目次
2023年3月31日以降に事業年度が終了するすべての上場企業では、人的資本に関する情報の開示が義務化されました。
効果的な情報開示を行うには、問題点の洗い出しや人材戦略の策定など、経営戦略と連動した準備が求められます。
この記事では、経済産業省や金融庁から推奨される企業を含む、人的資本経営を実践する5社の事例を紹介します。
各社の事例は、人的資本を経営に活かし、企業価値を高めるためのヒントを与えてくれます。
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2020年9月に「人材版伊藤レポート」が発表され、注目を集めてきた人的資本経営の定義や、従来の人事管理との違いを解説します。
人的資本経営の定義と主なメリット
人的資本経営とは、「人」を中心に据え、企業価値の向上を図る経営手法です。経済産業省によると、人的資本経営では人材を「資本」と捉え、その潜在能力を最大限に活用することで、企業の中長期的な成長を図る経営のアプローチとされています。
アメリカなどの経済大国では、人的資本経営が積極的に進められており、日本政府もまた、国内企業のグローバル競争力強化を目指しています。
人的資本経営によるメリットとしては、経営戦略の円滑な実施、組織力の向上による持続的な成長、投資家やその他のステークホルダーへの成長可能性の提示などがあげられます。
これらのメリットのすべては、企業価値を高めるための重要な要素です。
そのため、開示義務を単なる義務と捉えるのではなく、企業の価値向上のための戦略的な人材戦略として積極的に取り組むことが望ましいといえるでしょう。
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従来の人事管理との違い
人事管理とは、企業の目標を達成するために人材(資源)を効率的に活用することです。人材を「資本」ではなく「資源」と捉える点で、人的資本経営との大きな違いです。
具体的な人事管理には、採用、人材育成、人事評価、人材配置、モチベーション管理などがあり、従来はこれらの人事管理をより効率的にミスなく行うことが重視されてきました。
人の潜在能力を引き出し、経営に生かしていく人的資本経営とは、目標達成までのアプローチ方法や視点が異なります。
人的資本と人的資源の違い
資源とはヒト・モノ・カネ・情報の経営資源の1つであり、企業が安定的に成長するためのリソースと解釈できます。
一方、人的資本経営では、人を「資本」と捉え、成長への投資対象と位置づけます。「人的資本」と「人的資源」のより詳しい違いについては、次の記事もあわせてご確認ください。
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人的資本経営情報の開示
2023年には、コーポレート・ガバナンスコードに基づき、上場企業に対して人的資本に関する情報の開示が義務付けられました。これにより、投資家への説明責任が明確になっています。
人的資本経営の情報開示の目的と、具体的な開示項目をご紹介します。
開示の意義と目的
コーポレート・ガバナンスコードとは、上場企業の経営状態を伝えて透明性を担保することで、投資家などステークホルダーの公平性や利益を考慮した枠組みを指します。
人的資本データの開示が義務化された背景には、それが企業価値を高める上で極めて重要な要素と位置づけられていることがあります。
2023年3月期から、プライム・スタンダード市場およびグロース市場を含むすべての上場企業において、有価証券報告書での人的資本に関する情報の開示が義務付けられました。
この義務化により、企業には人的資本を戦略的に活用し、持続的な企業成長と企業価値向上を実現する責任が求められています。
また、人的資本情報を積極的に開示することで、投資家やステークホルダーに対して企業の人材戦略や価値創出力をアピールし、信頼性を高める効果も期待されています。
具体的な開示項目
人的資本に関する情報開示が求められている主な内容は、次の3つです。
1つ目は「人材育成の方針や社内環境整備に関する方針」であり、企業が従業員の成長や働きやすさをどのように支援しているかを示すものです。
2つ目は「測定可能な目標とその達成戦略」です。人的資本の活用計画について、具体的な数値で示すことが求められます。
3つ目は「女性管理職比率」や「男性の育児休業取得率」、「男女間賃金格差」など、ダイバーシティ推進において重要な指標です。
