みなし残業代の正しい計算方法とは?違法にならない手順と注意点を解説

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みなし残業代の正しい計算方法とは?違法にならない手順と注意点を解説

目次

  1. みなし残業代の基本概念と正しい計算方法
  2. 具体的なみなし残業代の計算手順
  3. みなし残業代を計算する際の重要な注意点
  4. みなし残業制を導入する際の就業規則ルール
  5. まとめ

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みなし残業代の設定に不安を感じている人事労務担当者や経営者の方に向けて解説します。この記事では、みなし残業代(固定残業代)の計算手順や、基礎賃金の求め方について詳しく解説していきます。
読み終わると、自社に合った適切な給与計算ができるようになり、労働基準法違反や労務トラブルを未然に防ぐことが期待できます。みなし残業代を正しく運用するには、基本給と固定残業代を明確に分離し、適切な計算式を用いて算出することが重要です。

みなし残業代の基本概念と正しい計算方法

みなし残業代とは、あらかじめ決められた一定時間の残業を行うことを見込んで、定額で支払われる割増賃金のことです。固定残業代と呼ばれることも多く、給与計算の手間を省く目的で広く導入されています。
ただし、みなし残業代の正しい計算方法を理解しないまま運用すると、知らないうちに未払い賃金などの労働基準法違反が生じる可能性があるため注意が必要です。

みなし残業代の計算に必要な基礎知識

みなし残業代を計算するためには、いくつかの基準となる数値を正確に把握しなければなりません。まずベースとなるのは従業員に支払う月給ですが、この月給の全額がみなし残業代の算定基礎となるわけではありません。
毎月固定で支払われる金額のなかから、労働基準法に限定列挙された手当を除外した金額を「基礎賃金」と呼びます。この基礎賃金を、一ヶ月あたりの平均所定労働時間で除して、「一時間あたりの賃金」を算出します。
そこへ労働基準法で定められた割増率と、一ヶ月に想定する残業時間数を掛け合わせることで、みなし残業代の金額が算出されます。割増率は通常、時間外労働であれば二割五分増し(一・二五倍)となります。

みなし残業代の計算に必要な要素 概要と意味合い
基礎賃金 月給から法律で除外が認められている手当を差し引いた金額
月の平均所定労働時間 年間の所定労働日数をベースに、一ヶ月あたりの平均労働時間を算出したもの
割増率 時間外労働に対する法定の割増率(通常は一・二五倍)
固定残業時間 一ヶ月の見込み残業時間数

基礎賃金を算出するための対象外手当

基礎賃金を算出する際、どのような手当でも月給から自由に除外できるわけではありません。労働基準法には、労働と直接的な関係が薄いとされる一部の手当のみが、割増賃金の基礎となる賃金から除外できると規定されています。
具体的には、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7種類の手当が限定列挙されています。
これらは例示ではなく限定列挙であるため、ここに該当しない手当は、たとえ労働と関係が薄いように見えても、すべて割増賃金の基礎に算入しなければなりません。ただし、名称が家族手当であっても、扶養家族の有無に関わらず一律で支給されているような場合は除外できません。
実態として個人の事情に応じて支払われている手当のみが除外可能となるため、割増賃金の計算に際しては、自社に導入される各種手当の定義や運用状況を慎重に確認する必要があります。
また、臨時に支払われる結婚手当や、一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与なども基礎賃金には含まれません。

除外できる手当の例 除外が認められる条件や実態
家族手当 扶養家族の人数に応じて支給されていること(一律支給は不可)
通勤手当 実際の通勤距離・実費(定期代等)に応じて支給される部分が除外対象。距離にかかわらず一律に支給される部分は除外できない
住宅手当 家賃の負担額に応じて支給されていること(一律支給は不可)
臨時に支払われた賃金 結婚手当など、臨時的・突発的な事象に対して支払われるもの(賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金も同様に除外対象)

参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金」

具体的なみなし残業代の計算手順

ここからは、実際にみなし残業代を計算するための具体的な手順について解説します。計算は大きく分けて三つのステップで進行します。数字を一つでも誤ると給与額全体に影響するため、順を追って正確に計算を進めていくことが大切です。

計算のステップ シミュレーションの具体例(金額・数値)
①平均所定労働時間 (365日-125日)×8時間÷12ヶ月=160時間
②一時間あたりの賃金 (20万円+4万円)÷160時間=1,500円
③固定残業代の算出 1,500円×1.25×30時間=56,250円

