「年末だから仕方ない」で済ませない!心と身体を壊す過重労働の実態と長時間労働防止対策を知る

労働基準法 残業
「年末だから仕方ない」で済ませない!心と身体を壊す過重労働の実態と長時間労働防止対策を知る

目次

  1. 増加する過労死等労災と精神障害 企業に求められる過重労働防止の徹底
  2. 企業が検討すべき、年末の長時間労働防止策のポイント
  3. 番外編:小規模事業場のメンタルヘルス対策に、積極活用したい「産業保健総合支援センター」

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早いもので、2026年も年末の気配が感じられる時期を迎えています。労務管理の観点では、一年の終わりといえば、いずれの企業においても労働時間の長時間化が問題となる傾向にあります。
過度な長時間労働は、脳・心臓疾患や精神障害の発症の原因となり、これら健康障害の深刻化によって死に至ることもあります。11月の過労死等防止啓発月間を契機に改めて過労死等防止の重要性を意識し、年末の長時間労働防止対策の検討を進めてまいりましょう。

増加する過労死等労災と精神障害 企業に求められる過重労働防止の徹底

「過労死等」の定義を法律上初めて規定した過労死等防止対策推進法が2014年11月に施行されて以降、政府は毎年11月を「過労死等防止啓発月間」に定め、過重労働解消、過労死等の防止に向けたシンポジウムやキャンペーン等の取り組みを行っています。
企業側として留意すべきは、キャンペーン期間中に実施される重点的な監督指導です。主に、これまでに過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場、労働者から労働局などに相談のあった事業場が対象となります。
監督指導では、毎年多くの事業場で、是正指導が行われています。

参考:政府広報オンライン「過労死等防止啓発月間」

過労死等に関する労災補償請求件数は増加傾向。とりわけ「精神障害」で過去最多

ところで、私が社労士として様々な企業でお話を伺う限り、「過労死」といっても身近な問題として捉えられていないケースを散見します。
しかしながら、過労死は、近年いずれの現場においても生じ得る労務課題です。
厚生労働省の統計では、過労死等に起因する労災認定数は、近年増加傾向にあることが示されています。
2025年度における過労死等に関する請求件数は6,212件 (前年度比1,402件増)、支給決定件数は1,310件 (前年度比5件増)と、いずれも大幅に増加していることが分かります。
支給決定件数についてより詳細に見ていくと、脳・心臓疾患に関する事案では217件で前年度比24件の減少、一方で精神障害に関する事案では1,082件で前年度比26件の増加となっています。
後者に関しては請求件数でも前年度比1,178件の大幅増であり、7年連続で過去最多を更新しています。
過労死等関連での労災事故件数増加の実態に鑑みれば、いずれの企業においても、過労死等の原因となる過重労働の防止に努めるべきであることは当然と言えましょう。

参考:厚生労働省「令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します」

「過労死等」「過重労働」の定義を正しく理解

企業における過重労働防止策を検討するのに先立ち、まずは「過労死等」やその原因となる「過重労働」とは具体的に何を指すのか、正しく理解しておきましょう。

○ 過労死等
過労死等防止対策推進法第2条において、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されています。

○ 過重労働
法律上明確な定義はありませんが、長時間に及ぶ時間外・休日労働や連続勤務、身体的負荷を伴う業務への従事により、労働者の身体・精神に大きな負荷がかかる働き方を指します。
長時間労働については、厚労省がいわゆる「過労死ライン」として「月100時間超」「2~6ヵ月平均で月80時間」の時間外労働の目安が示しており、労災認定時に重視されています。
また、2021年9月15日より、過労死認定基準が改正され、新たに以下の項目が認定基準に追加されました。


・ 過労死ラインに満たない場合でも、これに近い時間外労働を行った場合は、「労働時間以外の負荷要因」を考慮し、業務との関係が強いと評価・労災認定が可能に。
・ 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因の見直し(「労働時間以外の負荷要因」とは、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、事業場外における移動を伴う業務、心理的負荷を伴う業務(内容の拡充)、身体的負荷を伴う業務)
・ 業務と発症との関連性が強いと判断できる場合の明確化(「短期間の過重業務」「異常な出来事」に係る例示の明記)
・ 脳・心臓疾患の対象疾病に「重篤な心不全」を追加

関連:労務ジャーナル「2021年9月15日運用開始!20年ぶりの改正となる過労死認定基準」

企業が検討すべき、年末の長時間労働防止策のポイント

年末の繁忙期における長時間労働は、過労死等に起因する労災事故を誘発するリスク要因となり得ます。今年も12月を目前に控え、企業においては「労働時間・業務の可視化」「健康管理体制の強化」「残業抑制への取り組み」等の長時間労働防止策に目を向ける必要があります。
まずは実施可能な取り組みから着手してまいりましょう。

〇 労働時間・業務の可視化
・ 11月~12初旬の段階で業務スケジュールの調整を行い、年末の業務集中を回避する
・ 勤怠管理システムを活用し、各部署・各人の残業時間を正確に把握する
・ 特定の部署や従業員に業務が集中していないか確認し、業務分担や応援人員の配置を見直す

〇 健康管理体制の強化
・ 監理監督者や衛生管理者等による巡視を強化し、従業員の健康状態を直接確認する
・ 勤務シフトを見直し、適切な休息時間の確保ができるようにする

〇 残業抑制への取り組み
・ 残業を事前申請とし、管理監督者による業務量や残業時間の確認・管理を可能とする
・ 所定の時刻に、オフィスの一斉消灯を行う

番外編:小規模事業場のメンタルヘルス対策に、積極活用したい「産業保健総合支援センター」

長時間労働は、睡眠不足や疲労の蓄積を引き起こし、うつ病などのメンタルヘルス不調のリスクを大幅に高めます。年末の繁忙期には、長時間労働防止策と併せて、従業員のメンタルヘルスケアを講じることも重要です。
とはいえ、小規模事業場では「従業員のメンタルヘルスケアと言っても、どのようにすれば良いか?」が問題になりがちです。
現状、従業員50人未満の事業場では産業医の選任もストレスチェックの実施も努力義務になっており、実態として対応できている現場はそう多くないものと思われます。
小規模事業場のメンタルヘルス対策に活用したいのが、都道府県産業保健総合支援センターです。
産業保健総合支援センターは、事業主や人事労務担当者等の支援機関として、専門スタッフによる産業保健に関する相談、研修、情報提供等の支援を、原則として無料で行ってくれます。
従業員50人未満規模の小規模事業場においては、2028年4月にもストレスチェックの実施義務化が予定されています。事業場外の支援を有効に利用し、小規模事業場においても少しずつ、メンタルヘルス対策への意識を高めて行かれることをお勧めします。

参考:独立行政法人労働者健康安全機構 東京産業保健総合支援センター

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HM人事労務コンサルティング 代表 社会保険労務士 丸山博美

編集者

HM人事労務コンサルティング 代表 社会保険労務士 丸山博美

起業したての小さな会社支援を得意とする社労士事務所、HM人事労務コンサルティング代表・丸山と申します。 創業当初の事業主様に不足しがちな「経験」「人脈」「知識」を、 社会保険労務士という立場からサポートいたします。
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