これらの開示義務は、2023年3月31日以降に事業年度が終了するすべての上場企業に適用されています。
先進的な企業ではすでに対応が進んでおり、人的資本経営の取り組みが実践されています。
開示項目の詳細は、次の記事でも解説しています。
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人材版伊藤レポート2.0が示す人的資本経営の方向性
人的資本経営の情報開示や取り組み方は、「人材版伊藤レポート2.0」によって方向性が示されています。
経済産業省が主導する複数の研究会で座長を務めた、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄による「人材版伊藤レポート2.0」の概要を解説します。
レポートの概要
人材版伊藤レポート2.0とは、企業が人的資本経営を実現するための指針を示した報告書です。経営環境が急速に変化する中で人材を「資本」として捉え、その価値を高める手法を紹介しています。
中でも、経営戦略と人材戦略を一体化させることの重要性を説いており、人事戦略を企業文化として定着させることの重要性にも言及しています。
当レポートでは、経営者のリーダーシップや人材ポートフォリオの整備、多様性を重視した人材育成など、具体的な取り組み事例も紹介されています。
そのため、人的資本経営に取り組もうと考える企業のガイドラインとして、多くの人から注目を集めました。
主要な提言
人材版伊藤レポート2.0では、以下の7項目が提言されています
- 経営戦略と人事戦略の連動性
- As Is – To Beギャップ
- 企業文化への定着の取り組み
- 動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョンの推進
- リスキル・学び直しへの取り組み
- 社員エンゲージメントを高めるための施策
これらの提言は、企業が人的資本経営を実現し、持続的な競争優位を築くための指針となっています。
こうした取り組みを戦略的に進めることで、変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応できる、しなやかで強い組織づくりが可能になります。
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多くの上場企業が、統合報告書やCSRレポート、ディスクロージャー誌やWebサイトなどを通じて、人的資本に関する情報を公開しています。
特に注目すべきは、経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート2.0実践事例集」や金融庁が公開している「記述情報の開示の好事例集2022」です。これらのレポートでは、人的資本経営に先進的に取り組んでいる企業の事例を確認できます。
本記事では、これらの中から特に推奨されている5つの企業を事例として紹介します。これらの事例を参考にすることで、企業が人的資本の情報をどのように活用し、経営に組み込んでいるのかを理解する手助けとなるでしょう。
旭化成株式会社:持続可能な成長のための人材活用
旭化成株式会社は、経営戦略と人材戦略の統合において、人的資本経営の優れた実践例としてあげられます。
同社は、化学製品の製造からマテリアル、住宅、ヘルスケア分野への事業展開を進めており、その多角化された経営戦略を、以下に紹介する2つの効果的な人材戦略と連携させているのです。
旭化成株式会社の人材戦略1:経営戦略に合わせた人材ポートフォリオの策定
人材ポートフォリオとは、社内の人材の配置や特性を分析し、経営戦略と連動させた計画を立てることです。
旭化成では、事業の方向性と機能面を考慮に入れ、年に1度の全社的な人材ポートフォリオの評価を行っています。
旭化成株式会社の人材戦略2:多様な手段による人材確保
旭化成株式会社では、人材を確保する手段として、M&A、新卒採用、中途採用、社内育成などをバランスよく取り入れているのが特徴です。
特に、社員のリスキル(再教育)に力を注ぎ、デジタル分野の専門家育成においてはレベル別の目標を設定しています。これにより、社内での育成を活用し、新規採用に頼らない効率的な人材戦略を実現します。
旭化成は自社の経営戦略を見直し、必要な人材ポートフォリオを明確化しています。
これにより、採用やリスキルなどの具体的な戦略が明確になると同時に、人材育成方針の開示義務にも対応することが可能です。これは、企業価値を高めるための人的資本経営の模範的な例といえるでしょう。
