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2022年6月の公益通報者保護法施行に伴い、企業における内部通報制度の導入は進んだものの、実際には「通報者の特定や不利益扱いへの不安」「窓口の信頼性不足」から十分に活用されず、制度の形骸化が問題視されています。
こうした背景を受け、2026年12月1日施行の改正法では、従業員数301人以上の企業等に対する「内部通報制度の実効性向上」への対応が求められることになります。今号では、企業がおさえるべき4つの改正点を確認しましょう。
2026年12月施行の改正公益通報者保護法 ポイントは「内部通報制度運用の実効性確保」
内部通報制度とは、自社の従業員や役員等から組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け、調査・是正を行うための制度です。こうした制度を法的側面から支え、通報者保護や事業者による体制整備を義務づけるのが公益通報者保護法であり、2004年に制定されました。
ところが、制定当時は内部通報制度に係る体制整備が努力義務であったこと、通報者特定のリスク等から、企業における制度導入・活用が進まぬ状況にありました。
これを受け、2022年6月施行の改正で従業員数300人以上の企業等に内部通報窓口の設置が義務化、さらに2026年12月施行の改正では実効性が強化され、企業による継続的な制度運用が求められることになります。
2026年12月施行の改正公益通報者保護法の改正点は、以下の4点です。
① 体制整備の徹底と実効性の向上
従業員数301人以上の企業等は、内部通報の受付・調査・是正を主体的に行う公益通報対応業務従事者(従事者)を指定する義務があります。
これに違反する企業等は、消費者庁の指導・助言、勧告等の行政措置の対象となりますが、改正法ではこれらに加え、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金)等が新設されました。
また、従事者指定義務に違反する事業者に対する立入検査権限、報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対する刑事罰(30万円以下の罰金)が新設されました。
② 通報妨害や通報者を探索する行為の禁止
事業者側から従業員に対し、正当な理由なく公益通報を妨げる行為を禁止し、これに違反して取り交わされた合意などの内容は無効とされます。通報妨害に該当する行為として、以下が挙げられます。
・誓約書等で「外部の窓口や行政に通報しないこと」を労働者に合意させる
・通報しようとした従業員に対して、解雇や人事上の不利益をほのめかして威圧する
また、正当な理由なく、通報者を特定することを目的とする以下の行為も禁止となります。
・「誰が通報したのか」を突き止めるための執拗な聞き取りや調査
・人事権などをちらつかせて通報者を告白させる行為
③ 通報を理由とする解雇などの抑止・救済
公益通報後1年以内に行われた解雇や懲戒処分は、公益通報を理由として行われたものだと推定することとされました。
従来、従業員等が内部通報後に解雇されたり、懲戒処分を受けたりした場合、それが通報に起因するものであることを通報者が立証しなければならず、通報者にとっての大きな負担となっていました。
この点、改正法施行以降は、通報者に対して行われた1年以内の解雇・懲戒処分に関しては、企業が「通報とは無関係の理由による解雇・懲戒だった」ことを立証しなければならないことになります。
通報を理由に解雇や懲戒処分を行った行為者及び企業に対して刑事罰が新設され、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科されるほか、企業に対しては3,000万円以下の罰金が科されるようになりました。
なお、降格・配置転換・賞与減額・職務変更等はこの推定規定の対象外であり、従来通り通報者による立証が必要ですが、公益通報者保護法上の不利益取扱い禁止規定の対象となります。
④ 通報者の範囲が拡大
公益通報者保護法によって保護される通報者として、新たに「フリーランス」が加わりました。これにより、通報を理由とする業務委託契約の解除などが禁止されます。
現に事業者と業務委託関係にあるフリーランスだけでなく、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスも保護の対象となります。
なお、従来の通報者の範囲は正社員や派遣社員、アルバイト、パートタイマー等の「従業員」、「役員」及び「退職者(退職後一年以内)」に限られていました。
内部通報制度の対象となる行為とは?
内部通報制度運用上、労使が「どのような内容の通報が対象となるのか」を正しく理解していることが大前提となります。
公益通報の対象となる行為は、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護」に関わる約500の法律に規定する犯罪行為、過料対象行為、又は刑罰若しくは過料につながる行為とされ、具体的な例としては以下が挙げられます。
・資金や物品の横領、詐欺、背任
・食品表示偽装やデータ・品質偽装
・残業代の未払い、労災隠し
・談合・贈収賄
・環境法令違反や情報漏えい
なお、ハラスメントの相談や通報は、企業の内部通報制度で受け付けられることが多いですが、それ単体では原則として法律上の「公益通報」に該当しません。ただし、暴行や脅迫などの犯罪行為を伴う場合は公益通報の対象となります。
300人以上規模の企業を中心に、改正公益通報者保護法への対応が急務です
2026年12月施行の改正公益通報者保護法は、フリーランスの保護対象化や、通報を理由とする解雇・懲戒の推定規定の新設、さらに消費者庁の権限強化と罰則の導入など、制度の実行性を大きく高める内容となっています。
内部通報制度の体制整備、既存の規定・契約書・誓約書等の見直し、管理職及び従業員に対する研修実施等を主軸に、企業コンプライアンスのさらなる向上に努めましょう。
参考:
政府広報オンライン「公益通報者保護法が改正。「内部通報制度」で不正をストップ!」
消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」
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