株式会社東芝 | HRMOS(ハーモス)

〜採用から入社後の活躍までを見据えて〜 東芝が取り組んだ人事施策におけるデータ活用と採用業務の効率化

株式会社東芝

株式会社東芝

  • 業界: 総合電機
  • 事業概要: エネルギー、インフラ、デバイス&ストレージ、デジタルソリューションなどの事業領域で、さまざまな製品・サービスをグローバルに提供
  • 従業員数: (連結)117,300名 (2021年3月31日現在)

業務の属人化、ナレッジ蓄積の不足など採用のプロセスにさまざまな課題を抱えていた株式会社東芝。HRMOS採用の導入による業務効率化や採用データの一元化を通じて実現できたこと、また、これから目指す採用のあり方について、人事・総務部 採用グループの舟本香奈子様に話を伺いました。

導入の目的

  • 新規採用チャネル開拓や有効チャネルの見極め
  • 採用サイト管理やデータ分析を強化し採用ブランディングに役立てる
  • 「Excel」などで行っていた管理をシステム化し、業務を効率化する
  • 過去のデータを蓄積することで、採用業務の属人化から脱却する

課題

  • 採用ブランド力、自社採用力の低下
  • 採用業務の非効率さ
  • 業務の属人化、ナレッジ蓄積の不足

導入の決め手

  • SNSシェア機能や求人内にオウンドメディアを入れ込むなど、採用ブランディングにつながるアクションが打てる
  • 同時期に導入したビズリーチと連携し攻めの採用に移行できる
  • 1つのシステム内で情報管理が完結でき、リードタイムの短縮、情報の可視化・共通化が実現できる
  • HRMOS採用内に採用データがすべて蓄積され効果分析が可能になる

効果

  • 肌感覚で採用業務の工数を50%削減
  • 2つのシステムで運用していたものを、HRMOS採用に集約
  • ウェビナーなどのオンラインイベントの告知や応募受付もHRMOS採用で実施し集客が改善

「世界有数のCPSテクノロジー企業への変革」のための人事・採用のあり方

ーまずは株式会社東芝様と人事施策の現状を教えてください。

まず会社の状況からお伝えさせてください。全社共通のビジョンとして「世界有数のCPS(Cyber Physical Systems)テクノロジー企業への変革」を掲げています。これは従来、当社が強みとしてきた「フィジカル技術」を基盤に、実世界(フィジカル)のあらゆるデータをサイバー世界のデジタル技術により解析・分析・理解し、実世界にフィードバックすることで、より高い付加価値、また、従来にはなかった新しい付加価値のある製品やサービスを提供していくことを目指すというものです。約150年もの歴史のなかで培ってきた技術力などを大事にしながらも新しいものを取り入れ事業転換していくという大きな挑戦が始まっています。

人事施策という観点では、これらの事業変革の実行に向け、2020年4月に人事処遇制度改定を行いました。組織の創造性・生産性向上を目的に、「ベンチャースピリットを持ちながら新しい未来に向かって次々と革新を起こす人材」を生み出すこと、さらには従業員の主体的、自律的なキャリア形成を支援する仕組みにより働きがいを向上させ、組織風土の活性化を目指すというものです。

その直後に、コロナ禍の影響でリモートワークが進み、一人一人違ったライフスタイルのなかで多様な価値観をもって働くようになりました。現在はニューノーマルな働き方の実現に向け、さまざまな施策を検討、実施しています。これまでの集団管理的な人事施策がフィットしなくなり、多様性とそれをどう受け入れ生かすかというダイバーシティ&インクルージョンの視点は欠かせないと考えています。

ーCPS分野に向けた事業変革が進むなか、組織にも変化が求められていると思います。今の人事課題にはどういったものが挙げられますか。

集団管理的な従来型の人事の考えでは、時代の変化、ビジネス変化に追いつかなくなっていると考えています。少子高齢化により労働力人口減は続くといわれていますが、現在、当社従業員の労務構成は年々高齢化が進んでおり、今後増加するシニア層、未来を担う若年層、そして即戦力としてのキャリア採用者などの人材ポートフォリオの中で多様な人材が活躍できる人事制度や土壌がないといけません。今の人事制度の枠組みでは対応しきれない部分が出てくると考えています。