キリンホールディングス:グローバル競争における人的資本の活用
キリンホールディングスは、人的資本を「価値創造と競争優位の源泉」と位置づけて、専門性と多様性を兼ね備えた人財育成を行っています。
特に、非財務目標に関する情報開示において、具体性と細部にわたる目標設定が注目されています。例えば、多様な人材の活躍を推進するため「多様性向上」達成度として「日本国内 女性経営職比率」を10.2%から2024年度には15%に、「日本国内 キャリア採用比率」を26.8%から30%を目指すことを目標として掲げました。
他にも、DE&IやLGBTQ+の支援、健康経営にも幅広く取り組み、持続的な企業価値の向上を目指しています。
人的資本経営のポイント2:目標達成のための実行可能な戦略の提示
しかし、2023年の調査では女性管理職比率が12.7%、キャリア採用比率が26.8%です。そのために、女性リーダーの育成研修、ダイレクトリクルーティングの拡大、新規採用者のオンボーディングの強化など、目標を達成するための戦略が具体的な取り組みとして提示されています。
組織の現状と目標を明確にすれば、両者のギャップを埋めるための戦略が立てやすくなります。また、目標と戦略を社外に開示することは、ステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。
このように、キリンホールディングスの事例は、企業価値の向上やグローバル競争力の強化における、人的資本経営の重要性を端的に示しています。
丸井ホールディングス:自主性を軸に顧客満足を追求
丸井ホールディングスは、独自性を持ちながらも、他社の一般的な指標と比較可能な形で人的資本経営を実践しています。
経済産業省の人的資本可視化指針にもとづいて、同社は独自の指標を設定し、以下に紹介するように従業員の自主性を促進する体質の構築に取り組んでいるのです。
自主性を促す体質の構築1:「手挙げ」文化の育成
丸井ホールディングスでは、従業員が主体性を持って行動する「手挙げの文化」を10年以上かけて育てています。
この文化により、企業理念に関するディスカッションやプロジェクト参加の機会が提供されています。また、「手挙げ比率82%」という独自の指標も開示しているのが特徴です。
自主性を促す体質の構築2:「職種変更」の推進
丸井ホールディングスでは、職種変更の推進によって従業員がさまざまな部門や会社で経験を積むことが奨励され、個々の多様性の促進が可能です。
2022年時点で77%の従業員が職種変更を経験し、86%が異動後に成長を実感したというデータも公表されています。
これらの取り組みは、社内の人的資本の活用を高め、企業価値の向上に寄与しているといえるでしょう。
独自の人材戦略を通じて、社外の投資家からも評価される経営が実現されているのです。丸井ホールディングスの事例は、人的資本経営がいかに企業の成長と顧客満足に貢献するかを示しています。
SOMPOホールディングス:社会的責任と人的資本の融合
SOMPOホールディングスは、人的資本に関する情報開示で、独自性と比較可能性の双方を兼ね備えた事例として際立っています。
さまざまな側面からの情報開示を通じて、他社と比較しつつも独自の特色を明確にしているのです。
たとえば、「MYパーパス研修受講率」や「従業員エンゲージメント率」、「健康経営に関連する生産性指標(WLQ)」、「女性役員比率」などが開示指標として挙げられます。
ほかに開示されているのは、「外国籍役員比率」「サクセッションプランにおける女性候補者比率」「障がい者雇用比率」などの情報です。
開示指標の多さは、モニタリングやサーベイのコストを伴います。
しかし、それによって企業内外のステークホルダーとのコミュニケーションが強化され、人材戦略や企業価値向上のための戦略策定にも大いに役立つでしょう。
また、SOMPOホールディングスでは、従業員への定期的なサーベイが重視されています。たとえば、従業員エンゲージメント率のような指標が、定期的なサーベイによって得られるためです。
このようなSOMPOホールディングスの取り組みは、社会的責任と人的資本経営を統合する代表的なモデルとして注目されています。
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アサヒグループホールディングス:革新的な経営戦略と人的資本
アサヒグループホールディングスは、組織の課題を公開することで、経営の革新性と成長の可能性を示している事例として注目されています。