月の平均所定労働時間を求めるステップ

最初のステップは、一ヶ月あたりの平均所定労働時間を求める作業です。一ヶ月の日数は月によって異なるため、年間の総所定労働時間を十二ヶ月で割って平均を出します。
まずは一年間の暦日数である三百六十五日(うるう年の場合は三百六十六日)から、会社が規定する年間休日数を差し引きます。この計算で出た数字が「年所定労働日数」となります。次に、その年所定労働日数に、一日の所定労働時間数(たとえば八時間など)を掛け合わせます。
これで一年間に働くべき総労働時間が算出されるので、最後に十二で割ると「月平均所定労働時間」が求められます。年間休日数や一日の所定労働時間は企業ごとに異なり、就業規則に規定されているため、自社の規定を確認してから計算を進めましょう。

監修者コメント
カレンダーの曜日配列や祝日、うるう年の有無によって、実際の年間出勤日数や年間休日数は年によって変動します。よって、年所定労働日数や年間休日数等は毎年見直しを行うか、年所定労働日数を固定して年ごとの変動が生じないようにする等の対応が必要になります。

一時間あたりの基礎賃金を求めるステップ

続いて、一時間あたりの基礎賃金を計算します。基礎賃金とは、基本給や各種手当の合計額から、法律で除外が認められている手当を引いた「基礎賃金」のことです。計算方法は非常にシンプルで、算出した基礎賃金を、前のステップで求めた一ヶ月の平均所定労働時間で割るだけです。
たとえば基礎賃金が二十四万円で、平均所定労働時間が百六十時間であれば、一時間あたりの基礎賃金は千五百円となります。この数字は残業代の土台となる重要な時間単価となるため、正確に算出する必要があります。
基本給の昇給や支給される手当の追加があった場合には、必ず計算し直さなければなりません。昇給後に一時間あたりの基礎賃金が上がったにも関わらず、固定残業代を据え置いたままにすると、未払い残業代発生の原因となります。

みなし残業代の金額を確定させる計算シミュレーション

最後のステップとして、一時間あたりの基礎賃金をもとにみなし残業代の支給額を確定させます。計算式は「一時間あたりの基礎賃金×一・二五(割増率)×設定したい固定残業時間数」となります。具体的な計算シミュレーションを用いて確認してみましょう。
年間休日が百二十五日で一日の所定労働時間が八時間の場合、年間の所定労働日数は二百四十日となります。これに八時間を掛けて十二で割ると、一ヶ月の平均所定労働時間は百六十時間です。
対象となる従業員の基本給が二十万円、役職手当が四万円、通勤手当が一万円支給されていると仮定します。このうち通勤手当は法律上除外が認められているため基礎賃金から差し引けますが、役職手当は除外が認められた手当ではないため基礎賃金に算入します。
したがって基礎賃金の合計は「基本給20万円+役職手当4万円=24万円」となります。二十四万円を百六十時間で割ると、一時間あたりの基礎賃金は千五百円です。
仮にみなし残業時間を三十時間と設定する場合、千五百円に一・二五倍を掛け、さらに三十時間を掛けることで、五万六千二百五十円が固定残業代の金額として算出されます。

【関連記事】固定残業代の計算ルールを再確認!深夜・休日割増を含めても問題ない?-労務ジャーナル

みなし残業代を計算する際の重要な注意点

みなし残業代の計算自体は公式に当てはめれば難しくありませんが、運用においては法的な注意点を遵守する必要があります。ここでは企業が必ず確認すべき二つのポイントについて解説します。

みなし残業代運用の注意点 具体的なチェック内容や対策
最低賃金のクリア 基本給÷平均所定労働時間が最低賃金を上回っているか確認する
超過残業代の支払い 設定時間を超えて行われた残業に対して、毎月必ず差額を追加支給する

最低賃金を下回らないための確認作業

みなし残業代を計算する際に見落としがちなのが、最低賃金法への抵触です。前述のみなし残業代の計算を適切に行っていないために、固定残業時間数とみなし残業代が適当に設定されているケースは意外にも多く見受けられます。
また、基本給とみなし残業代が明確に区別されていないために、固定残業時間数とみなし残業代から逆算した基礎賃金が著しく低額になる事例もあります。みなし残業代を除外した基礎賃金を、月平均所定労働時間で割った一時間あたりの単価が最低賃金を下回っていてはなりません。
なお、最低賃金の比較では、固定残業代などの割増賃金のほか、労働に直接関係がない、もしくは臨時的に支払われる手当を除外して検討します。具体的には、精皆勤手当・通勤手当・家族手当等が除外対象となります。
また、最低賃金が改定されて引き上げられた場合、過去に計算した基本給が気づかないうちに最低賃金割れを起こしていることがあります。この場合、当然のことながら、みなし残業代の算定にも誤りが生じます。
毎年秋の最低賃金改定時期には、すべての従業員の基礎賃金やみなし残業代が基準を満たしているか、確認体制を整えることが重要です。