特に、事業転換や新規事業創出というフェーズにおいては、即戦力や外部の知見をもった人材という観点でキャリア採用の重要度や部門からの期待も高まっています。CPS事業で勝てる人材を採用し、最大限のパフォーマンスを発揮していただくためにも、人事担当には「より高度で戦略的な人事業務に時間を割り当てられる体制づくり」というような戦略人事への変革が必要だと考えています。また、現在の私の担当である採用業務については、人材戦略の入り口として重要なプロセスだと考えており、その戦略を裏付けするための手法として、候補者や社内の人材を「データという観点で理解し、経営と従業員をつなぐ」といった役割が求められていると感じています。

業務工数5割減! 組織変化や人事異動に影響されない、ナレッジやデータの一元化が進んだ

ーHRMOS採用の導入以前に、チームにあった課題を教えてください。

課題は大きく3点、
(1)採用ブランド力、自社採用力の低下
(2)採用業務の非効率さ
(3)業務の属人化、ナレッジ蓄積の不足
でした。

私が3年前に採用担当に着任した当時は、不適切会計問題のイメージも払拭できていない時期でした。母集団形成におけるリブランディングが必要な状況で、待っていても優秀な人材からのエントリーはありません。また、採用チャネルも限られていたので、人材紹介会社に頼らざるを得ない状況でした。ただ、これではいつまでたっても従来型の受け身の採用のままで根本的な解決にはなりません。「攻めの採用」へのシフトが必要であり、新規採用チャネルの開拓や有効なチャネルを見極めるためのデータが必要でした。

また、当時は、新卒採用、キャリア採用、グローバル採用(外国籍人材採用)の3つの採用においてそれぞれ別のATS(選考管理システム)を使っていました。これは、それぞれ採用プロセスや母集団形成の方法などが違うなかで、部分最適の視点でした。ただ、採用部門にとっては「優秀な人材を獲得する」という目標は共通なのに、システムが全て違うという不自由さ、コストが余計にかかる非効率さがありました。時代や事業変化に応じた柔軟な採用業務の設計をしようとしても、従来使用していたATSは利便性が悪かった。採用ブランディング視点では魅力的な求人掲載ができないこと、採用マーケティングの視点ではデータの可視化や分析ができないことが課題でした。

ナレッジ蓄積の課題は、2017年に実施した事業の分社化や採用担当者のジョブローテーションという事情が背景にありました。分社化以前は「株式会社東芝」として一括で行っていた業務が分社化によって分かれ、各社で対応しなければいけなくなりました。また、事業ごとに人事・採用担当者がいるうえに、ジョブローテーションで定期的に異動するため、なかなかノウハウが継承されません。採用業務に関する情報がデータ化されておらず、採用ナレッジが一元化されていなかったのが根本的な問題でした。

ーどのような経緯でHRMOS採用の導入に至ったのでしょうか?

導入検討にあたっては、前述の3つの課題を解決できるかどうかが、重要な観点でした。

まず1つ目は、求人掲載機能をフル活用し、ブランディングができるか。どんな採用チャネルでも募集受付から選考管理をシームレスに実現できるかを見極めました。

2つ目に、それまで「Excel」管理などアナログ対応で進めていたものをシステム化し、業務効率化につなげられるか。

そして3つ目として、業務の属人化を脱するために、誰がやっても同じ業務ができるか。担当変更や組織体制変更があっても過去の情報がデータとして蓄積されており、それを容易に引き出し活用できるかどうかが外せないポイントでした。

これらの内容をすべて満たすものとして、HRMOS採用がもっともフィットしていると判断しました。

ー導入後、採用業務はどう変化しましたか。

導入時は業務工数の3割削減を目指していましたが、肌感覚で5割ほどの削減につながっています。最初は国内のキャリア採用からスタートしましたが、効果を実感でき、グローバル採用も統合。2つのシステムで運用していたものを、HRMOS採用に集約できました。

グローバル採用では毎年800名規模のエントリーがあり、選考はすべて英語ベースです。当時はシステム内の言語表記がすべて日本語で、言語対応という側面でネックだったのですが、迅速なアップデートにより、英語表記画面が加わったことでHRMOS採用が活用できるようになりました。海外の候補者にも魅力を伝えられるような求人掲載ができています。

コロナ禍の影響から、当初は想定していなかった活用方法も取り入れています。選考は基本的にリモートベースになり、ウェビナーなどのオンラインイベントも実施することが増えました。イベント告知や応募受付もHRMOS採用を使って効率的に進められ、「Google アナリティクス」との連携でイベントPV数もチェック。イベント集客への改善につなげています。もっと早く切り替えておけばよかった…というのが正直な感想です。