経営者が自社の課題をあえて公開することは、大胆で戦略的な判断といえるでしょう。
しかし、自社の課題を明らかにすることは、企業の透明性と成長への本気度を示す有効なステップです。
たとえば、エンゲージメントサーベイを実施することで、特定の分野での業界基準を上回る成果とともに、イノベーションや業務効率において改善の余地があることを認めています。
このように課題を明らかにすることは、組織の改善点が明確になり、適切な改善戦略を策定するきっかけとなるでしょう。
企業が自社の課題を公開することは、一見リスクに思えるかもしれません。
しかし、実際には戦略的な開示を通じて、社外ステークホルダーを巻き込んだ経営を実現するチャンスとなり得ます。アサヒグループホールディングスの事例は、人的資本と経営戦略の統合が、企業価値の向上にどのように寄与するかを示しているのです。
5つの企業事例からわかる人的資本経営の理念と実践
これまでに紹介した5つの企業の人的資本経営におけるアプローチを振り返ると、共通して読み取れる、3つの人的資本経営の実践的な特徴です。
- 経営戦略と連動した人材戦略の構築
- 独自性と比較可能性を両立させた指標の設計・開示
- 組織課題の明示と、それを通じた成長力の可視化
これらの共通点から、人的資本経営の本質は「人材の潜在的価値を最大限に活用し、その結果として企業価値を高めること」といえるでしょう。
こうした視点を企業活動に組み込むことで、ビジネスの成長と組織の成熟が相互に作用し、持続的に発展する強固な組織基盤の構築が可能になります。
各企業の取り組みは、人的資本経営がどのように企業価値向上に貢献しているかを示しています。
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テクノロジーと人的資本の統合:デジタル化時代の人材育成戦略
デジタル化が進む現代において、テクノロジーと人的資本の統合は企業経営の重要課題です。なかでも人材育成戦略は、企業価値の向上と持続的成長に直結する鍵といえます。
この統合に対する基本的な考え方は、テクノロジーを活用して人材の能力を最大限に引き出し、企業のイノベーションと効率化を推進することといえます。
たとえば、AIやデータ分析ツールを活用することで、従業員の業務効率が向上し、創造的な仕事により多くの時間を割くことができるでしょう。
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デジタル技術の導入によるモチベーションと生産性の向上
デジタル技術の導入により、従業員はルーティンワークから解放され、より戦略的な業務や創造的な業務に注力できます。
これにより、従業員のモチベーションの向上とともに、企業全体の生産性の高まりが期待できるでしょう。また、デジタル技術の活用は、人材のスキル開発にも役立ちます。
たとえば、eラーニングプラットフォームやオンライン研修システムを活用することで、従業員は、自分のペースでスキルを習得でき、学びやすい環境を得られます。
こうした学習機会の提供は、従業員のキャリア成長を支援し、長期的な企業の成功に貢献します。
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デジタル技術による人材管理の革新
デジタル技術は、人材管理にも革新をもたらしています。
なぜなら、人事システムをデジタル化することで、人材データの分析が容易になり、より効果的な人材戦略の策定が可能になるからです。
従業員のパフォーマンスやスキルセットを正確に把握することで、適切な人材配置や育成プログラムの設計が行えます。一方で、テクノロジーと人的資本の統合においては、デジタルスキルだけでなく、ソフトスキルの育成も重要です。
コミュニケーションスキルや問題解決能力、クリエイティブ思考などのソフトスキルは、テクノロジーの進化にかかわらず重要な資質です。
これらのスキルを育成することで、従業員は変化に柔軟に対応し、新しいチャレンジに取り組むことができるでしょう。
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デジタル化時代における企業体質変革の必要性
デジタル化時代の人材育成戦略には、企業体質の変革も必要とされます。テクノロジーの導入は、単にツールを提供するだけでは不十分であり、テクノロジーを使いこなす企業文化が求められます。