監修者コメント
最低賃金には、都道府県ごとに設定される「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに設定される「特定(産業別)最低賃金」があります。地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が同時に適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用されます。
参考:https://saiteichingin.mhlw.go.jp/table/page_indlist_nationallist.html

固定残業時間を超過した分の割増賃金支払い

みなし残業代を考える上で最も誤解されやすい点が、みなし残業代を支払っていればそれ以上残業代を払わなくてよいという勘違いです。あらかじめ設定したみなし残業時間を超えて従業員に労働させた場合、企業にはその超過分に対して追加で割増賃金を支払う義務があります。
たとえば三十時間分のみなし残業代を支給している従業員に対して、実際には月四十時間の時間外労働を行わせたとします。この場合、差額である十時間分の割増賃金を追加で支払わなければなりません。
超過分の未払いは労働基準法違反となる他、会社は退職した従業員から未払い残業代として過去に遡って請求されるリスクを抱えることになります。そのため、みなし残業制を導入していてもタイムカードや勤怠管理システムを用いた正確な労働時間の把握が求められます。

みなし残業制を導入する際の就業規則ルール

正しい計算方法と運用ルールを理解したら、それを自社の制度として規定する必要があります。みなし残業制を導入するためには、就業規則や労働条件通知書への正確な記載が求められます。労働者との合意形成を疎かにすると、のちのち大きな労務トラブルに発展しかねません。

基本給とみなし残業代の明確な分離

就業規則や雇用契約書において、基本給とみなし残業代は誰が見ても区別できるように明確に分けて記載しなければなりません。「月給三十万円(残業代を含む)」といった曖昧な表記は、どの部分が基本給でどの部分が残業代なのか判別できないため無効と判断される可能性が高いです。
厚生労働省指針でも、固定残業代を除いた基本給の額と、固定残業代の金額およびそれに相当する時間数を明記するよう求められています。さらに、設定した固定残業時間を超過した場合には追加で残業代を支払う旨もあわせて記載することが条件とされています。
給与明細上でも手当の項目をしっかりと分け、従業員自身が残業単価や固定残業時間数をいつでも確認できる状態を作ることが大切です。

監修者コメント
固定残業時間数の設定には、労働基準法の定めを踏まえた検討が不可欠です。労働基準法上の原則的な時間外労働時間数の上限は「月45時間」であり、これを超える時間外労働は「年6回まで」とされています。よって、例えば「月60時間」を毎月の固定残業時間数として設定することは違法性が高いと判断されます。
参考:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示を」
【関連記事】【陥りやすい具体例で解説】「知らず知らずの未払い残業」の発生を防ぐには?-労務ジャーナル

医療法人康心会事件の裁判事例

みなし残業代の明示が不十分だったために、企業側が敗訴した実際の事例について解説します。最高裁判所の判例である「医療法人社団康心会事件(最高裁第二小法廷平成二十九年七月七日判決)」は、固定残業代の有効性が争われた有名な事例です。
この裁判では、勤務医の年俸(1700万円)のなかに時間外労働等の割増賃金を含める旨の合意があったものの、年俸のうち割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分とを判別できないと判断されました。
その結果、年俸に含めるとされた割増賃金は支払われたと認められず、労働者の請求を退けた原判決は破棄・差戻しとなりました。実質的に企業側が敗訴した形となり、未払い割増賃金の支払いを負う結論となっています。
この事例からも分かるように、単に「残業代を含む」とするだけでは法的な効力は持ちません。通常の賃金とみなし残業代を明確に区分し、その詳細を書面に記載しておくことが不可欠です。

参考:東京弁護士会LIBRA「近時の労働判例高報酬の勤務医に関する固定残業代の合意の有効性(労基法37条違反性)」
【関連記事】労基署による臨検で未払い残業代が発覚!精算は何年遡る必要がある?-労務ジャーナル

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • みなし残業代の計算には月平均所定労働時間と基礎賃金の正確な算出が求められます
  • 違法性を問われないためには基本給と残業代を明確に区分し就業規則や労働条件通知書へ記載する必要があります
  • 固定残業時間を超過した分の割増賃金は必ず別途支払わなければなりません

みなし残業制導入企業においては、自社の計算式や運用状況が適切かを見直し、法に則った労務管理を実現していきましょう。

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HM人事労務コンサルティング 代表 社会保険労務士 丸山博美

監修者

HM人事労務コンサルティング 代表 社会保険労務士 丸山博美

起業したての小さな会社支援を得意とする社労士事務所、HM人事労務コンサルティング代表・丸山と申します。 創業当初の事業主様に不足しがちな「経験」「人脈」「知識」を、 社会保険労務士という立場からサポートいたします。
労務関連の手続きやご相談、就業規則作成、助成金申請・・・等々、どんなことでもお気軽にご相談ください!東京はもちろん、日本全国からのご依頼に対応させていただきます。

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