ー導入前の3つの課題「採用ブランド力、自社採用力の低下」「採用業務の非効率さ」「業務の属人化、ナレッジ蓄積の不足」では、具体的にどう改善されましたか。

採用ブランディングという観点では、SNSへのシェア機能のほかに、オウンドメディアなどの広報媒体を求人内に入れ込むことで、求職者へも多くの情報を発信できるようになりました。

HRMOS採用と同時にビズリーチも導入したので、連携機能を使いながら新しい採用チャネルとして「攻めの採用」にも移行できました。それまでは人材紹介会社メインの活動でしたが、現在の採用実績においてはダイレクトリクルーティング手法と人材紹介会社が同じくらいの割合に。自社採用力の向上と採用コスト削減につながっています。

業務効率の観点では、1つのシステム内で情報管理が完結できるようになり、採用のリードタイムの短縮、情報の可視化や共通化ができています。

ナレッジ蓄積の観点では、採用データがすべてHRMOS採用内に集約されるようになり、検索性も非常に高まりました。データを容易に取り出せるので効果分析もしやすく、採用活動の改善につなげやすくなりました。

「共通言語としてのデータ」活用が経営をドライブする

ー中長期で目指したい人事のあり方について教えてください。

先ほどお話しした人事処遇制度改定の目的の一つでもありますが、人生100年時代といわれる今、従業員自身が目指したい将来のキャリアを自ら考え、会社と相談しながらキャリア開発を進める。そんな風土を根付かせる必要があるでしょう。従業員のエンゲージメントを高め、働きがいを持って活躍できる組織風土をつくり、カルチャーを醸成していくことが、人事の役割だと考えています。

―HRMOS採用を活用して実現できること、実現したいことは何ですか。

HRMOS採用によってデータが取り出せるようになり、採用状況の「見える化」が進んでいます。HRMOS採用のレポートページをスクリーンショットで展開すればすぐに状況を社内で共有できます。以前のように、採用選考の分析結果を自分で加工して作成する手間が不要になり、大幅な工数削減につながっています。

今後は、HRMOS採用をさらに活用した「データドリブン」な採用が目標です。採用担当者や面接官の感覚で進めるような属人的なものではなく、採用の各フェーズの通過率などデータ分析を進め、次の採用戦略にフィードバックしていきたいです。

―目指すべき採用活動のあり方、意識していることは何ですか。

常に顧客志向を持ちつつ採用業務を行うことです。

採用担当にとっての顧客は、求職者や入社者、人材を求める部門という2つの側面があり、両者の満足度を高め、お互いのマッチングを図るのが採用担当の役割です。

「部門の要求にかなった人材を採用する」ことがゴールなのではなく、入社後に活躍でき、活躍している実感とともに本人が「この会社に入ってよかった」と思えてはじめて、採用が成功だったといえます。オンボーディングにも力を入れ、従業員一人一人や部門に寄り添いながら、採用から入社、活躍までの支援ができるような採用担当でありたい。そして、どのような人材が活躍できるのかを把握し、データをもとに部門へフィードバックできるようになりたいと考えています。

―人事施策におけるデータ活用において舟本様が工夫をされたポイントはございますか?

人を「データで見る」ことに関してはまだまだ新しい文化で、不慣れな点や、必ずしもポジティブではない反応をもらうことも少なくありません。ただ、今は社会がどんどん変化しており、マネジメント層や人事の価値観では想定しえない、多様な考え方やバックグラウンドの人材が入ってきます。入社後の人材活用、活躍を促進するには、データは非常に重要だと考えています。

経験や勘に優れた現場のシニア層と、年次の浅い人事が円滑にコミュニケーションを進めるうえで、データは「共通言語」になります。「こんな経験を持った人材が、入社後にこう活躍しています」とデータを示すことができれば、「やっぱりそうか」と思ってもらえたり、「思っていたのと違う結果だけれど、そうだったのか」と納得してもらえたり、客観的な説得力が増します。経験や勘の面ではまだ未熟な、ジョブローテーションしてきたばかりの人事担当者でも、共通言語としてのデータがあれば、人事施策を進められるようになる。これが、経営自体を大きくドライブする力になると思います。

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