従業員が、新しいツールを積極的に活用して変化を受け入れるためには、企業体質の改革は必須です。オープンマインドとイノベーション志向の文化を育むことが、デジタル化成功のカギとなります。
デジタルトランスフォーメーションにおけるリーダーシップの重要性
デジタル化時代の人材育成戦略は、従業員のニーズと企業の目標の両方を満たす必要があります。
従業員にはキャリアの成長とスキルアップの機会を提供し、企業には競争力の強化とイノベーションの促進をもたらすことが重要です。
このバランスを取ることで、従業員のエンゲージメントを高め、企業価値の向上に寄与できます。そのためには、デジタルトランスフォーメーションにおけるリーダーシップが重要といえるのです。
経営層やリーダーは、デジタル化の方向性を示し、従業員を支援して、新しいテクノロジーの導入を進める役割を担います。
リーダーによる積極的な支援と明確なビジョンの提示が、組織全体のデジタル変革を後押しし、人的資本の価値を最大限に活かす原動力となります。
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デジタル時代における競争力の維持と企業の成長
テクノロジーと人的資本の統合には、継続的な投資が必要です。
なぜなら、技術は日々進化を続けており、企業はそれに合わせてテクノロジーの導入と従業員のスキルアップを継続的に行うことが求められます。
このような継続的な投資と努力によって、企業はデジタル時代における競争力を維持し、持続可能な成長を遂げることができます。
デジタル化時代の評価・報酬システム
デジタル時代において、人事評価や報酬制度は、よりデータドリブンな形へと進化しています。
人事担当者や管理職任せの、属人的な人事評価が続くと、従業員の納得感が得られず、モチベーションの低下や離職の原因となる可能性があります。
そこで注目されているのが、タレントマネジメントシステムを活用した人事評価や報酬制度設計です。
タレントマネジメントシステムで、一人一人の従業員のパフォーマンスをより正確に把握し、公平で効果的な評価が可能になります。
その結果、従業員のモチベーション向上や生産性の改善が期待でき、企業価値の向上にも寄与するでしょう。
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テクノロジーを活用したウェルビーイングの向上
デジタル化が進む現代において、従業員のウェルビーイング向上は、持続可能な経営の鍵となっています。
テクノロジーを活用することで、健康管理や働き方改革を支援し、従業員の満足度を高める取り組みが可能です。
たとえば、リモートワーク環境を整備するためには、さまざまなITツールやテクノロジーが不可欠です。
また、健康管理アプリを活用すれば、日々の体調データをもとに従業員自身が健康維持に努めることができ、企業としても予防策を講じやすくなるでしょう。
このように、テクノロジーと人的資本の統合は、デジタル時代における企業成長の中核といえます。戦略的な人材育成と継続的な技術投資によって、企業は競争優位性を獲得し、持続可能な成長を実現できるでしょう。
国際市場における人的資本経営:多文化環境での人材管理と開発
グローバル化が進む中、国際市場での人的資本経営は、企業が直面する主要な課題の1つといえます。
特に、多文化環境での人材管理と育成は、企業価値の向上と国際競争力の強化に欠かせません。
国際市場での成功を目指す企業にとって、異なる文化背景を持つ従業員の能力を最大限に引き出し、効果的に統合することが求められます。
多文化環境では、さまざまな文化や言語、価値観の違いが存在しますが、これらの多様性は新たなアイデアや視点をもたらし、イノベーションの源泉となるでしょう。
異文化交流プログラムと国際競争力の強化
多文化環境での人材管理においては、まず、従業員間のコミュニケーションにより理解を深めることが重要です。
言語の障壁や文化的な誤解を避けてオープンで受容的な職場環境を作ることは、従業員が安心して意見を交換し、協力して働くことにつながります。
また、異文化間の対話を促進することで、従業員は互いの文化を尊重し、相互理解を深めることができるでしょう。
さらに、多文化環境での人材開発には、各従業員の独自のスキルと潜在能力を見極め、これらを企業の戦略と統合することが求められます。
たとえば、グローバルな視野を養うために、異文化交流プログラムや海外研修を導入する企業も増えています。
