ
社員のスキルを可視化するスキルマップは、社員の能力やスキルを表で一元管理できるため、個人の現在のスキルレベルや強み、弱みなどを把握しやすくするものです。
スキルマップを活用することで、適切な人材育成計画の策定が可能になるため、社員のキャリア形成を適切にサポートできます。また、社員のスキルを可視化できるため、社内に不足しているスキルが明確化し、戦略的に採用活動を進められるようにもなるでしょう。
大企業の多くもスキルマップを活用してタレントマネジメントを行っています。企業と社員のよりよい未来の実現を目指す際には、スキルマップの活用がおすすめです。
スムーズなスキルマップの導入にはシステムの活用がおすすめ
企業の成長は、社員の成長とともにあるべきと考える企業が増えています。社員のキャリア形成をサポートするためには、スキルマップを活用し、社員のスキルを的確に捉え、目指すキャリアの実現に必要な育成計画を提供する必要があります。
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