
キャリア採用を支える採用体制の進化
経営・現場・人事の三位一体で築いた協働する採用活動
その理念は採用活動にも反映されており、事業環境が激しく変化するなかで事業部門を支えながら、高い採用目標を達成するために採用チームは柔軟かつ機動的な体制への変更を実施してきました。今回、採用活動における取り組みやどのような意思決定があったかについて、ヤマハ発動機ビズパートナーの鈴木様、大畑様にお話を伺いました。

事業環境の変化に伴い急拡大する採用に耐えうる体制へ
当社では、採用体制と方針に大きな変革を遂げてきました。その背景には、カーボンニュートラルやCASE(モビリティ業界の重要トレンド、Connected〈コネクテッド〉、Autonomous〈自動運転〉、Service & Shared〈シェアリング〉、Electric〈電動化〉の頭文字をつなげた造語)といった業界の潮流や、長期ビジョン実現に向けた即戦力人材の採用数拡大が挙げられます。

2020年ごろまでは、キャリア採用は欠員が出たポジションを満たすことを目的とし、年間で50名程度の規模でした。しかし、上で述べたような業界の大きな変化への対応が求められ、現場からの人材要件や人員数の要求についても急速に多様化・高度化し、キャリア採用の規模もこれまでの水準から大きく拡大しました。
2023年には、これまで中心だった新卒採用を上回る割合でキャリア採用が行われ、2024年には年間約300名の採用計画が掲げられるなど、数年で従来の6倍以上にまで規模が拡大しました。このような急激な採用規模の変化に対し、人事部門が主導して運営する採用体制では、工数面や事業環境を捉えた対応が難しいことは明らかでした。
成果に結びつけるために協働体制を確立
かつてのキャリア採用における問題点として、採用リードタイムの長期化が挙げられます。以前の採用プロセスでは、人事担当者が面接に進行役として同席するなど、プロセス全体の効率性を損なう運用が散見され、「自社本位」の採用活動になっていたことが課題として浮き彫りになりました。
さらに、選考に関する情報共有についても、採用チームが起点となって口頭やメールを中心に行われており、評価結果の回収や情報管理方法が属人的でデータと業務が多元管理状態となっていました。このような状況下では、競争が激化する採用市場の中で急増する採用目標に対応することが難しく、採用体制の抜本的な見直しが不可欠でした。
社内で議論を重ねた結果、採用チームは採用計画に対する数値責任を持ちつつ、不確実な事業環境の変化にも耐えうる持続的な採用活動の実現に注力することを目標に掲げ、積極的に外部パートナーを活用すること、そして現場が自律的に採用活動に向き合うための環境を整備することで、採用目標に全社一体となって取り組める体制へと移行しました。
外部のパートナー活用においては、エージェント管理から面談調整に至るまでをその道のプロフェッショナルに委託することで、エージェントとのコミュニケーションの質向上を実現。現場の採用活動の自律促進においては、各種マニュアルの作成や面接官トレーニングの実施など、昨今の市況感を捉えた候補者対応のノウハウを伝え、自走できる状態への変革を進めてきました。特に面接官に対しては、採用市場の動向や自社の現状、競合環境について詳細に共有し、「自社も候補者に選ばれる立場である」という意識を持ってもらうよう強調しました。また、外部パートナーや採用部門だけでなく、ヤマハ発動機本社人事部門とも密接にコミュニケーションを図り、互いに補完しながら採用活動を進める強固な関係性を構築しました。

また、情報の可視化やオペレーションの整備、採用データを活用したボトルネックの特定を目的として、HRMOS(ハーモス)採用への移行を実施しました。これにより、情報と業務の集約が進み、1人あたりの平均採用リードタイムを約15日短縮するという成果を上げています。
さらに、単に業務を効率化し、採用プロセスを整備するだけでなく、採用チーム主導でヤマハ発動機ならびにキャリア採用の認知拡大を目指し、外部イベントへの出展や広告の出稿、行政との連携イベント開催といった、これまで注力が難しかった長期的視点での採用投資にも積極的に取り組んでいます。
幸いなことに、ヤマハ発動機には相互に補完し協働する文化が根付いており、こうした取り組みを進めやすい土壌が整っています。しかし、これに満足することなく、今後も現場や経営からの声に真摯に耳を傾けながら、丁寧に連携を深め、より強固な信頼関係を築いていきたいと考えています。
定着・活躍を見据えた採用力の強化に向けて
採用活動においては、今後の規模拡大にも対応できる体制が整いつつあります。しかし、依然として充足できていないポジションが存在し、採用コストの増加も課題となっています。このため、コスト構造の見直しを進めるとともに、決定が難しいポジションの充足に向けてビズリーチを活用したダイレクトリクルーティングを積極的に展開しています。
さらに、入社人数という成果だけでなく、入社後の定着や活躍の状況をモニタリング・分析し、その結果を採用活動にフィードバックする仕組みを強化していく必要があります。また、外部パートナーから得たノウハウを自社へと昇華させ、採用力を一層向上させる取り組みにも着手していく予定です。