これらの施策を通して、従業員は異なる市場や顧客層への理解を深め、より効果的なビジネス戦略を構築できます。
国際市場での競争力を高めるには、多様なバックグラウンドを持つ従業員のアイデアやスキルを統合し、組織全体でシナジー(相互作用)を生み出すことが重要です。
また、異文化や市場への理解が深まることで、より幅広い顧客層にも対応できるようになります。
多様性によるエンゲージメントの向上と新たなビジネスの創出
多文化環境での人材管理と育成は、企業が社会的責任を果たすうえでも重要です。
多様性を重視する姿勢は、企業が公平で包括的な職場を提供する社会的存在であることを示すからです。
これにより、企業は社内外のステークホルダーからの信頼を得ることができます。また、多様性のある職場は、従業員の満足度とエンゲージメントを高め、長期的には離職率の低下にもつながることが期待できるのです。
人的資本経営の視点からも、多文化環境での人材管理は、グローバル競争を勝ち抜くうえで不可欠な戦略です。
なぜなら、異なる文化や背景を持つ従業員が持つユニークな視点やアイデアは、新たなビジネス機会を生み出す可能性を秘めているからです。
そのため、企業は、従業員がそのポテンシャルを十分に発揮できるように、環境整備や研修、キャリア開発の機会を提供することが求められます。
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多文化環境における企業価値の向上
国際市場での成功を目指す企業にとって、多文化環境での人材管理と開発に投資することは、長期的な企業価値の向上につながります。
なぜなら、このような取り組みを通じて、企業はグローバルな視野を持ち、文化的な違いを乗り越えて世界各地の市場での成功を目指すことが可能となるためです。
また、多文化環境での経験を積んだ従業員は、より多角的な問題解決能力を身につけ、企業の柔軟性と適応性を高める貴重な資産となるでしょう。
国際市場における人的資本経営の実現には、多文化環境での人材育成に継続的に取り組むこと、そして、それを支える組織体質と戦略の構築が求められます。
多文化環境での人材戦略は、単なる対応策ではなく、企業の成長と社会的価値創出の基盤です。これを戦略的に実践することが、グローバルな人的資本経営の本質といえるでしょう。
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人的資本経営の未来展望:持続可能な発展のための革新的アプローチ
持続可能な発展に向けて、革新的なアプローチに注目することは、これからの人的資本経営における重要な課題です。
なぜなら、このアプローチによって、従業員の能力と潜在性を最大限に活用し、企業価値の向上を目指すことができるからです。
人材戦略の策定においては、従業員の多様性を認識し、それぞれのスキルや才能を企業の成長に結びつけることが重要といえます。これは、多様なバックグラウンドを持つ従業員から新しいアイデアや解決策が生まれることで、企業のイノベーションが促進されることが理由です。
また、デジタル技術の進化に伴い、テクノロジーを活用した人材育成が重要になります。たとえば、eラーニングやバーチャルリアリティを使用したトレーニングプログラムは、従業員のスキルアップと効率的な学習を可能にするでしょう。
さらに、社会的責任を果たすことも人的資本経営の重要な側面です。企業は多様性と包摂性を促進し、公正な職場環境を提供することで、社会全体の進歩への貢献が期待できます。
そして、これは企業のブランド価値を高め、ステークホルダーとの関係を強化することにもつながります。
これらのことから、人的資本経営の未来展望には、革新的で包括的なアプローチが必要であるとわかるでしょう。これにより、企業は変化に柔軟に対応し、持続的な競争優位を確立できます。
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まとめ
本記事では、人的資本経営の重要性と、それを実現させるための実践的な取り組みを解説してきました。
旭化成やキリンホールディングスなどの企業の事例を通じて、人材育成、多文化環境での挑戦、デジタル化との統合など、経営の各面での革新的なアプローチも紹介しています。
これらの事例から、人的資本経営は単なるビジネス戦略ではなく、企業の未来を形作る重要な基盤として機能することが理解できるでしょう。
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